竜王さまは不眠症〜異世界で出張添い寝屋〜

猫屋町

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本編

初夜ー2 初めまして、添い寝屋です

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初夜-2

簡単な自己紹介を終えた俺は、すぐに仕事に取り掛かった。
異世界だろうと国王だろうと、新規のお客様。まずは店のサービスについて説明をする必要がある。
持ってきたバッグからリーフレットを取り出して見せながら、話し始めた。

「早速ですが、詳しいサービス内容の確認と初回ですので注意事項をご説明させてもらってもいいですか」

「ああ。では、そちらのテーブルで聞こう」

小洒落たカフェにありそうなテーブルセットが窓の近くに置かれていた。
広い部屋には、テーブルセットの他に大きなソファや緻密な細工が施されたクローゼットが設置されている。中でも目を引いたのは、天蓋付きの大きなベッド。
今夜、あそこで眠れるのかと思うとちょっとワクワクする。

異世界っていうより外国って感じ?

「トモル?」

いつまでも席につかない俺に焦れたようにグランが声を掛けてくる。

すみませんと謝りながらバッグを下ろし椅子に座ると、向かいに掛けたグランは渡したリーフレットを机に広げ興味深そうに眺めていた。

「では、リーフレットに沿ってサービスについてご説明しますね」

と、話し始めようとしたところでストップがかかった。

「すまない。絵が入っていて分かりやすいと思うが、字は全く読めないんだ」

正直に話してくれたグランは、キリノの言う通り大らかな人なのかもしれない。寝不足のせいで表情は暗いし、怖いけど。

「了解です。では、それを踏まえ口頭でご説明しますね。ーーまず、うちは健全な店ですのでえっちな行為は禁止です」

「えっち?」

えっちが通じなかった。場を和ませようと思ったのに残念。

「性的な行為のことです」

「なるほど……」

少し残念そうな表情に見えたけど、俺にそんなことを期待してた?ーーな訳ないか。
他のキャストはたまに求められ断ったという話も聞くけど、俺に関しては一度もない。ましてや、この美形相手だ。

「そういう行為をご希望の場合は別のお店を紹介もできます」

「いや、大丈夫だ」

そういうことをする相手には困っていないとばかりにきっぱりと断られた。リアルが充実しているようで。

「何よりです。ーー基本的なサービス内容は、話し相手と添い寝。ハグはOKですが、キスはNGで。ご希望があればマッサージをしたり、ハーブティーを入れることも出来ます。あとはボードゲームしたり、同性限定ですがシャンプーをしたりも出来ます。オプションによっては別料金がかかりますがーー」

「待ってくれ……すまない。半分くらいしか分からなかった。キスはわかるがはぐとはなんだ? おけ? えぬ?」

「あ、すいません」

英語や和製英語、若者言葉は通じない場合があるとキリノが公園へ行く道すがら教えてくれていた。
すっかり忘れてたけど。

「簡単にいうと、俺がグランさんにできるのは、お話の相手と添い寝と抱き締めることと」

「“グランさん”」

呼び方に引っかかったのか、グランに復唱された。
いや、俺も確かにグラサンみたいでどうよとは思ったけど、グラサンは通じないだろうしいいかと思って。
なんて脳内で言い訳しながらグランに問いかけた。

「陛下って呼んだ方がいいですか?」

「いや、トモルはここの国民じゃないから問題ない。何とでも呼んでくれ」

「グラン、でも?」

まさか許可しないだろうと思って聞いてみたけど、あっさり了承される。

「構わない。敬語も無理しなくていい。誰が聞いているわけでもないしな」

国王本人は聞いてるけどね。

「すごい助かる。じゃあ、グランで。ーーで、続きね。お茶入れるのと、肩揉みとか遊んだり、髪洗ったり出来るよ。別料金かかるけど」

「では、添い寝の他はお茶と肩揉みをしてもらえるか」

「了解。まずお茶でいい? ーー……お湯沸かしたいんだけど」

コンセントある?と聞く前に併設されたキッチンに案内された。国王の私室にキッチン??
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