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「そうよね、人前であまりベタベタするのは良くないわね、私は飲み物を取ってくるわ」
「ティアラ…?」
私はリュダールの側からさっと離れ、ジュースが置いてあるテーブルに足を運ぶ。
リュダールは何かに気付いたのか、探るように私の名を呼ぶけれど私は足を止められなかった。
「お酒はダメよ、お姉様!!」
「はいはい、わかってるわ」
お酒なんか飲んだら大変な事になってしまう。先日間違えてお酒を飲んだ私は、一口で盛大に酔ってしまいアリーシャに抱きついて離れなかったとか。
「…今思えば寒気がするわね…」
葡萄ジュースを手に取りカラカラに乾いた喉を潤す。ふと彼らに視線を向ければアリーシャから何か話を聞いたリュダールがふと優しげな顔を見せた後、真っ赤になった。
「…っ!」
グラスを持つ手に力が入る。私は今まで一体何を見て来たんだろうか。大好きなリュダールと想いを通わせ、未来の幸せを描く事に夢中で現実が見えてなかったのか。
針の先ほどの小さな綻びが、取り返しの付かない大きな穴になる事もある。それを見つけた時に、繕うのか…それとも、見て見ぬふりをするのか。
「…ティアラ?お前、今日変じゃない?体調が悪いのか?」
「リュダール…、いいえ、体調は悪くないわ」
「顔色もちょっと悪いし、無理せずに言えよ?」
「えぇ、ありがとう」
いつの間にか近くにいたリュダールが心配そうに肩を抱いてくるけれど、それは私への想いなのかしら、周囲を騙す為のカモフラージュなのかしら。
「ティアラ、後で部屋に行っていい?」
「、えぇ、いいわよ」
私達は、いつもどちらかの部屋でこっそりと抱きしめ合ったり、口付けをしたりしていた。結婚するまでは純潔を守らないといけないから、それ以上は出来ない事を残念に思ったりもしていた。けれど今は、その古めかしいしきたりにどこか感謝している自分がいる。
純潔を散らした挙句、妹を愛しているなんて言われた日には死を選ぶしかない。そんな事になったら、もう恨みしかなくなる。
そんな事になるのだけは、本当に嫌だった。
「ティアラ、ちょっとだけ抜け出そう」
「え?でも、いいのかしら」
「大丈夫、ちょっとだけ」
リュダールに手を引かれて夜の庭園に出た。そのまま少し散歩していたらいつものようにぎゅう、と抱き込まれる。
「ティアラ…好きだ」
「ありがとう」
「誕生日、おめでとう」
「ありがとう」
耳元でリュダールの低い声がして、息がかかる度にぴくりと反応してしまう。想いを繋いだ日から、今の今までそれが当たり前だと思っていた。
「来年の誕生日には、結婚したい」
「ふふ…その頃はまだ学園を卒業出来ていないでしょ」
「ティアラが卒業までの単位をもう取り終えるの、俺は知ってるよ」
「まぁ、アリーシャね?あなたにそれを漏らしたの」
「早く結婚したいんだって言ったら教えてくれた」
「困った子ね…」
私はふふ、と笑いながらリュダールを抱き締める。
あぁ、何も知らずにこの会話をしたかったわ。そうすれば、無条件で「私もよ」と甘えられたのに。
「ティアラ、これ…貰って欲しい」
「まぁ!私に?」
「うん、君への想いを込めたんだ」
「嬉しいわ、開けてみても良い?」
「もちろん」
リュダールがそっと懐から出したワインレッドの箱には、金色の文字で「リア」と刻印がされていた。
「っ!!これっ!?」
「ははっ!驚いた?ティアラがずっとカタログを見てたあの店のだよ」
「す、凄いわ…!リアは予約でさえなかなか取れないのに…」
「頑張ったんだ、ティアラの為に」
惚けたように私を見つめるリュダールに、嘘や後ろめたさは感じない。そう、それがまた謎を呼ぶ。ならば何故、あのように密会をしているのか。
「付けてやるよ」
「ありがとう…」
箱を開けると、ネックレスが入っていた。ころりとした可愛いティアラ型のトップに青灰色の石がついたシンプルなデザイン。普段からずっと付けておける、フルオーダーの物だった。
「このデザイン可愛い…」
「だろ?俺、三ヶ月かけて考えたんだ」
「リュダール…ありがと…ほんとに…」
うるり、と涙が浮かんだ。リュダールは私を愛してくれている。今も変わらずに、ずっと。こんなドロドロに溶けそうな顔、アリーシャには見せていないはず。
きっとそうだ。
そうであってほしい。
私は…彼を愛している。
「ティアラ…愛してる…」
「ん、私も…」
どちらからともなく重なる唇。徐々に深くなるそれをお互いに止められずに何度も何度も繰り返す。
「は、も…だめ…」
「ん…そ、だな…。これ以上は…」
私達は暫く抱き合い、漸く会場に戻ったのだった。
「ティアラ…?」
私はリュダールの側からさっと離れ、ジュースが置いてあるテーブルに足を運ぶ。
リュダールは何かに気付いたのか、探るように私の名を呼ぶけれど私は足を止められなかった。
「お酒はダメよ、お姉様!!」
「はいはい、わかってるわ」
お酒なんか飲んだら大変な事になってしまう。先日間違えてお酒を飲んだ私は、一口で盛大に酔ってしまいアリーシャに抱きついて離れなかったとか。
「…今思えば寒気がするわね…」
葡萄ジュースを手に取りカラカラに乾いた喉を潤す。ふと彼らに視線を向ければアリーシャから何か話を聞いたリュダールがふと優しげな顔を見せた後、真っ赤になった。
「…っ!」
グラスを持つ手に力が入る。私は今まで一体何を見て来たんだろうか。大好きなリュダールと想いを通わせ、未来の幸せを描く事に夢中で現実が見えてなかったのか。
針の先ほどの小さな綻びが、取り返しの付かない大きな穴になる事もある。それを見つけた時に、繕うのか…それとも、見て見ぬふりをするのか。
「…ティアラ?お前、今日変じゃない?体調が悪いのか?」
「リュダール…、いいえ、体調は悪くないわ」
「顔色もちょっと悪いし、無理せずに言えよ?」
「えぇ、ありがとう」
いつの間にか近くにいたリュダールが心配そうに肩を抱いてくるけれど、それは私への想いなのかしら、周囲を騙す為のカモフラージュなのかしら。
「ティアラ、後で部屋に行っていい?」
「、えぇ、いいわよ」
私達は、いつもどちらかの部屋でこっそりと抱きしめ合ったり、口付けをしたりしていた。結婚するまでは純潔を守らないといけないから、それ以上は出来ない事を残念に思ったりもしていた。けれど今は、その古めかしいしきたりにどこか感謝している自分がいる。
純潔を散らした挙句、妹を愛しているなんて言われた日には死を選ぶしかない。そんな事になったら、もう恨みしかなくなる。
そんな事になるのだけは、本当に嫌だった。
「ティアラ、ちょっとだけ抜け出そう」
「え?でも、いいのかしら」
「大丈夫、ちょっとだけ」
リュダールに手を引かれて夜の庭園に出た。そのまま少し散歩していたらいつものようにぎゅう、と抱き込まれる。
「ティアラ…好きだ」
「ありがとう」
「誕生日、おめでとう」
「ありがとう」
耳元でリュダールの低い声がして、息がかかる度にぴくりと反応してしまう。想いを繋いだ日から、今の今までそれが当たり前だと思っていた。
「来年の誕生日には、結婚したい」
「ふふ…その頃はまだ学園を卒業出来ていないでしょ」
「ティアラが卒業までの単位をもう取り終えるの、俺は知ってるよ」
「まぁ、アリーシャね?あなたにそれを漏らしたの」
「早く結婚したいんだって言ったら教えてくれた」
「困った子ね…」
私はふふ、と笑いながらリュダールを抱き締める。
あぁ、何も知らずにこの会話をしたかったわ。そうすれば、無条件で「私もよ」と甘えられたのに。
「ティアラ、これ…貰って欲しい」
「まぁ!私に?」
「うん、君への想いを込めたんだ」
「嬉しいわ、開けてみても良い?」
「もちろん」
リュダールがそっと懐から出したワインレッドの箱には、金色の文字で「リア」と刻印がされていた。
「っ!!これっ!?」
「ははっ!驚いた?ティアラがずっとカタログを見てたあの店のだよ」
「す、凄いわ…!リアは予約でさえなかなか取れないのに…」
「頑張ったんだ、ティアラの為に」
惚けたように私を見つめるリュダールに、嘘や後ろめたさは感じない。そう、それがまた謎を呼ぶ。ならば何故、あのように密会をしているのか。
「付けてやるよ」
「ありがとう…」
箱を開けると、ネックレスが入っていた。ころりとした可愛いティアラ型のトップに青灰色の石がついたシンプルなデザイン。普段からずっと付けておける、フルオーダーの物だった。
「このデザイン可愛い…」
「だろ?俺、三ヶ月かけて考えたんだ」
「リュダール…ありがと…ほんとに…」
うるり、と涙が浮かんだ。リュダールは私を愛してくれている。今も変わらずに、ずっと。こんなドロドロに溶けそうな顔、アリーシャには見せていないはず。
きっとそうだ。
そうであってほしい。
私は…彼を愛している。
「ティアラ…愛してる…」
「ん、私も…」
どちらからともなく重なる唇。徐々に深くなるそれをお互いに止められずに何度も何度も繰り返す。
「は、も…だめ…」
「ん…そ、だな…。これ以上は…」
私達は暫く抱き合い、漸く会場に戻ったのだった。
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