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早いものであれから半年が過ぎ、私とリュダールは相変わらずの関係性を保っていた。
変わった事といえば、私の学年は最終学年となり、アリーシャが新入生として学園に通うようになった事だろうか。
あと一科目で、私の卒業単位取得は完了する。でも、あえてその科目だけ取らずに置いていた。
何故ならば。
この半年で、リュダールとアリーシャの密会は頻度が増していた。自宅の庭園、人気のない倉庫、サイラス殿下の護衛でリュダールが学園に来るようになってからは学園でもその光景を見かけるようになった。
「…これ、とても貴重な物だから大事にしろよ」
「えぇ、わかってるわ。ねぇ、お姉様は大丈夫?」
「あぁ、気付いてないと思う。ティアラは俺を信用してるから」
「本当に最低ね、お義兄様は。まぁ、私も共犯なんだけど」
「…仕方ないだろ、知られたらマズイんだよ」
「それもそうね」
またお互いに何かを渡し合い、ぼそぼそと会話をしている。この半年間、リュダールとアリーシャを信じたいと思い続けていた。だから余計に『違った、疑いは間違いだった』という証拠を探していたのだけれど。
ことごとく秘密の逢瀬を目撃する羽目になろうとは思っていなかった。そして、必ずといって良いほどに彼らは言うのだ。
「お姉様は大丈夫?」
「バレたらマズイ」
どちらももう破綻している。本当に気付いてないのだろうか?コソコソとするのが馬鹿馬鹿しくなって、あからさまに観察していた事もあったけど、二人の世界に入っているのか気付いてはもらえなかった。あれで本当に殿下の護衛とか出来てるのかしらと不安に思う。
「はぁ…もう良い加減に気付いて欲しいわね…」
それに、毎回何を渡し合っているのだろうか。リュダールは、私に良くプレゼントをくれる方だと思う。それは決まって私の好みに合わせてくる。でも、アリーシャに渡しているものは毎回違う。彼女の趣味なんだろうか。それでも渡された物をアリーシャは愛しげに見つめ、大事そうに抱えているのだ。リュダールも、毎回違う大きさの袋を渡されると、満足そうに笑っているから中身が気になる。
ずっと観察している私には、もう一つ疑問があった。リュダールはどちらかというとベタベタしたいタイプの人だ。それは昔から変わらない。けれど、アリーシャには抱き締める事はおろか、手すら触れることはない。それに物の受け渡しをしたら、さっさと別れるのだから尚更意味がわからない。あんなに人気のない所で私と二人になったなら、間違いなく口付けくらいはされるものだが。
「何を考えているのかさっぱりだわ」
結婚式の準備はもうすでに終わり、あとは招待状を出すだけ。ドレスも今月中には仕上がるだろう。本来であれば、招待状は送っておくべきだが私が止めている。
「新婦の名前が変わる可能性があるものね」
そんな事を考えながらする結婚式の準備ほど、身が入らないものはない。最近では、もう式とかいらなくない?とさえ。
とはいえ私はリュダールを今も愛している。それは変わらない。変わらないのだが…。
ずっと私に隠し事をしている事が小さな棘となって胸に刺さっているのだ。この半年間、式の準備をしていても心から楽しむ事は出来なかった。もやもやと霧みたいにどこか晴れない。
それに、ただ純粋に聞いてみたい。
バレていないと思っていた事が全て露見している気分はどうか?
マズイとは、何がマズイのか?
二人して私を騙す事に罪悪感はないのか?と。
そして私も彼らに言いたい。
密会する二人を見ていて、非常に不愉快だったわ、と。
「そうか…私…怒っているんだわ…」
私は普段からあまり怒る事はない。特に大好きなあの二人が何をしようとも仕方ないわね、で終わるくらいだ。でも、今回の件は妙に私を不愉快にさせる。
そして悪びれもなく笑顔で接してくる彼らに、余計に不信感が募るのだ。何が可笑しいのか、と。
それがじわじわと病魔みたいに私を蝕んでいた事にようやく今気づいた。
「ふふ…私も大概鈍いわね…」
不思議なもので、自覚すれば沸々と怒りが湧いてくる。最終的に結婚をするのだろうし、リュダールへの愛情も無くなってはいない。けれど、何か。
二人に何らかの仕返しはしてやりたいと思ってしまうのだ。
そしてそろそろ、このふざけた化かし合いを終了としたい。
「どんな仕返しが一番効果的かしらね…」
知らずに上がる口角を隠す事なく私は思考をめぐさせた。
変わった事といえば、私の学年は最終学年となり、アリーシャが新入生として学園に通うようになった事だろうか。
あと一科目で、私の卒業単位取得は完了する。でも、あえてその科目だけ取らずに置いていた。
何故ならば。
この半年で、リュダールとアリーシャの密会は頻度が増していた。自宅の庭園、人気のない倉庫、サイラス殿下の護衛でリュダールが学園に来るようになってからは学園でもその光景を見かけるようになった。
「…これ、とても貴重な物だから大事にしろよ」
「えぇ、わかってるわ。ねぇ、お姉様は大丈夫?」
「あぁ、気付いてないと思う。ティアラは俺を信用してるから」
「本当に最低ね、お義兄様は。まぁ、私も共犯なんだけど」
「…仕方ないだろ、知られたらマズイんだよ」
「それもそうね」
またお互いに何かを渡し合い、ぼそぼそと会話をしている。この半年間、リュダールとアリーシャを信じたいと思い続けていた。だから余計に『違った、疑いは間違いだった』という証拠を探していたのだけれど。
ことごとく秘密の逢瀬を目撃する羽目になろうとは思っていなかった。そして、必ずといって良いほどに彼らは言うのだ。
「お姉様は大丈夫?」
「バレたらマズイ」
どちらももう破綻している。本当に気付いてないのだろうか?コソコソとするのが馬鹿馬鹿しくなって、あからさまに観察していた事もあったけど、二人の世界に入っているのか気付いてはもらえなかった。あれで本当に殿下の護衛とか出来てるのかしらと不安に思う。
「はぁ…もう良い加減に気付いて欲しいわね…」
それに、毎回何を渡し合っているのだろうか。リュダールは、私に良くプレゼントをくれる方だと思う。それは決まって私の好みに合わせてくる。でも、アリーシャに渡しているものは毎回違う。彼女の趣味なんだろうか。それでも渡された物をアリーシャは愛しげに見つめ、大事そうに抱えているのだ。リュダールも、毎回違う大きさの袋を渡されると、満足そうに笑っているから中身が気になる。
ずっと観察している私には、もう一つ疑問があった。リュダールはどちらかというとベタベタしたいタイプの人だ。それは昔から変わらない。けれど、アリーシャには抱き締める事はおろか、手すら触れることはない。それに物の受け渡しをしたら、さっさと別れるのだから尚更意味がわからない。あんなに人気のない所で私と二人になったなら、間違いなく口付けくらいはされるものだが。
「何を考えているのかさっぱりだわ」
結婚式の準備はもうすでに終わり、あとは招待状を出すだけ。ドレスも今月中には仕上がるだろう。本来であれば、招待状は送っておくべきだが私が止めている。
「新婦の名前が変わる可能性があるものね」
そんな事を考えながらする結婚式の準備ほど、身が入らないものはない。最近では、もう式とかいらなくない?とさえ。
とはいえ私はリュダールを今も愛している。それは変わらない。変わらないのだが…。
ずっと私に隠し事をしている事が小さな棘となって胸に刺さっているのだ。この半年間、式の準備をしていても心から楽しむ事は出来なかった。もやもやと霧みたいにどこか晴れない。
それに、ただ純粋に聞いてみたい。
バレていないと思っていた事が全て露見している気分はどうか?
マズイとは、何がマズイのか?
二人して私を騙す事に罪悪感はないのか?と。
そして私も彼らに言いたい。
密会する二人を見ていて、非常に不愉快だったわ、と。
「そうか…私…怒っているんだわ…」
私は普段からあまり怒る事はない。特に大好きなあの二人が何をしようとも仕方ないわね、で終わるくらいだ。でも、今回の件は妙に私を不愉快にさせる。
そして悪びれもなく笑顔で接してくる彼らに、余計に不信感が募るのだ。何が可笑しいのか、と。
それがじわじわと病魔みたいに私を蝕んでいた事にようやく今気づいた。
「ふふ…私も大概鈍いわね…」
不思議なもので、自覚すれば沸々と怒りが湧いてくる。最終的に結婚をするのだろうし、リュダールへの愛情も無くなってはいない。けれど、何か。
二人に何らかの仕返しはしてやりたいと思ってしまうのだ。
そしてそろそろ、このふざけた化かし合いを終了としたい。
「どんな仕返しが一番効果的かしらね…」
知らずに上がる口角を隠す事なく私は思考をめぐさせた。
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