追放宣言前日の最後の悪足掻き 目指せ、グータラな生活!

悠美

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やってきたざまぁフラグ 

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「アディン様、パーティーのご準備の時間でございます」

メイドのカミル・マールテンの言葉にアディンはベットから起き上がる。
少しばかり夢を見ていたようだった。
意味もわからないまま、妙な服を着たハゲた男に罵倒されるという最悪の夢を見ていた。

「チッ・・」

寝起きは最悪で、イライラしたまま舌打ちをすると、カミルは少しビクッと身体を震わせる。
その姿にまたイラッとした気持ちになり、少し痛めつけてやるか、にやにやと嫌らしい笑みを浮かべるが、

「アディン様、あまり時間がないため。お急ぎください」

近衛兵の声に踏み出した足を止める。まるで、メイドを守るかのように立つその姿に面白くないという気持ちで、さらにイライラした気持ちになった。

「俺に指図してんじゃねーぞ、クズが」
「申し訳ございません。国王陛下のご命令故、ご容赦を・・」

恭しく首を下げて、お詫びの言葉を口にしているが、なんとも思っていないその態度にカッとして腕を振り上げるが、まるで何か別の力を受け多様に、それ以上何もすることが出来ないのだ。

「あの・・アディン様?」

近衛兵が疑問を浮かべた声を出す。それもそのはずだろう。
いつものように殴られることを想定し、覚悟を決めていたがその腕はピタリと空中で止まっているのだから。

「うるせぇ!さっさと支度をやれ!」

振り翳した腕を戻し、カミルに向かって怒鳴り声を上げた。
いつもの発散も上手くいかず、さらに夢見も最悪である。
これは、恋人のマリアン・ガエターノに癒してもらおう、と下品な笑みを浮かべた。

マリアン・ガエターノ男爵令嬢は、パトレクール王国の聖女であり、アディンは彼女を傾倒している。
彼女に言われるがままに宝石を買い、ドレスを贈るという王族としてはやってはいけないことを行なっているが、肝心の彼は悪いという気持ちはまるでない。
可愛い恋人に贈り物ををして何が悪いという愚かな考えを持って、疑いも抱いていないのだ。

そう、だからこそ、彼は、『アディン・パトレクール・ヴァルデマー』は破滅の道を歩んでしまっていくのだろう。




「マリアン。今日も特段に美しいよ」
「ふふっ・・アディン様もとってもカッコいいですですよ!」

胸元が空いた真っ赤なドレス。しかも胸元だけではなく、背中も惜しげもなく出しており、まるで娼婦と思わせる見た目だが、
肝心の二人は周囲の視線に気づく様子もまるでないのだ。

「マリアン嬢、素敵だね」
「うんうん。正にこの世に舞い降りた聖女だよ」

まるで恋人ではなく、娼婦とお客を思わせる二人に声をかけたのは、アディンの護衛を行う騎士ダルジット・ザカリアスと、宰相の息子のファディ・カーウィンの二人だ。
二人はアディン同様にマリアンに心を寄せており、アディンとマリアンの関係も知りつつ、横恋慕をしていた。

「でも、アディン様。本当によろしかったのですか?」
「うん?何がだい?」
「だって、アディン様には婚約者のかたがいるじゃないですか・・私はアディン様と一緒にパーティーに出ることが出来て、嬉しいですけど、
ちょっと可哀想だな、って」
「ハハッ。相変わらずマリアンは優しいな」

周りの軽蔑する視線をもろともしないで、アディンは甘い言葉をかける。

「大丈夫だよ。彼女は一人でも大丈夫らしいからな。優しい君が気にするまでもないさ」

嘲笑を含んだ笑みに、ダルジットと、ファディも同様な笑みを浮かべる。
あれはダメ、これはしてはいけない、など口やかましく言ってくる婚約者のリナ・オレクセイジ公爵令嬢のことがアディンだけではなく、
彼らもまた嫌っていた。
そして一番の理由は、

「そうそう。所詮あの女は、君の美しさに嫉妬しているだけだからさ」
「ああ。雑音だと思っていればそれで問題ないって」

騎士見習いである筈の男、ダルジットはマリアン取り巻きで鍛錬をサボり、宰相の息子であるファディも勉強を疎かにするという、未来を消し去るようなことを平気でしている。
だが、彼らもまた気づかない。
自ら、破滅に向かって歩みを進めていることに。
そして、彼らに見えないところで、不気味な笑みを浮かべる聖女マリアン・ガエターノの姿に。
その笑みは、とても聖女とは言い難い悪意の満ち溢れたものだったが、彼らがそれに気づくことはなかった。



扉が開かれ、アディンたちが中に入ると、待っていたのは冷ややかな視線の数々であった。
それもそのはずだ。
アディンも含め、ダルジットも、ファディも婚約者のいる身で、女性一人を三人でエスコートという愚かとも言える行動を堂々を行っているのだから。

そして今回のこのパーティーは、次期パトレクール王国の正式な後継を決めるという大切な場にも関わらず、婚約者を放置し、国税を湯水のごとく使う様に元国王のダグール・パトレクール・ヴァルデマーは、重いため息を漏らした。
そしてその隣に立つ、宰相のラビノット・カーウィン、騎士団長のガイオ・ザカリアスもまた、落ちぶれた自身らの息子の姿に頭を抱えた。

「国王陛下・・もはや擁護は出来ますまい・・」
「うむ。そうだな・・」
「私の息子も情けない話です」

宰相のラビノットの疲れ切った言葉に国王もまた頷き、そして、騎士団長のガイオもまたため息を漏らすように話した。

可愛い息子だが、弟のに比べて出来が悪く、そして素行も最悪である。
ここ最近の婚約者への仕打ちも部下たちから耳にしているため、もはや擁護もできない。
一体どこで間違ったのだろうか。いくら考えも答えは出てこない。
子供の頃はまともだったと認識している。
そうだ、確か12歳の頃に、不注意で階段から落ちたあたりから、まるで性格いや、人が変わったかのような・・
ダグール国王が思考を飛ばしていると、さらなる悪夢が始まってしまった。


「私が聖女様を陥れたという証拠はおありなのでしょうか?」
「ふん。理由など不要である。ただ、マリアンがそう言ったからだ」
「それは証拠になり得ませんわ。私はただ、淑女としての行動をすべきとお伝えしただけです」
「その言い方はなんだよ。もっと優しく言ってあげたら良いだろう?可哀想に・・」
「そうですよ、あなたは言い方がきついんですからね。虐められたと泣いていたよ」

アディンの婚約者のリナ・オレクセイジへ向かって、アディン、ダルジット、ファディは口々に彼女に言葉を浴びせていく。
その様はとても、王族とも、騎士とも、宰相を目指す姿とはかけ離れた哀れな様子であった。

肝心の聖女マリアンは、男たちに護られている状況が楽しいのか、ニヤニヤと笑みを浮かべていた。



「・・ラビノット、ガイオ。もはや手遅れのようだったな」
「はい」
「国王陛下のお心のままに・・」

二人はそれぞれ、頭を下げた。
そして、何もわかっていない愚かな子供たちへ向かって歩みを進めていった。
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