虎被りをやめたら文句ばかりだった婚約者がぞっこんになった

王冠

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 改めて周りを見ると、みんな自分で汗を拭いている。何だアイツは!!甘えっ子ちゃんか!!


「他にもたくさんありそうね」
「うー…何か全部そうな気がする…」
「嬉しいと思うよ、ジークハルトは」
「私は嬉しくない」
「だよね」


 むむむぅ。
 これからはちゃんと断ろう!!面倒くさくても!!
 ふんす、と気合を入れる。
 とんだ我儘野郎だ。文句ばっかり言うくせに!!
 ノックスさんにやってもらえ!
 喜んでしてくれるだろうよ!!


「ヴィオレット!」
「はい?あ、ジークハルト様」
「アイスティーが飲みたい」
「どうぞ」


 気を強く持った私はグラスとお茶の入った入れ物を渡した。


「は?」
「ご自分で入れて下さいね」
「っ!!…嫌だ」
「皆さん自分でされてるでしょう?ほら」
「…じゃあもう、要らね」
「はぁ?」
「ヴィオレットが注いだお茶が飲みたい」
「…はぁ…、我儘…」
「もういい」


 ジークハルト様はそう呟いて向こうに行ってしまった。
 ふと見えた顔が凄く哀しそうで、じわじわと罪悪感が湧いて来る。


「お茶くらい入れてあげればよかったかしら…」
「ヴィオ、お茶を用意してるのが過保護だからね」
「え、みんな用意してないの?」
「してないわよ」
「嘘ぉ…」
「ジークハルトがいじけてる」
「えぇー…?」
「ほら」


 ヒューバート様が指差す先にはノックスさんが飲み物を渡しているが、受け取らないジークハルト様がいた。
 まったく何て面倒な…。
 沢山動いて喉も渇いているだろうに…。
 いつも遠慮がちなヒューバート様でも3杯は飲んだわよ?
 ジークハルト様が1杯で足りるはずがない。
 最後まで試合してたんだから。


「もう…」


 じっとジークハルト様に目線を送ると、ちらりとこっちを見たので手招きをしてみる。
 するとジークハルト様はちょっと嬉しそうにこちらに歩いて来た。


「何だよ」
「はい、どうぞ」
「んだよ、最初っからそうしろよ。使えねーな!」
「はいはい」
「ん」
「もう1杯?」
「早くしろ、ノロマ」
「はいはい」


 ジークハルト様が驚いたようにぽかんと口を開けている。喋り方が変わっただけなのに、驚きすぎだ。


「お前、雰囲気変わったか?前は何も言わずに言う通りにしてたのに…」
「意思を持てって自分が言ったんでしょ」
「喋り方も変わったな」
「そうね、こっちの方が楽だからね」
「ふぅん。もう1杯いる」
「はいはい」
「……ぞ」
「は?」
「そっちの方がいいぞ…」


 小さな声でそう言って、ジークハルト様は仲間の所に帰った。グラスを返してくれる時に「ありがと」と照れたように呟いて。


「うーん…可愛い…と思えなくもないような…。ただ、面倒なクソガキのような…」
「顔がいいだけに可愛く見えるだけで、世話を焼いて欲しい甘えたよ」
「的確!」
「ジークハルトは誰にでも甘えらんないからね」


 ヒューバート様がぽつりとそう言った。甘えて欲しい!って人は沢山いそうだけどなぁ。だってあんなに人気なんだし。


「ジークハルトは人気はあるけど、ちゃんと中身を見てくれる人は少ないんだよね。顔とか、家柄とかが先行しちゃって。それに、食べ物とか飲み物は特に気をつけてる」
「何でかしら?気をつけてる風はないけど、お弁当とかも」
「そりゃヴィオレット嬢が作る物だから。媚薬とかは入ってないからね」
「媚薬!?」
「ジークハルトはよくあるんだよ、あわよくば関係を…みたいな事が。過去に何回か媚薬を飲んじゃって、保健室に隔離してもらったりしてたよ」
「そりゃ信用できないわよね…」
「さっきも、ノックス嬢の飲み物受け取らなかったでしょ?」


 確かに、かなり喉が渇いていたはずなのに、受け取ってなかった。




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