【完結】なんちゃって幼妻は夫の溺愛に気付かない?

咲楽えび@改名しました(旧 佐倉えび)

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13.屋台

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串焼きの香りが食欲をそそる。

マイナとレイは、ニコとヨアンを伴って城下町に来た。
レイの久しぶりの休暇に、どこか行きたいところはないかと聞かれ、屋台の串焼きが食べたいと答えた。

夏祭りの屋台が大好きだった。
金魚すくいとか、ヨーヨー釣りとか。
食べ物なら綿菓子とか、リンゴ飴とか、じゃがバターなんかも好きだった。
焼きそばやイカ焼きは定番だろう。

「レイさま、見てください! 牛、豚、鶏と、それからサザエとホタテまであります!! どれにしますか?」

「……どれが美味しいの?」

レイは串焼きを見てマイナを見て、そしてもう一度串焼きを見た。 
屋台は初めてだと言ってたから、迷っているらしい。

城下町は食べ歩きが盛んなので、色んな屋台がある。
父がお忍びで連れて来てくれたことがあり、もう一度来たいとずっと思っていた。
念願が叶って嬉しい!

「どれも美味しいですが、わたくしは牛から食べます」

できれば全種類食べたいが、さすがに全部は串焼きだけでお腹がいっぱいになってしまうだろう。

「そうか。店主、牛を四本」

「まいどっ!!」

レイはヨアンとニコの分も頼んでくれた。
ヨアンは串焼きを食べていても護衛が勤まるので問題ないそうだ。
レイが言うのだから本当だろう。
むしろ一人食べずにいると、浮いてしまうと言っていた。

もちろんヨアンはとても喜んだ。
ヨアンの喜んでいる顔を見れて嬉しい。

「楽しいです、レイさま」

「そうか、よかったな」

目を細めて笑うレイは、今日は町歩き用の庶民風の草臥れたシャツを着ている。
マイナも町娘風のワンピースを着ているが、華やかなレイが隣にいると、どうしても視線を集めてしまうようだ。

(背が高くて小顔で足が長いイケメンだもん、草臥れたシャツ着たところで目立つよねぇ……でも気にしてると楽しくないから、気にしないことにするけど!)

甘じょっぱい牛の串焼きにかぶりついた。

(あれ!? かたい!?)

しきりに歯を立てたが、なかなか噛みちぎれない。

(こんなに、かたかったっけ?)

タルコット公爵家の豪華なご飯ばかり食べてるから、顎が弱ったのだろうか。

「噛めないのか?」

見ればレイの肉は、半分まで減っていた。
串には四個刺さっていたので、すでに二個食べ終えたらしい。
歯が強いのだろうか。

「そこに座って食べようか?」

少ないベンチにちょうど空きがあり、レイの敷いてくれたハンカチの上に腰をおろした。

「おかしいな。前はもっと上手に噛めたのに」

「少し野性的な肉だね」

レイがクツクツ笑った。

(野生的って言い方がレイさまらしくて好きだなぁ)

町にいても、さすがの貴公子ぶりである。

ベンチの背後にいるヨアンは食べ終わっており、ニコもマイナと同じく肉に苦戦していた。

レイの手がマイナの串焼きに伸びてきて、串を取り上げてしまった。

「あっ」

「小さくしてあげようか?」

「何を言ってるの!? 赤ちゃんじゃないから食べられるよ!!」

「そう?」

ニヤニヤするレイを睨みながら、串を取り返して一個めの肉を口に放り込んだ。

(めちゃくちゃ筋っぽい!! 味は美味しいんだけどなぁ)

いつまでも噛み終わらなそうなので、ある程度のところで飲み込んだけれど、二個目を口にする勇気がない。

後ろを向くと、ニコも諦めたらしく、ニコの串焼きはヨアンが食べていた。

(なるほど、その手があったか)

「レイさまが食べてください」

マイナも諦めた。

「うん。次はなにを食べる?」

レイは口の端にタレを付けることもなく、あっさりと食べ終えていた。
やっぱり歯が強いのかもしれない。

串焼き屋さんに串を返して、今度は甘い食べ物が並んでいる辺りをうろついた。
リンゴ飴やチョコバナナに心を奪われながら歩いていくと、味噌を焼いた香ばしい匂いが漂ってきた。

「あれっ!?」

(五平餅!?)

白い楕円の餅に、味噌ダレや醤油と海苔、黒胡麻などがのっている。
五平餅は、少し粒が残っているところが普通の餅と違って美味しくて好きだった。

まさかこの世界にもあるなんて!!

いかにも西洋風な彫りの深い店主が、五平餅を焼いているのが面白い。

「あれが食べたいの?」

「食べたいです!!」

「色んな味があるんだね」

レイに手を引かれて店の前まで来た。

「いらっしゃい。どれにしますか?」

「味噌を四つください!」

今度はマイナが注文した。
甘味噌の美味しさを皆んなで味わいたかった。

「今度は柔らかいから、歩きならが食べられるよ!」

意気込むマイナにレイは頷き、ヨアンは一瞬で食べ終え、ご機嫌だった。

「あっ、私これ好きです」

ニコが思わず漏らした言葉にマイナはニヤニヤした。

「さすがニコ。わかってるね!」

「私も好きだぞ、マイナ」

「レイさまは絶対好きだと思ったよ。味噌汁とか茄子とピーマンの味噌炒めとか豚のニンニク味噌焼きとか鯖の味噌漬煮まで食べるんだもん。絶対に好きだと思ったよ!!」

思わず力説するマイナに、レイは破顔してマイナの頬を撫でた。

「さすがに外でそれは恥ずかしいよ」

「口の端に味噌がついてたのを、そうとは知らせずに取ってあげたかっただけなんだけどな」

「マジか!」

甘い雰囲気に照れてる場合ではなかった。
前世の粗野な言葉も出る始末。

(口に味噌つけて歩く公爵夫人、めっちゃヤバい)

穴があったら入りたいと思うマイナであった。


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