【完結】オトナのお付き合いの彼を『友達』と呼んではいけないらしい(震え声)

佐倉えび

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 小さい頃から兄弟すら俯瞰して見てきたレイモンドにとって、他人は観察対象でしかなかった。
 それが女性であればなおさら。
 裏があって当然なので、表面上の美しさになんか惑わされないし、観察以上の興味もわかない。
 秘密の多い任務を抱える身であるからして、特定の女性をつくるなんて煩わしさしかないから、もっぱら性欲は娼館で発散していた。

 そんなレイモンドなので、ミシェルに対する気持ちは格別だといえる。
 結婚する前提で付き合っていると思っていたし、そのために王城近くの邸宅を購入した。結婚した後もミシェルが働けるようにと思っていたからだ。

 曲がったことが嫌いですぐに結果を求めるラッセルと違い、レイモンドはじっくり時が熟すのを待つのが得意だ。結婚までの数年なんて、長い人生の中では一瞬だ。ロジェが第二を勧めてきたのは、時間と労力がかかる第二の捜査に向いていたからだと、入ってからすぐに理解したぐらいレイモンドは冷静で気が長い。

(なんたって俺はデカいし、ミシェルも色々とデカい上に色も造形も派手な美人、きつめに見える顔立ちの癖に、ほんの少し垂れ目なせいで余計に艶っぽいときてる。俺たち二人が揃って歩いてると目立ち過ぎるんだよ)

 ミシェルが勘違いした原因は、密室でしか会っていなかったせいだろう。
 それにも理由があった。
 大々的に恋人として振舞って、これ以上ミシェルが女たちに嫉妬されるのが嫌だったから。
 婚約者のいないレイモンドを狙っている女は割と多いという自覚があるので尚更だ。

 それに、兄の耳に入れば結婚を急かされてしまう。令嬢の適齢期が云々言い出すに決まっている。父より頭が堅いのだから。
 ミシェルは家庭教師すら付けられなかったレーヌ子爵家の財政の中、自力で勉強して文官になった。そのミシェルの努力を早すぎる結婚で無駄にしたくなかった。頭の堅い兄に、仕事を辞めて女主人として家を守れなどと言われかねない。

 だから目立つ行動を極力避けていたし、結婚までの道のりが長くなることがわかりきっていたのでミシェルの純潔は早々にいただいた。絶対に手放す気などなかったし、好いた女と何年も身体の関係がないというのはむしろ不健全だろう。

 もちろん城の中でちょっかいかけそうな男のことはしっかり牽制し続けた。男が遠くからミシェルを見ている時に彼女に声をかけ、さりげなく髪や腰に触るのを見せつけてきた。

(そろそろプロポーズしようと思っていたから、ちょうどいいか)

 レイモンドの仕事はトラブル続きで、予定が予定通りに進まないのが常だ。
 あの日も仕事の予定が変更になり、城でさくっと昼を済まそうと食堂を訪れた。
 そこで、まだベッドの上にいてもおかしくないミシェルがぼんやり食事をとっているのを見かけた。何となく気になって、そのまま気配を消して観察していたら、友達発言を聞いてしまった、というわけである。


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