なんでも奪う妹を辞めたら、姉に婚約者を譲れと言われまして

咲楽えび@改名しました(旧 佐倉えび)

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 ユリアがスコットにもらった毛糸やお菓子、そのお菓子を包んであった可愛い包み紙や綺麗なリボンなどをハリエットが欲しがるようになったのだ。
 ユリアが大切にしている物ばかりだ。

「それ、譲ってくれる?」
「これ……?」
「そう。とっても可愛いから欲しくなっちゃった」

 ユリアは断るのが苦手だ。
 前世でも、嫌なことを嫌だと言えなかった。
 友達に誘われると断れなかったし、お似合いだと言われて好きでもない人と付き合ってしまったこともある。自分が無いと言われればそれまでだが、前世ではそうすることが処世術だと思っていた。


 泣く泣く手渡した数々のユリアの宝物は、すべてスコットがらみで、ハリエットがスコットを憎からず思っているのは確かだった。

(でも、私とスコットさまの婚約は家同士が決めたことだから)

 ハリエットに大切な物を譲るたびに言い聞かせた。ハリエットとスコットが結ばれる未来に目を瞑って。
 そんなことを二年も繰り返しているうちに、とうとうハリエットは『スコットを譲れ』と言ってきたのだ。


 アントニー第二王子の誕生会。
 二十歳になった王子は誕生会で婚約者に求婚し、指輪を渡すのが慣例となっている。
 この国の王子たちの儀式であり、令嬢たちの憧れの場であった。

 その記念すべき誕生会の日に、婚約破棄されることがどれほど屈辱か。
 公衆の面前で、公爵令嬢が好奇の目にさらされるのだ。

(私が参加してなかったのに婚約破棄されたなんて……)

 そうなれば、ハリエットが公爵家を継ぐためにスコットと婚約するのが筋だろう。
 彼は、この物語のヒーローなのだから。

 原作でもハリエットとスコットが結ばれた。
 いま、それを邪魔しているのはユリアだ。
 天を仰ぐハリエットから視線を外し、ユリアは長い睫毛を伏せた。


「お姉さま」
「なぁに?」
「お姉さまはスコットさまのことがお好きなんですね?」
「別に?」
「じゃあ、なぜ……」
「そうするべきだからよ。ユリアだって、わたくしがいくら聞いても『お父さまが決めた婚約だから』としか言わなかったじゃない? つまりスコットとのことは義務でしょう? 義務なら長女のわたくしが請け負うわ」

 スコットと婚約してからハリエットには事あるごとにスコットのことが好きかと聞かれたが、いつも曖昧な答えしか返せなかった。

『ハリエットと結ばれるかもしれないから』

 けれども、本当はそれ以上に言えない理由がユリアにはあった。


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