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しおりを挟む編入先の大学は共学で、非常に有意義なものだった。
男子大生たちは今流行の不良ごっこに専念していて、総長だのチームがどうだの、全国制覇だの姫が何だの、クズが何だの、男たちの夢を思う存分謳歌していた。たまにチーム同士での抗争になれば、ヨーヨー対決だのウノだのして戦っていた。
キラキラと輝く女子大生たちは、一月置きにネイルを替え、ブランドのバッグを持ち、婚約者がいる子が多いとはいえ、毎週末は合コンで、船上でのクルーズパーティーなんてのもしょっちゅう開催されていた。
漫画の中って最高だな。
そんな私は、短い髪の毛のまま、特にネイルなんてものはせず、服も狼贅にいた時と変わらないボーイッシュな感じで、基本リュックにスニーカー。そして毎週末、いや毎日放課後はアニ○イトに通った。
皆が合コンだのパーティーだの楽しんでいる最中、私はBL漫画に勤しむ。ビール片手にタコキムチを食べながら。
前世のアラサーとなんら変わりない大学生活を過ごした私は、国家資格と就活を経て、国の研究機関で働くこととなった。どこかの会社に入れば、あの3人が聞きつけて、その会社ごと買収するに違いないと思い、国の機関に逃げればいいと考えたのだ。
因みに奴らとは縁を切るため、スマホは解約した。
ただただ研究所で行われる地味な研究の日々。機密事項が多いため、友達に仕事の愚痴を吐くことも出来ず、ただひたすらに腐った毎日を送った。腐女子という毎日を。
そんな生活が何年か続き、私が25歳になったある日のこと。
「朱南、ちょっと話したい事があるんだ。」
毎日仕事が忙しく、今日も23時過ぎに帰って来たというのに、リビングでパパに呼び出された。
「なあ、うちは今まで一色研究センターとして、色々な企業から頼まれ研究をしてきた、由緒正しき家業だ。」
「はあ。」
「朱南はうちを継ぐ気はないんだよな?」
「う、うん。親と一緒に働くとかちょっと嫌だし。」
私がうちで働けば、それこそ奴らはうちを買収しかねない。
「···実はね、養子を取ろうかと思ってるんだ。」
「···は?」
「一色の名を途絶えさせるのは駄目だと祖父さんに言われていてね、うちには跡継ぎがいないから前々から考えていたんだよ。」
「そ、そうなんだ。」
養子って、今さら遅くない?
って、養子ってことは、もしかして私の兄か弟になるってこと??
「実は去年のロンドンの学会で若い日本の子が表彰されてね、その子を養子に考えているんだけど、」
「へ、へえ。」
「同じ学園だったから朱南も知ってるんじゃないかな、斎藤心陽君ていう子なんだけど、」
「······」
知らないわけないよね。漫画の主人公なんですから。
いやお前はどんだけ出たがりだよ。主人公だけにとどまらず、うちの養子にくるって、ひな壇にいる芸人よりも出たがりじゃないか。
「知ってるけど、それってもしかして高梨先生絡みだったりする?」
「は?なぜ彼が?···稔は関係ないだろう。」
いやいや、だってこんな都合よく現れるわけないじゃん!殺人事件現場ばかりに遭遇するどこぞの名探偵か。
ということは何だ。私か、私絡みなのかやっぱ。
そういえば狼贅学園で高梨先生との密会を見てしまった時、心陽君は先生にうちの実家の書類を頼んでいたよな···。
まさかあの時からうちの養子になろうとか考えてないよね??
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