【完結】オトナのお付き合いの彼を『友達』と呼んではいけないらしい(震え声)

佐倉えび

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「は!?」
 冷静なレイモンドにしては珍しい声をあげた。
 ミシェルが下着を身に着けないという行動に出たからだ。
 今日は特にいろいろなお店に寄ったから、さすがのレイモンドも驚いたようだ。

 レイモンドの首に腕をまわし、首筋の匂いを嗅ぐ。

「今日はあちこち行ったよな? その間ずっと?」

 コクンと頷いてレイモンドの頬を撫でる。

 カヌレ伯爵家御用達という宝飾店に連れて行ってもらい、あれこれ買い与えられ、最近流行ってるというカフェに行ってお茶を飲んで、それからミシェルの部屋に置くソファーを見ようと言うので家具屋に行って、ふかふか具合を試したりしているうちに、レイモンドが二人で寝るベッドを大きくしたいと言い出したので、試しに寝転んだりして、そのあと少し遅いお昼を食べて、観劇に行って、さらに夕食を食べて……。

「嘘だろ!?」
「そう思うなら、確かめてみれば?」

 ごくりとレイモンドの喉が動いて、ドレスの裾から彼の手が入ってきた。

「……マジかよ」
 足の付け根のあたりをそわそわと行き来する手に、ミシェルは嗤った。

「いますぐ抱いてくれないなら、仕事中も履かないから」

 レイモンドはお手上げだと、両手をあげて降参した。
 ミシェルは初めてレイモンドに勝てたと思い、胸を張った。大きすぎるせいでレイモンドの顔にむにゅっと押し付けてしまう。

「頼むから、明日からはちゃんと履いてくれ」

 胸元でレイモンドがごにょごにょと言う。
 勝ち誇った気持ちになり、ミシェルは鼻高々になった。

「それはレイモンド次第よ?」
「わかった」
「じゃあ、早く!」
「待て、もうすぐ邸につく」
「え? 寮に送るんじゃないの?」

 ずっとそんなデートばかりだったから、すっかり寮へ戻されると思っていたのだ。
 ミシェルは明日も休みなので、今日こそは何が何でも抱いてもらおうと意気込んでいた。
 寮は壁が薄い。
 だからいっそ馬車の中でと思っていた。

(下着をつけていなければ、すぐにできるわよね!?)

 そんな発想から思いついたことだった。
 それがどれほど馬鹿で破廉恥なことか、理解できないほど狂ってはいない。けれども、なりふり構っていられなかったのだ。
 ついでにレイモンドを焦らせることができたので後悔はしていないのだけれど……。

「そんなことしなくても、今日は泊まらせる予定だったけど?」
「なっ!!!!」
「それなのにミシェルは、はしたない格好をして俺を誘惑するのか」

 レイモンドのアイスブルーの瞳が騒めき、立ち上るような色気をまとっている。

「そんなことをすればどうなるか『わからせ』るしかなさそうだな?」
「待って! ちょっと待って!」
「誘ったのはミシェルだろ?」
「さっき、最初からその予定だったって言った!!」
「泊まらせるとは言ったけど、抱く予定だったとは言ってない」
「い、意地悪!! どエス!! 鬼畜!!」
「はいはい。俺に跨ってるところ、御者に見られたら大変だから横抱きにするぞ?」
「大っ嫌い!!!!」
「あっそう。俺はミシェルのこと、大好きだけどな?」
「!!!!!!!!!!!!!!!」

 完敗だった。

 馬車を降りる前に、横抱きにしたミシェルの目元や頬にキスをふらせるレイモンドは貴公子そのもので、口ではあんなこと言っても、大好きと言われてお姫様のように扱われてしまえば、ミシェルの胸はときめきでいっぱいになってしまうのだ。


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