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6-1.そして捕まる
しおりを挟む次の日、私たちは訓練が始まる時間を狙って、馬車でレオと一緒に彼の屋敷を再び訪れた。
アイリーンは髪が短くなった私をみて、「そんな髪型では台無しです!」と早速私の髪を整えてくれた。
後頭部の髪を浮かせ、赤い薔薇のピンをつけてくれる。服も生成りのワンピースを着せてくれた。
「これ全部シシル様のためのものだって知ってました?」
「…そうなの?」
「前に着て下さった白と淡いピンクのドレスも、レオハルト様が慌てて屋敷の者に用意させたものなんですよ?」
聞けば、学園で私が爆破した日、レオがすぐ屋敷に使い魔を出し、ドレスを用意させたのだそう。
でも動き回る私に、ドレスでは駄目だと思ったようで、今度はワンピースを用意したのだとか。
何でレオはそこまでしてくれるのだろう。
そういえば前世でステラに捕まった時、クロロホルムから目覚めた私は、リオにまず一発蹴りを入れた。
『捕まえるなら足も縛りなさいよね!馬鹿でしょあんた!』
その時リオが絶句していたのを覚えている。私は怯むことなくリオに悪態をつき続けた。
それはもう子供染みた悪態ばかりで、「ばーか」だの「このムッツリ総長」だの、今思えば馬鹿なのは私だ。
しばらく無言だったリオがついにキレ初めて、「ふっざけんなよこの女!言いたい放題いいやがって!!」と言い返してくれば、私との子供染みた口喧嘩が始まった。
何一つ私たちの間にいい思い出はないはずなのに。
「用意ができたら市場に出掛けるぞ。宿舎での日用品を揃えに行く。」
部屋の扉の向こうからレオの声が聞こえて、アイリーンが「あれは相当機嫌がいい声ですね」と鏡越しに微笑んだ。
王都は赤い外壁で囲まれていて、その入り口には騎士が立っている。馬車の御者と、また数時間後に入り口で待ち合わせすることになった。
「あれ?レオ??レオではないですか!」
入り口にはポルト先生が立っていた。第3騎士団は王都と学園を警備する役目があり、午前と午後の交代制で見張りをする。私ももう少し経験を積めば、この仕事をすることになる。
「今日は非番だからな、買い物に来た。」
「へえ、今日は女性をお連れとは。レオも隅に置けませんね。」
ポルト先生は着飾った私に気付いていないようだ。良かった、ロザンナにバレずに済みそう。
王都に入ると、商人たちの声がそこらじゅうから聞こえてきた。
早速私が武具のお店を見つけ、外に並べられている剣を品定めしていく。
「はあ、買い物に来たってのに、いきなり剣か。」
「学園の時から使っているものだから、新しい剣がそろそろ欲しいなと思って。」
レオは腕を組み、ため息をつくが、私は店員さんにお願いし、目を輝かせながら剣を手に取らせてもらった。
でも剣は高価なものなので、初めてのお給料が入ってから買うことにした。
「服とか、髪留めとか、アクセサリーとか、シシルはそういうものには興味ないのか?」
私が足を止めるのは、大概武具か食べ物のお店ばかり。
「今まで王都に来る時は私には付き添いの従者がついていたの。こういうのはなかなかゆっくり見れなかったから。」
王族と婚約している身で武具を品定めして、変な噂が立ってはゾイの立場が悪くなる。そう思って我慢してきた。
「それにポルト先生、この女の格好を見て私だって気付かなかったでしょ?やっぱり私は騎士の格好の方が似合っているのよ。」
ワンピースを掴み、広げて見せる。するとレオは、
「…その格好も、うん、似合ってる。」
絶対"馬子にも衣装"とか言うと思ったのに。
目も合わせずに言うと、スタスタと歩いて行ってしまった。
ゾイのように、顔を寄せて「綺麗だ」という慣れた言い方とは違う。レオは照れくさそうに言い逃げて、それがむしろドキッとしてしまった。
こうして2人を比べてしまう自分が嫌だ。
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