4 / 45
3
しおりを挟む
「そうよね、人前であまりベタベタするのは良くないわね、私は飲み物を取ってくるわ」
「ティアラ…?」
私はリュダールの側からさっと離れ、ジュースが置いてあるテーブルに足を運ぶ。
リュダールは何かに気付いたのか、探るように私の名を呼ぶけれど私は足を止められなかった。
「お酒はダメよ、お姉様!!」
「はいはい、わかってるわ」
お酒なんか飲んだら大変な事になってしまう。先日間違えてお酒を飲んだ私は、一口で盛大に酔ってしまいアリーシャに抱きついて離れなかったとか。
「…今思えば寒気がするわね…」
葡萄ジュースを手に取りカラカラに乾いた喉を潤す。ふと彼らに視線を向ければアリーシャから何か話を聞いたリュダールがふと優しげな顔を見せた後、真っ赤になった。
「…っ!」
グラスを持つ手に力が入る。私は今まで一体何を見て来たんだろうか。大好きなリュダールと想いを通わせ、未来の幸せを描く事に夢中で現実が見えてなかったのか。
針の先ほどの小さな綻びが、取り返しの付かない大きな穴になる事もある。それを見つけた時に、繕うのか…それとも、見て見ぬふりをするのか。
「…ティアラ?お前、今日変じゃない?体調が悪いのか?」
「リュダール…、いいえ、体調は悪くないわ」
「顔色もちょっと悪いし、無理せずに言えよ?」
「えぇ、ありがとう」
いつの間にか近くにいたリュダールが心配そうに肩を抱いてくるけれど、それは私への想いなのかしら、周囲を騙す為のカモフラージュなのかしら。
「ティアラ、後で部屋に行っていい?」
「、えぇ、いいわよ」
私達は、いつもどちらかの部屋でこっそりと抱きしめ合ったり、口付けをしたりしていた。結婚するまでは純潔を守らないといけないから、それ以上は出来ない事を残念に思ったりもしていた。けれど今は、その古めかしいしきたりにどこか感謝している自分がいる。
純潔を散らした挙句、妹を愛しているなんて言われた日には死を選ぶしかない。そんな事になったら、もう恨みしかなくなる。
そんな事になるのだけは、本当に嫌だった。
「ティアラ、ちょっとだけ抜け出そう」
「え?でも、いいのかしら」
「大丈夫、ちょっとだけ」
リュダールに手を引かれて夜の庭園に出た。そのまま少し散歩していたらいつものようにぎゅう、と抱き込まれる。
「ティアラ…好きだ」
「ありがとう」
「誕生日、おめでとう」
「ありがとう」
耳元でリュダールの低い声がして、息がかかる度にぴくりと反応してしまう。想いを繋いだ日から、今の今までそれが当たり前だと思っていた。
「来年の誕生日には、結婚したい」
「ふふ…その頃はまだ学園を卒業出来ていないでしょ」
「ティアラが卒業までの単位をもう取り終えるの、俺は知ってるよ」
「まぁ、アリーシャね?あなたにそれを漏らしたの」
「早く結婚したいんだって言ったら教えてくれた」
「困った子ね…」
私はふふ、と笑いながらリュダールを抱き締める。
あぁ、何も知らずにこの会話をしたかったわ。そうすれば、無条件で「私もよ」と甘えられたのに。
「ティアラ、これ…貰って欲しい」
「まぁ!私に?」
「うん、君への想いを込めたんだ」
「嬉しいわ、開けてみても良い?」
「もちろん」
リュダールがそっと懐から出したワインレッドの箱には、金色の文字で「リア」と刻印がされていた。
「っ!!これっ!?」
「ははっ!驚いた?ティアラがずっとカタログを見てたあの店のだよ」
「す、凄いわ…!リアは予約でさえなかなか取れないのに…」
「頑張ったんだ、ティアラの為に」
惚けたように私を見つめるリュダールに、嘘や後ろめたさは感じない。そう、それがまた謎を呼ぶ。ならば何故、あのように密会をしているのか。
「付けてやるよ」
「ありがとう…」
箱を開けると、ネックレスが入っていた。ころりとした可愛いティアラ型のトップに青灰色の石がついたシンプルなデザイン。普段からずっと付けておける、フルオーダーの物だった。
「このデザイン可愛い…」
「だろ?俺、三ヶ月かけて考えたんだ」
「リュダール…ありがと…ほんとに…」
うるり、と涙が浮かんだ。リュダールは私を愛してくれている。今も変わらずに、ずっと。こんなドロドロに溶けそうな顔、アリーシャには見せていないはず。
きっとそうだ。
そうであってほしい。
私は…彼を愛している。
「ティアラ…愛してる…」
「ん、私も…」
どちらからともなく重なる唇。徐々に深くなるそれをお互いに止められずに何度も何度も繰り返す。
「は、も…だめ…」
「ん…そ、だな…。これ以上は…」
私達は暫く抱き合い、漸く会場に戻ったのだった。
「ティアラ…?」
私はリュダールの側からさっと離れ、ジュースが置いてあるテーブルに足を運ぶ。
リュダールは何かに気付いたのか、探るように私の名を呼ぶけれど私は足を止められなかった。
「お酒はダメよ、お姉様!!」
「はいはい、わかってるわ」
お酒なんか飲んだら大変な事になってしまう。先日間違えてお酒を飲んだ私は、一口で盛大に酔ってしまいアリーシャに抱きついて離れなかったとか。
「…今思えば寒気がするわね…」
葡萄ジュースを手に取りカラカラに乾いた喉を潤す。ふと彼らに視線を向ければアリーシャから何か話を聞いたリュダールがふと優しげな顔を見せた後、真っ赤になった。
「…っ!」
グラスを持つ手に力が入る。私は今まで一体何を見て来たんだろうか。大好きなリュダールと想いを通わせ、未来の幸せを描く事に夢中で現実が見えてなかったのか。
針の先ほどの小さな綻びが、取り返しの付かない大きな穴になる事もある。それを見つけた時に、繕うのか…それとも、見て見ぬふりをするのか。
「…ティアラ?お前、今日変じゃない?体調が悪いのか?」
「リュダール…、いいえ、体調は悪くないわ」
「顔色もちょっと悪いし、無理せずに言えよ?」
「えぇ、ありがとう」
いつの間にか近くにいたリュダールが心配そうに肩を抱いてくるけれど、それは私への想いなのかしら、周囲を騙す為のカモフラージュなのかしら。
「ティアラ、後で部屋に行っていい?」
「、えぇ、いいわよ」
私達は、いつもどちらかの部屋でこっそりと抱きしめ合ったり、口付けをしたりしていた。結婚するまでは純潔を守らないといけないから、それ以上は出来ない事を残念に思ったりもしていた。けれど今は、その古めかしいしきたりにどこか感謝している自分がいる。
純潔を散らした挙句、妹を愛しているなんて言われた日には死を選ぶしかない。そんな事になったら、もう恨みしかなくなる。
そんな事になるのだけは、本当に嫌だった。
「ティアラ、ちょっとだけ抜け出そう」
「え?でも、いいのかしら」
「大丈夫、ちょっとだけ」
リュダールに手を引かれて夜の庭園に出た。そのまま少し散歩していたらいつものようにぎゅう、と抱き込まれる。
「ティアラ…好きだ」
「ありがとう」
「誕生日、おめでとう」
「ありがとう」
耳元でリュダールの低い声がして、息がかかる度にぴくりと反応してしまう。想いを繋いだ日から、今の今までそれが当たり前だと思っていた。
「来年の誕生日には、結婚したい」
「ふふ…その頃はまだ学園を卒業出来ていないでしょ」
「ティアラが卒業までの単位をもう取り終えるの、俺は知ってるよ」
「まぁ、アリーシャね?あなたにそれを漏らしたの」
「早く結婚したいんだって言ったら教えてくれた」
「困った子ね…」
私はふふ、と笑いながらリュダールを抱き締める。
あぁ、何も知らずにこの会話をしたかったわ。そうすれば、無条件で「私もよ」と甘えられたのに。
「ティアラ、これ…貰って欲しい」
「まぁ!私に?」
「うん、君への想いを込めたんだ」
「嬉しいわ、開けてみても良い?」
「もちろん」
リュダールがそっと懐から出したワインレッドの箱には、金色の文字で「リア」と刻印がされていた。
「っ!!これっ!?」
「ははっ!驚いた?ティアラがずっとカタログを見てたあの店のだよ」
「す、凄いわ…!リアは予約でさえなかなか取れないのに…」
「頑張ったんだ、ティアラの為に」
惚けたように私を見つめるリュダールに、嘘や後ろめたさは感じない。そう、それがまた謎を呼ぶ。ならば何故、あのように密会をしているのか。
「付けてやるよ」
「ありがとう…」
箱を開けると、ネックレスが入っていた。ころりとした可愛いティアラ型のトップに青灰色の石がついたシンプルなデザイン。普段からずっと付けておける、フルオーダーの物だった。
「このデザイン可愛い…」
「だろ?俺、三ヶ月かけて考えたんだ」
「リュダール…ありがと…ほんとに…」
うるり、と涙が浮かんだ。リュダールは私を愛してくれている。今も変わらずに、ずっと。こんなドロドロに溶けそうな顔、アリーシャには見せていないはず。
きっとそうだ。
そうであってほしい。
私は…彼を愛している。
「ティアラ…愛してる…」
「ん、私も…」
どちらからともなく重なる唇。徐々に深くなるそれをお互いに止められずに何度も何度も繰り返す。
「は、も…だめ…」
「ん…そ、だな…。これ以上は…」
私達は暫く抱き合い、漸く会場に戻ったのだった。
1,992
あなたにおすすめの小説
私のことは愛さなくても結構です
ありがとうございました。さようなら
恋愛
サブリナは、聖騎士ジークムントからの婚約の打診の手紙をもらって有頂天になった。
一緒になって喜ぶ父親の姿を見た瞬間に前世の記憶が蘇った。
彼女は、自分が本の世界の中に生まれ変わったことに気がついた。
サブリナは、ジークムントと愛のない結婚をした後に、彼の愛する聖女アルネを嫉妬心の末に殺害しようとする。
いわゆる悪女だった。
サブリナは、ジークムントに首を切り落とされて、彼女の家族は全員死刑となった。
全ての記憶を思い出した後、サブリナは熱を出して寝込んでしまった。
そして、サブリナの妹クラリスが代打としてジークムントの婚約者になってしまう。
主役は、いわゆる悪役の妹です
婚約者は無神経な転生悪役令嬢に夢中のようです
宝月 蓮
恋愛
乙女ゲームのモブに転生したマーヤ。目の前にいる婚約者はそのゲームの攻略対象だった。しかし婚約者は悪役令嬢に救われたようで、マーヤそっちのけで悪役令嬢に夢中。おまけに攻略対象達に囲まれている悪役令嬢も転生者で、何だか無神経発言ばかりで少しモヤモヤしていしまうマーヤ。そんな中、マーヤはゲームには関係ない隣国の公爵令息と仲良くなり……!?
小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。
〖完結〗親友だと思っていた彼女が、私の婚約者を奪おうとしたのですが……
藍川みいな
恋愛
大好きな親友のマギーは、私のことを親友だなんて思っていなかった。私は引き立て役だと言い、私の婚約者を奪ったと告げた。
婚約者と親友をいっぺんに失い、失意のどん底だった私に、婚約者の彼から贈り物と共に手紙が届く。
その手紙を読んだ私は、婚約発表が行われる会場へと急ぐ。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
前編後編の、二話で完結になります。
小説家になろう様にも投稿しています。
〖完結〗旦那様は私よりも愛人を選ぶそうです。
藍川みいな
恋愛
愛していると言った旦那様は、結婚して3年が経ったある日、愛人を連れて来ました。
旦那様が愛していたのは、私ではなく、聖女の力だったようです。3年間平和だった事から、私の力など必要ないと勘違いされたようで…
「もうお前は必要ない。出て行け。」と、言われたので出ていきます。
私がいなくなったら結界は消滅してしまいますけど、大丈夫なのですよね? それならば、二度と私を頼らないでください!
シャーロットの力のおかげで、子爵から伯爵になれたのに、あっけなく捨てるルーク。
結界が消滅しそうになり、街が魔物に囲まれた事でルークはシャーロットを連れ戻そうとするが…
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全15話で完結になります。
〖完結〗旦那様が愛していたのは、私ではありませんでした……
藍川みいな
恋愛
「アナベル、俺と結婚して欲しい。」
大好きだったエルビン様に結婚を申し込まれ、私達は結婚しました。優しくて大好きなエルビン様と、幸せな日々を過ごしていたのですが……
ある日、お姉様とエルビン様が密会しているのを見てしまいました。
「アナベルと結婚したら、こうして君に会うことが出来ると思ったんだ。俺達は家族だから、怪しまれる心配なくこの邸に出入り出来るだろ?」
エルビン様はお姉様にそう言った後、愛してると囁いた。私は1度も、エルビン様に愛してると言われたことがありませんでした。
エルビン様は私ではなくお姉様を愛していたと知っても、私はエルビン様のことを愛していたのですが、ある事件がきっかけで、私の心はエルビン様から離れていく。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
かなり気分が悪い展開のお話が2話あるのですが、読まなくても本編の内容に影響ありません。(36話37話)
全44話で完結になります。
幼馴染の王女様の方が大切な婚約者は要らない。愛してる? もう興味ありません。
藍川みいな
恋愛
婚約者のカイン様は、婚約者の私よりも幼馴染みのクリスティ王女殿下ばかりを優先する。
何度も約束を破られ、彼と過ごせる時間は全くなかった。約束を破る理由はいつだって、「クリスティが……」だ。
同じ学園に通っているのに、私はまるで他人のよう。毎日毎日、二人の仲のいい姿を見せられ、苦しんでいることさえ彼は気付かない。
もうやめる。
カイン様との婚約は解消する。
でもなぜか、別れを告げたのに彼が付きまとってくる。
愛してる? 私はもう、あなたに興味はありません!
一度完結したのですが、続編を書くことにしました。読んでいただけると嬉しいです。
いつもありがとうございます。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
沢山の感想ありがとうございます。返信出来ず、申し訳ありません。
あなただけが私を信じてくれたから
樹里
恋愛
王太子殿下の婚約者であるアリシア・トラヴィス侯爵令嬢は、茶会において王女殺害を企てたとして冤罪で投獄される。それは王太子殿下と恋仲であるアリシアの妹が彼女を排除するために計画した犯行だと思われた。
一方、自分を信じてくれるシメオン・バーナード卿の調査の甲斐もなく、アリシアは結局そのまま断罪されてしまう。
しかし彼女が次に目を覚ますと、茶会の日に戻っていた。その日を境に、冤罪をかけられ、断罪されるたびに茶会前に回帰するようになってしまった。
処刑を免れようとそのたびに違った行動を起こしてきたアリシアが、最後に下した決断は。
王子の片思いに気付いたので、悪役令嬢になって婚約破棄に協力しようとしてるのに、なぜ執着するんですか?
いりん
恋愛
婚約者の王子が好きだったが、
たまたま付き人と、
「婚約者のことが好きなわけじゃないー
王族なんて恋愛して結婚なんてできないだろう」
と話ながら切なそうに聖女を見つめている王子を見て、王子の片思いに気付いた。
私が悪役令嬢になれば、聖女と王子は結婚できるはず!と婚約破棄を目指してたのに…、
「僕と婚約破棄して、あいつと結婚するつもり?許さないよ」
なんで執着するんてすか??
策略家王子×天然令嬢の両片思いストーリー
基本的に悪い人が出てこないほのぼのした話です。
他小説サイトにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる