【完結】オトナのお付き合いの彼を『友達』と呼んではいけないらしい(震え声)

佐倉えび

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 当時はまだ十九歳だったこともあり、父に結婚相手を見つけて来いと言われて夜会に出席させられたのだ。いつもの制服を脱ぎ、既製品のドレスをまとっても、結局は豊満な肉体を晒して歩くだけで、まともな縁など繋げるはずもなかった。
 見目麗しい貴族の令息たちは、ミシェルよりもっと条件のいいご令嬢を狙っているのだから。

 お金と身分のある尊い方々にとって、身体目的の女など掃いて捨てるほどいるはずなのに。

「男あさりをしなくて済むよう、この私が面倒をみてやろう。貧乏子爵家の娘がその身体で侯爵家嫡男の愛人になれるんだから名誉なことだろう?」

 そう言って強引に手を引く男は、幼いころより伯爵家のご令嬢と婚約しているエスコラ侯爵家の子息だった。
 見た目はそこそこ整えられていたが、労働を知らない体は細く、胸や腕回りなどミシェルのほうがたくましい。
 ミシェルを蔑んでいるくせに欲望だけはぶつけてくる男の視線に虫唾がはしった。

「結構です」
「そんな安物のドレスではない、オートクチュールをプレゼントしてやるから」
「要りません」
「遠慮するな。お前の実家にも援助してもらえるよう父に頼んでやってもいい」
「必要ありません!!」

 扉の前で押し問答になったが、通りすがりの誰もが遠巻きに見てはさっと身をひるがえして立ち去った。
 相手は決して敵に回してはいけない人物だからだ。巻き込まれたくないのだろう。手を引かれている危機的状況のミシェルだってそう思う。

 面倒臭いからという理由でミシェルは自分の評判を覆す努力をしてこなかった。そのことをこの時になってようやく後悔していた。

「ほう。エスコラ侯爵家のご子息は、令嬢を手籠めにするのが趣味なのか。姉君は立派に王太子妃として務めを果たされているというのに、恥ずかしくはないのか?」

 声のする方を振り返る。
 レイモンドだった。
 乱れた髪の隙間から見たレイモンドの凍るようなアイスブルーの瞳が青白く燃えているようだった。

 ――ぞくり。

 ミシェルの背を得も言われぬ何かが走る。

「返してもらおうか」

 まるで自分の女を取り返すかのように平然と放たれた台詞に、子息だけでなくミシェルまでもが口を開けて呆けてしまった。

 レイモンドに手を引かれ、気が付けばポカンと開いた唇に舌を絡ませるほど濃厚な口づけをされていた。
 見せつけるように、ジュッジュ、ジュッジュ、わざと音を立てて舌を吸い上げられているうちに身体から力が抜けて、抱きしめてくるレイモンドの硬い体に身を委ねてしまった。

 気付いたときには子息は消えうせており、レイモンドと室内で濃厚な口づけを交わしていた。
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