1 / 1
全ての始まりの日
しおりを挟む
魔王も勇者もいなくなった世界に、残ったのは魔物と人間同士の醜い争いだけであった。
毎日のように命の灯火が消えていく。
そしてここにも、また一人、命の灯火が消えようとしていた。
暗雲が立ち込む空の下。
民衆に怒号を浴びせられながら、処刑人に引っ張られ俺は処刑場の階段を登る。
(俺が何をしたというのか)
そして執行人が紙を広げ罪状を読む。
「では罪状を読み上げる。罪人である、第八位帝位継承権を持つ皇子“ルヴァンシュ・アンぺラール“は現皇帝“オグル・アンぺラール“を暗殺しようとした罪により、帝位継承権を剥奪及び“死刑“と処す。」
「俺はそんな事していない!!何かの間違いだ!!」
「黙らせろ。」
執行人が冷たい声で言い放ち、処刑人が縄でルヴァンシュの口を塞ぐ。
言葉の通りルヴァンシュは暗殺など企ててはいなかった。ルヴァンシュは生まれつき頭が良かったが、成人の儀式で王族本来なら受け継がれる特殊な能力が受け継がなかった。
たったそれだけ……
たった、それだけの事で、冤罪をかけられ、無能の烙印を押され、今、ルヴァンシュの人生が終わろうとしている。
罪状が読まれ、民衆の怒号がさらに熱を帯びる中、処刑人に頭を掴まれ断頭台に頭を押し付けられる。
横にいたもう一人の処刑人の男が斧を振り上げ——
(本当に無意味な人生だった)
——ルヴァンシュの首目掛けて斧が振り下される。
走馬灯の様に過去の出来事が脳裏に駆け巡る。
その中で1番思い浮かんだのは、亡くなった幼馴染の女の子“ユイ・ケーレス“の顔だった。
(俺に力があればあいつは助かったのかな、そして俺……自身も)
悔しさで唇を血が出るほど噛み締めて、目を閉じ振り下される斧を待っていたが、一向に首を刎ねられる気配がしなかった。
「力が欲しいか?」
不意に話しかけられ、目を開ける。
「なっ、なんだこれは!?」
口に咥えさせられていた紐は外れ、そして民衆も処刑人も何もかもが停止し世界が静寂になっており、目の前には女が立ってこちらを見下ろしていた。
「答えろ。世界を変えられる力が欲しいか?」
その問いに迷わず即座に答える。
「よこせ!この世界の何もかもを変えられる力を!!!」
“フッ“っと妖艶な笑みで笑う女は、突然ルヴァンシュの左眼に触れ閉じさせない様にし、そして目玉に紋様を刻み込みだした。
「ぐぁぁぁあああああ!!!!」
目玉を灼熱で焼かれて、針で何度も何度も突き刺されているような耐え難い痛みに発狂しそうになりながらも、現皇帝“オグル・アンぺラール“への復讐心だけでなんとか意識を保っていた。
そして、体感永遠とも思える時を耐え切った。
「忘れるな。これは契約だ。お前の復讐が終わったその時また会いに来よう。」
「待て!お前は一体—————」
そう言い終わる前に、ルヴァンシュの視界は歪み意識を失った。
◇◻︎◇◻︎◇
“ハッ“と目が覚めるとそこは罪人“ルヴァンシュ“の死刑執行の直前に入れられていた牢屋であった。するとそこに、処刑人がやってきた。
「おい!こっちへこい!これからてめぇを死刑にするってよ!」
処刑人は薄気味悪く嘲笑いルヴァンシュを引っ張り出そうとする。
「なぁ、お前は人を殺すのが好きなのか?」
「当たり前だろ!!こっちはいつも人を殺したくてうずうずしてんだよ!!だからてめぇも早く殺させろ!!!!」
「そうか、じゃあお前に命じてやろう」
その瞬間、ルヴァンシュの左眼が深紅に光り輝き七芒星の様な紋様が浮かび出す。
「ハァ!?お前何言って—————」
《この城にいる奴ら全員皆殺しにしろ》
すると、処刑人の眼は虚になり、首には隷属の印が一瞬刻まれ、そして斧を持ち走り出す。しばらくすると、辺り一体から悲鳴が響き騒然とする。
その騒動に乗じて、ルヴァンシュは牢屋から脱獄し城の外へ繋がる隠し通路から逃げ出した。
毎日のように命の灯火が消えていく。
そしてここにも、また一人、命の灯火が消えようとしていた。
暗雲が立ち込む空の下。
民衆に怒号を浴びせられながら、処刑人に引っ張られ俺は処刑場の階段を登る。
(俺が何をしたというのか)
そして執行人が紙を広げ罪状を読む。
「では罪状を読み上げる。罪人である、第八位帝位継承権を持つ皇子“ルヴァンシュ・アンぺラール“は現皇帝“オグル・アンぺラール“を暗殺しようとした罪により、帝位継承権を剥奪及び“死刑“と処す。」
「俺はそんな事していない!!何かの間違いだ!!」
「黙らせろ。」
執行人が冷たい声で言い放ち、処刑人が縄でルヴァンシュの口を塞ぐ。
言葉の通りルヴァンシュは暗殺など企ててはいなかった。ルヴァンシュは生まれつき頭が良かったが、成人の儀式で王族本来なら受け継がれる特殊な能力が受け継がなかった。
たったそれだけ……
たった、それだけの事で、冤罪をかけられ、無能の烙印を押され、今、ルヴァンシュの人生が終わろうとしている。
罪状が読まれ、民衆の怒号がさらに熱を帯びる中、処刑人に頭を掴まれ断頭台に頭を押し付けられる。
横にいたもう一人の処刑人の男が斧を振り上げ——
(本当に無意味な人生だった)
——ルヴァンシュの首目掛けて斧が振り下される。
走馬灯の様に過去の出来事が脳裏に駆け巡る。
その中で1番思い浮かんだのは、亡くなった幼馴染の女の子“ユイ・ケーレス“の顔だった。
(俺に力があればあいつは助かったのかな、そして俺……自身も)
悔しさで唇を血が出るほど噛み締めて、目を閉じ振り下される斧を待っていたが、一向に首を刎ねられる気配がしなかった。
「力が欲しいか?」
不意に話しかけられ、目を開ける。
「なっ、なんだこれは!?」
口に咥えさせられていた紐は外れ、そして民衆も処刑人も何もかもが停止し世界が静寂になっており、目の前には女が立ってこちらを見下ろしていた。
「答えろ。世界を変えられる力が欲しいか?」
その問いに迷わず即座に答える。
「よこせ!この世界の何もかもを変えられる力を!!!」
“フッ“っと妖艶な笑みで笑う女は、突然ルヴァンシュの左眼に触れ閉じさせない様にし、そして目玉に紋様を刻み込みだした。
「ぐぁぁぁあああああ!!!!」
目玉を灼熱で焼かれて、針で何度も何度も突き刺されているような耐え難い痛みに発狂しそうになりながらも、現皇帝“オグル・アンぺラール“への復讐心だけでなんとか意識を保っていた。
そして、体感永遠とも思える時を耐え切った。
「忘れるな。これは契約だ。お前の復讐が終わったその時また会いに来よう。」
「待て!お前は一体—————」
そう言い終わる前に、ルヴァンシュの視界は歪み意識を失った。
◇◻︎◇◻︎◇
“ハッ“と目が覚めるとそこは罪人“ルヴァンシュ“の死刑執行の直前に入れられていた牢屋であった。するとそこに、処刑人がやってきた。
「おい!こっちへこい!これからてめぇを死刑にするってよ!」
処刑人は薄気味悪く嘲笑いルヴァンシュを引っ張り出そうとする。
「なぁ、お前は人を殺すのが好きなのか?」
「当たり前だろ!!こっちはいつも人を殺したくてうずうずしてんだよ!!だからてめぇも早く殺させろ!!!!」
「そうか、じゃあお前に命じてやろう」
その瞬間、ルヴァンシュの左眼が深紅に光り輝き七芒星の様な紋様が浮かび出す。
「ハァ!?お前何言って—————」
《この城にいる奴ら全員皆殺しにしろ》
すると、処刑人の眼は虚になり、首には隷属の印が一瞬刻まれ、そして斧を持ち走り出す。しばらくすると、辺り一体から悲鳴が響き騒然とする。
その騒動に乗じて、ルヴァンシュは牢屋から脱獄し城の外へ繋がる隠し通路から逃げ出した。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
「餌代の無駄」と追放されたテイマー、家族(ペット)が装備に祝福を与えていた。辺境で美少女化する家族とスローライフ
天音ねる(旧:えんとっぷ)
ファンタジー
【祝:男性HOT18位】Sランクパーティ『紅蓮の剣』で、戦闘力のない「生産系テイマー」として雑用をこなす心優しい青年、レイン。
彼の育てる愛らしい魔物たちが、実はパーティの装備に【神の祝福】を与え、その強さの根源となっていることに誰も気づかず、仲間からは「餌代ばかりかかる寄生虫」と蔑まれていた。
「お前はもういらない」
ついに理不尽な追放宣告を受けるレイン。
だが、彼と魔物たちがパーティを去った瞬間、最強だったはずの勇者の聖剣はただの鉄クズに成り果てた。祝福を失った彼らは、格下のモンスターに惨敗を喫する。
――彼らはまだ、自分たちが捨てたものが、どれほど偉大な宝だったのかを知らない。
一方、レインは愛する魔物たち(スライム、ゴブリン、コカトリス、マンドラゴラ)との穏やかな生活を求め、人里離れた辺境の地で新たな暮らしを始める。
生活のためにギルドへ持ち込んだ素材は、実は大陸の歴史を塗り替えるほどの「神話級」のアイテムばかりだった!?
彼の元にはエルフやドワーフが集い、静かな湖畔の廃屋は、いつしか世界が注目する「聖域」へと姿を変えていく。
そして、レインはまだ知らない。
夜な夜な、彼が寝静まった後、愛らしい魔物たちが【美少女】の姿となり、
「れーんは、きょーも優しかったの! だからぽるん、いーっぱいきらきらジェル、あげたんだよー!」
「わ、私、今日もちゃんと硬い石、置けました…! レイン様、これがあれば、きっともう危ない目に遭いませんよね…?」
と、彼を巡って秘密のお茶会を繰り広げていることを。
そして、彼が築く穏やかな理想郷が、やがて大国の巨大な陰謀に巻き込まれていく運命にあることを――。
理不尽に全てを奪われた心優しいテイマーが、健気な“家族”と共に、やがて世界を動かす主となる。
王道追放ざまぁ × 成り上がりスローライフ × 人外ハーモニー!
HOT男性49位(2025年9月3日0時47分)
→37位(2025年9月3日5時59分)→18位(2025年9月5日10時16分)
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
魔法が使えない落ちこぼれ貴族の三男は、天才錬金術師のたまごでした
茜カナコ
ファンタジー
魔法使いよりも錬金術士の方が少ない世界。
貴族は生まれつき魔力を持っていることが多いが錬金術を使えるものは、ほとんどいない。
母も魔力が弱く、父から「できそこないの妻」と馬鹿にされ、こき使われている。
バレット男爵家の三男として生まれた僕は、魔力がなく、家でおちこぼれとしてぞんざいに扱われている。
しかし、僕には錬金術の才能があることに気づき、この家を出ると決めた。
「元」面倒くさがりの異世界無双
空里
ファンタジー
死んでもっと努力すればと後悔していた俺は妖精みたいなやつに転生させられた。話しているうちに名前を忘れてしまったことに気付き、その妖精みたいなやつに名付けられた。
「カイ=マールス」と。
よく分からないまま取りあえず強くなれとのことで訓練を始めるのだった。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる