追放宣言前日の最後の悪足掻き 目指せ、グータラな生活!

悠美

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哀れな被害者と無知な加害者

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「ハハっ・・情けないな・・息子が禁術の魔法の餌食になっているとは気づかずにいたとは・・」

はぁ、と先ほどのパーティーでも何度でもため息をついていたが、今はそれとは比較にならない程の絶望や、虚無感に襲われ、力無くソファに腰を下ろした。
まるで一気に老け込んでしまったようなダグール国王に、宰相ラビノットもまた申し訳なさそうな声色で話しかけた。

「陛下・・それは我々の失態にてございます。殿下を守ることが出来ず大変申し訳ないございません」
「宰相殿の言う通りです。決して、陛下のせいではありません。そして勿論アディン様の婚約者のリナ・オレクセイジ公爵令嬢のせいでもあり得ません。国王陛下。護るべきお方を護ることも出来ず、大変申し訳ございません」

ガイオ騎士団長もまた、後悔の念に苛まされていた。
アディン殿下のことを幼い頃より知っていた。性格が180度変わった時、自分はどう思った?
ーそうだ、アディン殿下のことをこの程度か、と見切ったのだ。
洗脳されているなど微塵も疑う事なく。

「そういえば、何故洗脳魔法が解けたのだ?」

娘を別室で休ませてきたカムロン・オレクセイジ公爵家当主がふと抱いた疑問を口にした。
勿論洗脳が解けたことは勿論嬉しく思うが、この出来事すら敵の策略なのでは、と疑いを持つのは、疑心暗鬼に落ちているせいか、と思いつつもオディルにそう問いかけたした。
オディルは、「そうですね・・」と小さく呟き、「あくまで私の推測の域になってしまい、恐縮ですが・・」と口にし更にこちばを続けてみせる。

「洗脳の魔法を解く鍵として、考えられるのは、名前ではないでしょうか?」
「名前?」

カムロンがファディの言葉を復唱してみせる。
ファディは、小さく頷き、

「名前とは魂に紐づいているとされております。
アディン様のお名前を口にする機会など少ないことや、後は、【誰】がという事も可能性の一つに考えられると思われます」

アディン殿下の名前を正しく口にする者は限られており、更に今回洗脳が解けた理由として考えられるのは、
【父親】から【アディン・パトレクール・ヴァルデマー】と呼ばれるあの瞬間、掛けられていた洗脳の魔法が解けるに至ったと結論付けた。

ファディの言葉に、頭を抱えながら、
「皮肉だな・・これまでの所業で追放宣言する場で、まさか息子の真実を知ってしまうなんて」と苦しそうに吐き出した。
「陛下・・」

カムロンは、なんと慰めの言葉を告げて良いか悩み、遂には何も言えずに、言葉を詰まらせた。
そんな中、「んん・・」と、小さな声と共に、アディンが目を開けた。

「ここは・・私は一体・・」
「気がついたか、アディン」
「父上・・」

パチパチを不思議そうにダグール国王を見つめるその瞳には、どこか懐かしさを抱くことに、なんともいえない感情に陥った。
枕に頭を乗せたまま、まるで、微睡むかのように、アディンはポツリと言葉を紡いだ。

「なんだか長い夢を見ていたかのようです・・」
「そうか・・夢を」
「私は、一体何を・・・っ・・」

何かを思い出すかのような仕草に、ダグール国王は咄嗟に身体を支えると、アディンは少し身体を震わせた。
頭を押さえながら、更に言葉を続ける。

「今までのこと・・朧ながら覚えています・・・愚かにも操られていた事を・・」
「それは・・」

まさか洗脳状態に自我が残っていることは想定外だったため、その場にいる者たちはなんと言葉をかけて良いかわからなず、立ち尽くしていると、
アディンはふらふらになりながら、ベットから身を起こし、一同に頭を下げた。
王太子に頭を下げさせている事や、弱々しいその姿に止める間もなく、

「今まで、すみませんでした・・私が弱いばかりに魔法にかけられてしまい、皆さんには多大を迷惑をおかけしてしまったこと、お詫びをさせて欲しい・・・」

深々と頭を下げて、謝罪の言葉を口にする様を見て、ガイオ騎士団長はアディンの前に膝をつき、
「謝らないでください!殿下!我々は貴方さまを護ることが出来ませんでした・・どうか・・」と告げるが、アディンは、頭を上げ、まっすぐ彼らの瞳を見つめながら、再度言葉を続けてみせる。

「いいえ、私はパトレクール国の第一王子として、情けないのです」

悔しそうに言い、そして覚悟を決めるかのように大きく息を吐き、父親のダグール国王に向かって話を始めた。

「父上、洗脳の魔法をかけられていたとはいえ、此度の失態は全て私の至らないことで起こったものです。そこで、処罰として死ぬまで幽閉でお願いできませんか?」
「なっ・・」
「そんなっ」
「殿下・それは・・」

ガイオ騎士団長、カムロン、宰相ラビノットは息を呑んだ。
そして、父親でもあり、国王のダグール国王は思わず声を上げて叫ぶように言い返す。

「何を言う!お前は悪くないではないか?!」
「いいえ、ここで何の沙汰もなければ、愚かな振る舞いをしてきた王子に対して、民衆も貴族たちも納得しないでしょう。本当は死罪の方が憂いを立つと言う面目は経ちますが・・私のした行いで死んでさようなら、など許されるわけもない。
追放処分も、もし道中で今回の犯人にまたかけられてしまえば、もはや対策は取れません。
なので、皆さんの目の届くところで、償いをしたいのです」

追放処分は、もとより検討していた処分内容であったが、洗脳の魔法にかけられていたことがわかった今では、処分など出来る筈もない。
ましては、魔法をかけられ、長い間自我を失い苦しんでいたのは、アディン自身である。
被害者の彼から更に自由を奪う。そんな所業できる訳もない。
だが、「どうか・・」と、先ほどよりも深く、深くを頭を下げる姿に言葉が出てこない。

アディンの言葉は勿論理解できる。
国内でのアディンの言動や行動は皆の知るところであり、このまま何の処分もないとなると、酷い場合暴動に成りかねない。
ましては、洗脳の魔法にかけられていたことを周知することは、他国に付け入る隙を与え、戦争の引き金になってしまう可能性も否めない。

だからいって、第三者のした行いを全てアディンに押し付けて、知らぬ顔をせよ、と。
アディンは遠回しに言っていると、彼らにはわかった。否わかってしまったのだ。

「そんなの私は納得できません!もし、もし万が一にもアディン殿下がそのような処分をお受けになるのなら、この騎士団団長カルビス・ヴァフラムも同様に幽閉される覚悟があります!貴方様を御守りすることができなかった私ができる唯一のことです!」

騎士団団長カルビスは、うっすらと瞳に涙を浮かべながらまるで誓いを立てるかのように片膝をついて宣言してみせるが、肝心のアディンには響く様子もなく、彼は困ったように小さく微笑み、ふるふると首を横に降った。

「いや、それはダメだ。君はこの国にとってかけがえの無い存在なんだ。無能な王子ではなく、これからもこの国ため、そして、父や弟を支えて欲しい」
「そんなっ・・」

アディンの優しい拒絶に、騎士団団長カルビスは、言葉を失う。
もう遅いのだろうか、と絶望に胸が締め付けられるような感覚に陥った。

「・・・その件は後ほど決めていく。今は身体を休めることが先決だ」

ダグール国王は静かに、まるで自分に言い聞かせるかのように口にした。
アディンはきっと目を覚ましたばかりで混乱しているのだろう、と結論つけ、また、自分たちも混乱し、心の整理が追いついていない。
きちんと考えて最善策を出す。
今まで苦しんでいたアディンが、少しでも幸せだと笑っていられる最善策を考える必要があった。

「わかりました・・では、お言葉に甘えまして、お休みをいただきます」

ぺこり、とダグール国王に向かって頭を下げる。
一つ一つの仕草や言動が、ここ最近のアディンとあまりに違う事で更に彼らの胸は締め付けられた。」
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