ドS王子は溺愛系

王冠

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 あれから2週間が経過した。

 レオからの手紙、またはプレゼント、そして本人。

 幾度となく我が家を訪問しているが、全て丁重に送り返している。

 私は自宅でラニアル語を必死に勉強し、ひっそりと王宮に出向いて講師の方に評価を頂いている。どうやら私は怒っている時の方が集中力もやる気も漲るらしく、本日めでたくラニアル語のマスターを終えた。

「レティア様、こちらに殿下が向かっているようです」
「じゃあ、ルートを変えましょう」

 エマは私に協力的で、殿下の動向を教えてくれる。見事に殿下を出し抜いて、今日も今日とて使用人用に偽装された馬車へ乗り込み成功だ。

 エマ曰く、殿下の憔悴っぷりは見てわかるほどで相変わらず美麗だがアンニュイな雰囲気を醸し出し女性は皆気絶寸前だとか。


 少し可哀想な気もするが、自分で吐いた言葉には責任が伴うのでご了承頂きたい。私だって会いたいのを我慢してるんだから。

 抱きしめて欲しい、笑いかけて欲しい、好きだってキスして欲しい。

 我慢くらべはパーティー当日まで続く。

「…会いたいなぁ…」

 滑り出た本音に苦笑して。
 ただ、私が意地になってるだけなのかも知れない。
 またしても苦い笑いが込み上げた。



「レティア、殿下からの手紙と、ドレスが届いてるわよ」
「いつも通りで」
「はいはい。手紙は読まなくていいの?明後日はパーティーでしょう」
「読んだら許しちゃうから」
「あらあら」

 母がころころと笑って執事に言いつけている。ドレスが気になるけど、着る気はない。

 私は自分で選んだものを着るのだ。


 あっと言う間に日は過ぎて、決戦の日がやって来た。未だにに私がレオのパートナーなのかもわからないが間に合うように登城する。

 私のドレスは、薄い蒼色で銀の刺繍の入ったマーメイドドレスだ。胸元はレースで覆われて見えそうで見えない。対して背中はぐっと開いていて髪が揺れるたびにチラ見えする。


「レティア、そのドレス最高に綺麗よ」
「ありがとう、着こなせる淑女になれて良かったわ」

 にこりと微笑み馬車へ向かう。

「いざ、出陣!ね…」

 この戦いが是か非かは行けばわかる事。


 ゆっくりと瞼を閉じて、パチリと開く。結果がどうでも受け入れるだけ。


 程なくして王宮に到着し、会場に行こうとすると庭園に佇む男女が見えた。

 1人は良く知っている男性。
 もう1人は今夜会うであろう女性。


 2人とも美男美女でとても目を引く。


 これは負け戦かな、とぼんやり思いながら通路を歩いた。涙が浮かんでくるが、まだ早い。自分が始めた事なのだ。最後まできちんと見届けなければ。
 レオの口から聞くまでは、泣くなんてことはしたくない。


 違う、レオは私を愛している。そう、信じたい。


 ダンスホールへ入場する扉は通り過ぎ、王族専用の扉まで進む。前室で待ち、呼ばれたら入る仕組みだ。先程の光景から、レオはまだ来ていないと踏んだ。


「レティア様、こちらです」
「ありがとうございます」

 護衛の方達にお礼を言って前室に入った。緊張で手が震えたが、入れるのだからパートナーは私のままらしい。


「レティアちゃん、お久しぶりねぇ」
「王国の月にご挨拶申し上げます」
「綺麗なカーテシーありがとう。ラニアル語もよく頑張ったわね。講師群が褒めていたわ、短期間でマスターしたって」
「ありがとうございます」

 和かに会話が進む中、王妃様の表情が途端に申し訳なさそうになる。

「今回の事、ごめんなさいね。辛い思いをさせて」
「いえ、私も我儘を言ってしまって…申し訳ありませんでした」
「陛下とバカ息子には特大の雷を落としてあるからね」
「ふふ…。私は殿下の意思を尊重します」
「私も抗議したんだけど、ラニアル側が諦めなくて」
「そうなんですね」


 あぁ、結果こたえは決まっているのだろうか。


 愛しい人はまだ姿を見せない。


 王妃様は国王様に呼ばれて席を外してしまった。今回の、縁談絡みかもしれないな。


「ここにいていいのかしら、私」


 パートナー変更ならここにいてはまずい。そっと席を立とうと腰を上げた時、バンっと乱暴にドアが開いた。

「どこに行くつもりだ、ティア」


 絶対零度の声が静かに響く。しばらくぶりに間近で見る愛しい人の顔は少し痩せて、それがまた儚げで想像を絶する色気を垂れ流していた。

「そこから一歩でも動いてみろ、絶対に許さない」

 睨みつけるように私を見つめたまま、レオがこちらへ一歩ずつ近付いてくる。殺気を孕んだ空気がじわじわと私を絡め取っていくように重い。

「王国の小太陽にご挨拶申し上げます」

 すっとカーテシーを行い、挨拶をすると凍てついた視線とかち合った。

「…他に言うことはないのか…」

 低く唸るような声で苦しげに告げるレオは、痛々しい。そうしてしまったのが自分だと思うと同時に、仄暗い喜びを感じてしまった。

「さぁ、どうでしょうか。私には関係がありませんから」

 にこりと困ったように笑うと、レオの表情がごっそりと抜け落ちた。

「ティアは、もう…俺の側には居たくない?」

 震えた声が聞こえた。ポタリ、ポタリと絨毯にシミが出来る。

 レオは泣いていた。


「っ!!」


 真っ直ぐに私を捉え、子供みたいに泣きながら震えている。

「私の愛を信じていないのは、殿下ですわ」
「違っ…!」
「違わない。私を遠ざけようとした事、私に縁談を隠した事。私が不安から殿下の元を去るかもしれないと思ったからでしょう?」
「俺は…ティア以外要らない。ティアだけなんだ」
「存じています。私も貴方だけを愛し、貴方と生涯共に在ると覚悟を決めたのです」

 はっとレオが目を見開く。

「その覚悟を殿下は関係がないと突き放したのです」
「ご、ごめ……」
「私は怒っているのです。どうすれば挽回出来るのか、怯えて働いてない頭で考えなさいませ」
「ティア……抱きしめていい?」
「いちいち聞かずとも、私がここにいるのはそう言う事でしょう」
「ティア!!」

 ぎゅうぎゅうと胸に閉じ込められて、苦しさと嬉しさがない混ぜになる。

「ティア…愛してる愛してるよ…」
「私も愛してるわ、レオ」
「絶対離さない…」
「離されたら今度こそ目の前から消えるわ」
「やめて、心臓に悪い…」
「ふふ…大好きよ、レオ」

 ちゅ、レオの唇にキスを落とした。うっすらと涙味の久しぶりのキスに胸がキュンとする。

「足りない…」
「あ…んぅ…」

 くちゅりくちゅりと舌が絡まり合う。メイクが、と思いつつも止めることが出来なかった。

 しばらくの間そうしていたが、はっとパーティーの事を思い出す。

 2人ともこのままじゃ出れない。どうする!?となった時にノック音が部屋に響いた。

「レティア様、エマでございます。メイクのお直しを」

 何て仕事が出来るのエマったら!!
 2人で目を合わせ笑い合う。

 凄い速さでメイク直しをしたエマは、嬉しそうに笑っている。

「さ、ご入場なさって下さい!」
「ありがとう、エマ」
「すまない、エマ」

 心なしか顔色が良くなったレオを見て、ほぅっとなっているといつもの意地悪な瞳になっていた。

「俺を泣かせるお姫様、エスコートさせて頂きます」
「私を怒らせる王太子様、よろしくお願い致します」


 そう言い合って、パーティー会場に入場し、ラニアル国のアマリエ王女にご挨拶もした。噂通りの美姫だが、レオが私にべったりだったので呆れたように「砂を吐きそうだわ」と呟いていた。


 無事にパーティーも終わって、私達は部屋でのんびりまったりとしている。
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