お前が悪役令嬢だと王子が叫ぶ

咲楽えび@改名しました(旧 佐倉えび)

文字の大きさ
2 / 4

2.

しおりを挟む
 

 リアは十二歳まで孤児院で育った。
 孤児院の奉仕活動の中で作ったリアの軟膏が、傷の治りが早いと評判になったのは、リアと両親が養子縁組の手続きを終えた直後ぐらいからだった。

 父そっくりの琥珀色の瞳と、母そっくりの薄桃色の髪をしたリアは、両親にとって本物の娘のように見えたのだという。

 二人がリアを選んだ理由は、「小さい子に優しくしていて偉かったから」とか「人が嫌がる掃除を率先してやっていたから」など色々あったようだが、そこに聖女の力は含まれてはいなかった。

 それなのに、貴族たちは聖女の能力を金で買ったと両親のことを陰でさんざん罵った。
 両親はリアを育ててくれたお礼として孤児院に寄付しただけで、リアのことを買ったわけではない。ましてや軟膏で儲けようなんて考えてもいなかった。

(悔しい、見返したい……)

 いつしかそんな風に思うようになっていた。
 そんなリアの元に、王宮の官吏が男爵家に来たのが十五歳のとき。

「正式に聖女に認定されたければ、学園へ入学し、王子に推薦されること」と言われ、頷いてしまった。

 そうすれば国が認めた聖女になれる。
 聖女の肩書きがあれば、両親への暴言はなくなると思ったから。


(国外追放になるぐらいなら、入学なんてしなければよかった……)


「もう……こんなところにいたくない」
「そう。じゃあ、俺の国に来る?」
「でも、おとうさんとおかあさんが心配で」

 痛む胃を押さえながら目を開けると、恐ろしく高貴な出で立ちの男性に抱えられていた。
 黒い睫毛は長く、リアを映す瞳は宝石のような美しい緑色だった。
 
「ご両親も一緒に来ればいいよ」
「……あなたは?」

「マーストリア王国、第二王子のラウノ。今日は父の代わりに出席していた」
「申し訳ありませんっ、高貴な方に」

「体調が悪いときに、そんなこと気にしなくていいよ」
「あの、救護室へ行けば、何とかなると思いますので」

「すごいよね、この国。倒れそうなレディがいても誰も手を差しのべないの」
「あの、救護室へ、そっちじゃないです」

「オーブリー殿下って、あんなアホだったっけ?」
「あの」

「あぁ、そういえば昨日どこかで頭を打ったって聞いたけど」
「えっ」

「まるで別人じゃない?」
「それは……はい、確かに」

「アウローラが言ってたこと、いよいよ無視できなくなったな」
「あの、どこへ?」

「馬車だけど」
「救護室は?」

「保護しないと大変なことになるから、急いでる」
「そう、ですか……」

 ラウノの言葉にどう答えていいのかわからず、リアは曖昧な返事をした。



* * *
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

彼女の婚約者の心の折れる音がパキパキと聞こえる

碧井 汐桜香
恋愛
婚約者との顔合わせで素直になれない男児は、一目惚れした少女を王子に掻っ攫わられるお話

やり直し令嬢は何もしない

黒姫
恋愛
逆行転生した令嬢が何もしない事で自分と妹を死の運命から救う話

聖女に負けた侯爵令嬢 (よくある婚約解消もののおはなし)

蒼あかり
恋愛
ティアナは女王主催の茶会で、婚約者である王子クリストファーから婚約解消を告げられる。そして、彼の隣には聖女であるローズの姿が。 聖女として国民に、そしてクリストファーから愛されるローズ。クリストファーとともに並ぶ聖女ローズは美しく眩しいほどだ。そんな二人を見せつけられ、いつしかティアナの中に諦めにも似た思いが込み上げる。 愛する人のために王子妃として支える覚悟を持ってきたのに、それが叶わぬのならその立場を辞したいと願うのに、それが叶う事はない。 いつしか公爵家のアシュトンをも巻き込み、泥沼の様相に……。 ラストは賛否両論あると思います。納得できない方もいらっしゃると思います。 それでも最後まで読んでいただけるとありがたいです。 心より感謝いたします。愛を込めて、ありがとうございました。

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

完結·婚約破棄された氷の令嬢は、嫁がされた枯れおじのもとで花開く

恋愛
ティリアは辺境にある伯爵の娘であり、第三王子ガフタの婚約者であった。 だが、この婚約が気に入らないガフタは学園生活でティリアを冷遇し、卒業パーティーで婚約破棄をする。 しかも、このまま実家に帰ろうとするティリアにガフタは一回り以上年上の冴えないおっさん男爵のところへ嫁ぐように命令する。 こうしてティリアは男爵の屋敷へと向かうのだが、そこにいたのは…… ※完結まで毎日投稿します ※小説家になろう、Nolaノベルにも投稿中

真実の愛には敵いませんもの

あんど もあ
ファンタジー
縁談の相手に「自分には真実の愛の相手がいる」と言われて破談になってしまった私。友人達に聞いてもらって笑い飛ばしてもらいましょう!、と思ったのですが、話は予想外に広まってしまい……。

過去の青き聖女、未来の白き令嬢

手嶋ゆき
恋愛
私は聖女で、その結婚相手は王子様だと前から決まっていた。聖女を国につなぎ止めるだけの結婚。そして、聖女の力はいずれ王国にとって不要になる。 一方、外見も内面も私が勝てないような公爵家の「白き令嬢」が王子に近づいていた。

出来損ないの私がお姉様の婚約者だった王子の呪いを解いてみた結果→

AK
恋愛
「ねえミディア。王子様と結婚してみたくはないかしら?」 ある日、意地の悪い笑顔を浮かべながらお姉様は言った。 お姉様は地味な私と違って公爵家の優秀な長女として、次期国王の最有力候補であった第一王子様と婚約を結んでいた。 しかしその王子様はある日突然不治の病に倒れ、それ以降彼に触れた人は石化して死んでしまう呪いに身を侵されてしまう。 そんは王子様を押し付けるように婚約させられた私だけど、私は光の魔力を有して生まれた聖女だったので、彼のことを救うことができるかもしれないと思った。 お姉様は厄介者と化した王子を押し付けたいだけかもしれないけれど、残念ながらお姉様の思い通りの展開にはさせない。

処理中です...