3 / 21
3.魔王城の風呂場
しおりを挟む連れて来られたのは、カッコーンと音が響きそうな銭湯顔負けの広い風呂場だった。
ここはどこだ?
突然現れた美形に意識を取られ、考えることを放棄していたが、ここはどこだろう。
どう見ても保育園じゃない。
タオルを腰に巻き、突っ立って風呂場を見渡す俺の姿は間が抜けていたんだろう。
「大丈夫か? 風呂の入り方が分からないのか?」
そんな日本人が居たら会ってみたい。
同じようにタオル一枚で隣に立つ男は、俺を抱えられるほどの大柄な男かと思っていたが、そんなことはなく、背は高いが無駄な筋肉のない均整のとれた身体をしている。
「風呂については大丈夫です。あの、裸で聞くのも何ですが、お名前を伺ってもいいですか。俺は佐久間 伊織と言います」
「サクマ イオリ。どちらが個人の名前だ?」
「伊織の方が名前です」
「イオリーー伊織か。私はフォルティス」
フォルティス。見たまんま外国の人なのかな。
日本語がとても上手いからハーフの可能性もあるか。
「フォルティスさんですね」
「そうだ。だが、皆には大抵、陛下と呼ばれているな」
「へいか?」
「魔王陛下、と」
そういう設定持ちの人かな。
いたなぁ、中高の友達にも。闇属性持ちとか日に当たれないヴァンピルとか。設定に沿って生活してるのすごく楽しそうだったな。
俺も旧友にならって、彼を陛下と呼ぼう。
「なるほど。それでは陛下、身体洗って風呂に入りましょうか」
「いや、今夜は面倒だから洗わなくていい」
「陛下、それはモラルに反します」
「“浄化魔法”をかけるってことだ」
魔法使える設定なのか、どう誘導しようかなと考えていると、大きなシャボン玉が現れた。
え、マジック??
フォルティスが早技で泡立てたのかな?
「この泡の中へ入って」
「この、中へ?」
「そうだ。怖がらなくて大丈夫」
「失礼します」
洗剤が目に入るのが嫌でぎゅっと瞑ったまま進む。すると、泡は弾けることなく、俺を迎え入れた。恐る恐る目を開くと、シャボン玉特有の歪んだ景色にテンションがあがる。
園児たちが喜びそうなマジックだ。
「すごい!」
「喜んで貰えて何よりだ。そのまま出て来てくれ」
「もっと中にいたいんですけど、ダメですか?」
「身体が冷えてしまう。いつでも作るから今は風呂に入ろう」
促され、泡を出ると身体が洗ったようにサッパリしている。
こんなマジック初めて見た。これは便利過ぎる。洗い物が一瞬で片付くんじゃないか?!
「ほら、ぼんやりしてると転ぶぞ」
背を叩かれて、並んで浴槽に入った。
21
あなたにおすすめの小説
獣人の子供が現代社会人の俺の部屋に迷い込んできました。
えっしゃー(エミリオ猫)
BL
突然、ひとり暮らしの俺(会社員)の部屋に、獣人の子供が現れた!
どっから来た?!異世界転移?!仕方ないので面倒を見る、連休中の俺。
そしたら、なぜか俺の事をママだとっ?!
いやいや女じゃないから!え?女って何って、お前、男しか居ない世界の子供なの?!
会社員男性と、異世界獣人のお話。
※6話で完結します。さくっと読めます。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果
ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。
そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。
2023/04/06 後日談追加
「今夜は、ずっと繋がっていたい」というから頷いた結果。
猫宮乾
BL
異世界転移(転生)したワタルが現地の魔術師ユーグと恋人になって、致しているお話です。9割性描写です。※自サイトからの転載です。サイトにこの二人が付き合うまでが置いてありますが、こちら単独でご覧頂けます。
【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件
白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。
最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。
いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。
ストーカーから逃げ切ったのも束の間、転移後はヤンデレ騎士団に殺されかけている現実!
由汰のらん
ファンタジー
ストーカーから逃げていたある日、ハルは異世界に召喚されてしまう。
しかし神官によれば、どうやらハルは間違って召喚された模様。さらに王子に盾ついてしまったことがきっかけで、ハルは国外追放されてしまう。
さらに連行されている道中、魔族に襲われ、ハルの荷馬車は置き去りに。
そのさなか、黒い閃光を放つ騎士が、ハルに取引を持ちかけてきた。
「貴様の血を差し出せ。さすれば助けてやろう。」
やたら態度のでかい騎士は、なんとダンピールだった!
しかしハルの血が特殊だと知った騎士はハルを連れ帰って?
いっそ美味しい血と癒しを与えるダンピール騎士団のセラピストを目指します!
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる