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しおりを挟むリアは十二歳まで孤児院で育った。
孤児院の奉仕活動の中で作ったリアの軟膏が、傷の治りが早いと評判になったのは、リアと両親が養子縁組の手続きを終えた直後ぐらいからだった。
父そっくりの琥珀色の瞳と、母そっくりの薄桃色の髪をしたリアは、両親にとって本物の娘のように見えたのだという。
二人がリアを選んだ理由は、「小さい子に優しくしていて偉かったから」とか「人が嫌がる掃除を率先してやっていたから」など色々あったようだが、そこに聖女の力は含まれてはいなかった。
それなのに、貴族たちは聖女の能力を金で買ったと両親のことを陰でさんざん罵った。
両親はリアを育ててくれたお礼として孤児院に寄付しただけで、リアのことを買ったわけではない。ましてや軟膏で儲けようなんて考えてもいなかった。
(悔しい、見返したい……)
いつしかそんな風に思うようになっていた。
そんなリアの元に、王宮の官吏が男爵家に来たのが十五歳のとき。
「正式に聖女に認定されたければ、学園へ入学し、王子に推薦されること」と言われ、頷いてしまった。
そうすれば国が認めた聖女になれる。
聖女の肩書きがあれば、両親への暴言はなくなると思ったから。
(国外追放になるぐらいなら、入学なんてしなければよかった……)
「もう……こんなところにいたくない」
「そう。じゃあ、俺の国に来る?」
「でも、おとうさんとおかあさんが心配で」
痛む胃を押さえながら目を開けると、恐ろしく高貴な出で立ちの男性に抱えられていた。
黒い睫毛は長く、リアを映す瞳は宝石のような美しい緑色だった。
「ご両親も一緒に来ればいいよ」
「……あなたは?」
「マーストリア王国、第二王子のラウノ。今日は父の代わりに出席していた」
「申し訳ありませんっ、高貴な方に」
「体調が悪いときに、そんなこと気にしなくていいよ」
「あの、救護室へ行けば、何とかなると思いますので」
「すごいよね、この国。倒れそうなレディがいても誰も手を差しのべないの」
「あの、救護室へ、そっちじゃないです」
「オーブリー殿下って、あんなアホだったっけ?」
「あの」
「あぁ、そういえば昨日どこかで頭を打ったって聞いたけど」
「えっ」
「まるで別人じゃない?」
「それは……はい、確かに」
「アウローラが言ってたこと、いよいよ無視できなくなったな」
「あの、どこへ?」
「馬車だけど」
「救護室は?」
「保護しないと大変なことになるから、急いでる」
「そう、ですか……」
ラウノの言葉にどう答えていいのかわからず、リアは曖昧な返事をした。
* * *
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