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しおりを挟む二度も気絶したエリーサベトは、王宮で看護されることになった。
「どこも悪くないのに……」
ただ少し、前世の記憶を思い出して混乱しているだけだ。
「暇だわ……外に出たい」
フカフカのベッドは心地いいが、やることがなさすぎる。
「またそんなことを」
「あら、レオナルドさま、お帰りなさい。孤児院へのご訪問お疲れさまでした」
「……あぁ」
孤児院への訪問は、エリーサベトが行っている慈善活動のひとつで、衛生環境や子供たちの発育、教育の進み具合などをチェックしつつ、孤児院や近隣の子供たちに向けて炊き出しも行う。
「明日は南の孤児院へ行ってくる」
「まぁ。ありがとうございます。これから暑くなりますので、水が不足しないか心配しております」
「うむ。よく見てこよう。西の孤児院は、教師の質がいまひとつだったな」
「いまひとつ、と言いますと?」
「わかりにくかった。もっと砕いてわかりやすく、興味を引くようなやり方をせねば、子供には伝わらぬ」
「なるほど?」
「昔の私のようにな」
前回気絶してからというもの、エリーサベトの代わりにレオナルドが精力的に活動を行ってくれるようになった。
これまでも一緒に行ってはいたが、ほぼ物置と化していたというのに、なんという成長ぶり。
「いまのは笑うところだぞ?」
「不敬では?」
「ポンコツ王子にそんな気など使わんでいい」
息を抜いたように笑うレオナルドを見たエリーサベトの胸がキュンと小さな音を立てた。
思わず胸に手を当てる。
「どうした? 痛むか?」
「ええ……少し……」
王家は気絶しがちなエリーサベトを婚約者から外そうと動き始めたらしく、少し体調を崩しただけで捨てるのかと父が怒り、レオナルドも抗議したとかなんとか。
王宮での看護は、体調管理という名の監視だ。
(婚約破棄を望んでたのは私だから、自業自得なのに……)
今ごろ高なる胸が痛い。
(婚約破棄になったら、レオナルドとは、ほとんど会えなくなっちゃう……)
王家と公爵家には大きな隔たりがある。
結局は臣下でしかない公爵家の令嬢など、王家の一存で吹けば飛ぶような存在なのだ。
(健康な令嬢との婚姻が望まれるのは当たり前のことなのに)
「少し休め。また後で様子を見に来る」
「はい……」
または、本当にありますか?
(なんて……聞けないわね……)
エリーサベトは視線を下げて、自分の小さな白い手を見つめた。
その手に影がかかり、レオナルドの香りがする。
「エリィ……」
「はい?」
顔を上げたエリーサベトの額に、レオナルドの唇が触れた。
「ほぎゃあっ!!」
「なんて声を出してる」
あはははと、大口を開けて笑うレオナルドの顔を、真っ赤な顔で見上げるエリーサベト。
そこに、普段はなかなかお目にかかれない人の声がかかった。
「心配して来てみたけど、大丈夫そうだね」
「兄上」
「サイラス殿下っ!!」
慌ててベッドから降りようとするエリーサベトを制し、サイラスは大股で二人の元まで歩いてきた。
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