31 / 44
31
しおりを挟む
「確かに…沢山泣いたし、嫌な思いもしたわね。ロイ兄様もわざと第一部隊にしたみたいだし」
「…すまない…本当に…クズだ…俺」
「でも、今回は…私はあまり泣いていないし、ロイ兄様だって恋人が出来て幸せそうだから…」
「許して…くれるのか…」
「そうねぇ…完全に許すのは難しいから、これからネチネチ嫌味は言うかもね」
「嫌味くらい…言いたいだけ言ってくれ。償っても償いきれない…」
叱られた犬みたいにジャスティンが頭を垂れた。
これは策略なんだろうか?
抱き締めたくて堪らないわ。
そうよ、私は怒っていたのよ!!
でも、人間そんなに長くは怒れないのよねぇ…困ったことに。
考えてみたら、私は約8年で嫌だった事も辛かった事も女神様に手伝ってもらいながら消化したけれど。
ジャスティンはついこの間、自分のやらかしを走馬灯みたいに見たんだものね…。
そりゃあどうすれば良いかわからないわよね…。
「ジャスティン?」
「…ミリオネア…?」
「ほら、おいで?」
「…っ!!い、いいのか…こんな…クズが…触れても…」
腕を広げた私に、ジャスティンは戸惑いを隠せない。
きっとぐるぐると色んな思いが頭を駆け巡っているのだろう。
彼の葛藤が、出しては引く手に表れていた。
「過去は過去なのよ、ジャスティン」
「俺は…あの約束を果たす権利をまだ持ってるか…?」
「持ってるわ、浮気しなければ」
「絶対…しないっ!!ミリオネア以外要らない!!」
ぎゅうっと久しぶりに抱き締められて。
ジャスティンの香りが鼻を通る。
脳が揺れそうな錯覚に陥る。
私は…やっぱり、ジャスティンだけを愛している。
「ミリオネア…ミリオネア…愛してる…」
涙声のジャスティンはかなりレアだ。
過去では見た事がない。
いつも自信たっぷりで、最後には思い通りにしてしまう人。
今もそうではあるが、こんなに綺麗な涙を流せる人になり、それを私に見せてくれる人になった。
私もそうだけど、弱さを見せられる人を見つけるのは案外難しい。
「女神様に報告に行かなきゃね…」
「俺も行きたい…」
「喜びそうね」
「そうなのか…?」
「女神様はジャスティンの顔が大好物なの」
「……顔……」
「そう、この綺麗な顔よ」
私は両手で彼の頬を挟んで、至近距離で見つめた。
久しぶりにじっと見た綺麗な顔は、疲れた様子を見せているが、幾分と活気が出たように見える。
同時にじわじわと赤くなって来て、とうとうぷいと顔を背けた。
「あら、反抗的だわ」
「あんまり見るな…」
「泣いちゃったものねぇ?」
「仕方ないだろ…本当に…ミリオネアがいなくなったらって…」
私を抱き締める腕が震えている。
シャラン、とジャスティンを慰めるようにネックレスが鳴いた。
「ミリオネア…もう…離れてくれ…」
「どうして?」
懇願するように気弱な声でジャスティンが告げる。
まだ触れてはならないルールは適用されているのだろうか?
そんな自分ルールに私が従う義務はない。
「その…手を出してしまいそうだから…」
「……そういう所はあまり変わらないのね?」
「好きな女が腕にいたら…男はみんなそうなるんだよ」
ぐぅっと唸りながらジャスティンが我慢している。
犬に待て!を躾けているみたいな気になるわね。
でも私は意地悪だから、やめてはやらない。
「嫌よ。離れないわ。寂しかったのはあなただけじゃないのよ?」
「くっ…意地が悪いぞ…」
「そうよ?たっぷり仕返ししてやるんだから」
「…キスしたい…」
「学園だもの、ダメよ」
クスクスと笑いながらそう告げると、ふわりと抱き上げられてソファにどさりと下ろされて。
隣に座ったジャスティンにまた抱き締められて。
「…キスして…どろどろに溶かしたい…」
「ダメ」
「全身に俺の跡を残したい…」
「絶対ダメ」
「ミリオネアの胎内に入りたい…」
「もう…いやらしい事ばかりじゃない…」
「もうずっとそうしたいと思ってた」
ぎゅうぎゅうとしてくるけれど、手は出して来ないから言うだけ言って発散してるんだなと思うと笑ってしまう。
私はゆっくりとジャスティンの頭を撫でた。
「ミリオネア…デート…行くのか…?」
「そうね、約束してるから…」
「だ、誰か…聞いても…?」
ジャスティンの脳内では今、色んな男性がひょこひょこと出て来ているんだろうな…と笑いを堪える。
それにしても、ジャスティンはこんなにわかりやすい人だったかしら?
いつも無表情で何を考えてるのかわからない事も沢山あったけれど。
今は手に取るようにわかるわ。
顔に全部出るからかしら…?
「ユーリス様と、ケーキを食べに行くのよ」
「ユーリス…シグナッド侯爵家の…女性か…」
明らかにほっとしたジャスティンは、色んな事がダダ漏れ状態だ。
今ならカタギリ様の事も白状するかしら。
過去の事はもういいとしても、カタギリ様の事はまた別の話だ。
「ねぇ、ジャスティン。カタギリ様といつも何をしてたの?」
「…調べ物だ。口外は出来ないが」
「それでいつも一緒にいたの?」
「そうだ。誓って疾しい事はない。絶対に」
「ふぅん…」
「ミリオネアに勘違いをさせて…悪かった」
「女神様が呪いの類を使う人かもって言っていたから、心配してたの。変な物を掛けられてないかって」
「彼女は呪いなどは掛けないと思う」
はっきりと否定するジャスティンに、地味にイラッとするんだけど。
私は心配して…かなり心配してたのよ。
なのに夜も帰って来なくなっちゃうし…。
挙句に「彼女はそんなことしない」みたいな信頼は何処から生まれるわけ?
あれ?何か、私って損な役回りばっかりじゃない?
浮気を見せつけられて、自殺して、生き返って、また浮気の疑いとか。
「そう。心配するだけ無駄だったみたいね。じゃあもうずーっと調べ物でもしてなさいよ、彼女とね!」
「え、ミリオネア?何で怒ってるんだ?」
「私はケーキ食べに行くから離してくれるかしら!?」
「待て、何でそんなに怒ってるんだ」
何もわかってないジャスティンに怒りをぶつけるのもバカバカしくて…自分が情けなくなって来た。
それに、勝手に心配してそれの対価みたいに行動の制限をするのも違う気もするけど。
でも…急速に信頼し合える関係性が私を不安にさせる。
じわり、と目に涙が浮かぶ。
ダメよ、こんな事くらいで。
自分だってロイ兄様の討伐の時は言えなかったじゃない。
ジャスティンだって同じよ、何か理由があるのよ。
必死で自分を諭して、顔を彼に見られたくなくて下を向く。
どこまでが浮気じゃなくて、どこからが浮気なのか。
もう良くわからない。
「ミリオネア…?なっ…泣いてるのか?」
気付けば静かに涙は溢れる。
必死で涙を抑え込んで、淑女を顔に張り付けた。
「…私を避けていた間に随分と信頼関係を築いたのね…」
「それは……」
「もう、いい。言えないならいいわ。もう二度と聞かない」
ふらりと立ち上がる私を慌てた様子で見る彼に、既存の愛はあるのかと。
問いたい気持ちを閉じ込めた。
前とは違う、わかっているけど。
何を言っても、きっと彼女との信頼の上に成り立った秘密の方が勝つのだろう。
君はここからは入れない、と線を引かれた気がして。
ひゅっと顔が強張った。
「ミリオネア!?待て!」
「……」
空気が変わったのを察知したのか、ジャスティンが焦っているけど、初手を間違えたのはあなたなの。
もう聞きたくない、と脳が拒否している。
思えばアイラの時もそんなだったな、と余計に惨めになって来て。
ジクジクと古傷が痛むみたいに、また心が凍りそうになった。
なんだ、全然完治してないじゃないと乾いた笑いが出る。
「ミリオネア!!」
ぐっと腕を引かれてバランスを崩し、ジャスティンの胸で受け止められても今は何も思えなくて。
ジャスティンもこんな仄暗い、陰湿な気持ちだったのかと今更にして理解した。
気持ちが疲れると身体にもダメージを喰らうのね。
どっと疲れた。
「ミリオネア、俺が愛してるのはミリオネアだけだから」
「私も…」
「え?」
「私も同じ事をしてやろうかしら。あなたは体感しないとわからないみたいだから」
「…ダメだ」
「いいえ、もう決めたわ。毎日その方とランチして、調べ物をするわ。ジャスティンが心配しても、彼はそんなことしないって彼を信じるわ。そして、私が何をしているかは、あなたには絶対に言わない。そして、あなただけを愛してると言えばいい」
「ミリオネア…お願いだから止めてくれ」
ジャスティンの濃紺が暗く濁る。
でも、私の気持ちもわかって欲しかった。
嫌な言い方になってしまったし、可愛い女の子でもないけれど。
傷付いているジャスティンにも可哀想だけれど。
気持ちを信じて貰えないのも、隠し事をされるのも、どちらも不安を煽るのだと知れば良い。
「じゃあ、私もう行くわ」
「ミリオネア…頼む…止めてくれ…」
「自分は良くて私はダメな理由がないでしょ?あなたがしているのはそういう事よ。話せない理由があるから、仕方ないんでしょうけど」
「…国家機密に該当する内容だ」
「…え?」
「だから、話せない。すまない、ミリオネア」
ジャスティンは真剣な眼差しを私に向ける。
国家機密では…確かに話せない。
カタギリ様は一体何者なんだろう。
そして何を調べているのか…。
「だから…止めてくれ、ミリオネア。俺が狂いそうだ」
「……そうね…それは言えないわね。ごめんなさい、ジャスティン」
「俺こそ、変に隠して悪かった…」
私の背中に回した腕に力が入る。
情けないなぁ…嫉妬して…不安になって問い詰めて。
私、何をしてるんだろう…。
はぁ…と思わず溜息を吐いてしまった。
ジャスティンが何とも言えない顔で私を見ている。
「じゃあ、私行くわね。調べ物、頑張って」
「…あぁ」
私はそのまま部屋を出た。
浅はかな自分が嫌になる。
ケーキを食べてちょっと気分を変えよう。
ユーリス様の元へと急いで向かった。
今は何も考えたくなかった。
「…すまない…本当に…クズだ…俺」
「でも、今回は…私はあまり泣いていないし、ロイ兄様だって恋人が出来て幸せそうだから…」
「許して…くれるのか…」
「そうねぇ…完全に許すのは難しいから、これからネチネチ嫌味は言うかもね」
「嫌味くらい…言いたいだけ言ってくれ。償っても償いきれない…」
叱られた犬みたいにジャスティンが頭を垂れた。
これは策略なんだろうか?
抱き締めたくて堪らないわ。
そうよ、私は怒っていたのよ!!
でも、人間そんなに長くは怒れないのよねぇ…困ったことに。
考えてみたら、私は約8年で嫌だった事も辛かった事も女神様に手伝ってもらいながら消化したけれど。
ジャスティンはついこの間、自分のやらかしを走馬灯みたいに見たんだものね…。
そりゃあどうすれば良いかわからないわよね…。
「ジャスティン?」
「…ミリオネア…?」
「ほら、おいで?」
「…っ!!い、いいのか…こんな…クズが…触れても…」
腕を広げた私に、ジャスティンは戸惑いを隠せない。
きっとぐるぐると色んな思いが頭を駆け巡っているのだろう。
彼の葛藤が、出しては引く手に表れていた。
「過去は過去なのよ、ジャスティン」
「俺は…あの約束を果たす権利をまだ持ってるか…?」
「持ってるわ、浮気しなければ」
「絶対…しないっ!!ミリオネア以外要らない!!」
ぎゅうっと久しぶりに抱き締められて。
ジャスティンの香りが鼻を通る。
脳が揺れそうな錯覚に陥る。
私は…やっぱり、ジャスティンだけを愛している。
「ミリオネア…ミリオネア…愛してる…」
涙声のジャスティンはかなりレアだ。
過去では見た事がない。
いつも自信たっぷりで、最後には思い通りにしてしまう人。
今もそうではあるが、こんなに綺麗な涙を流せる人になり、それを私に見せてくれる人になった。
私もそうだけど、弱さを見せられる人を見つけるのは案外難しい。
「女神様に報告に行かなきゃね…」
「俺も行きたい…」
「喜びそうね」
「そうなのか…?」
「女神様はジャスティンの顔が大好物なの」
「……顔……」
「そう、この綺麗な顔よ」
私は両手で彼の頬を挟んで、至近距離で見つめた。
久しぶりにじっと見た綺麗な顔は、疲れた様子を見せているが、幾分と活気が出たように見える。
同時にじわじわと赤くなって来て、とうとうぷいと顔を背けた。
「あら、反抗的だわ」
「あんまり見るな…」
「泣いちゃったものねぇ?」
「仕方ないだろ…本当に…ミリオネアがいなくなったらって…」
私を抱き締める腕が震えている。
シャラン、とジャスティンを慰めるようにネックレスが鳴いた。
「ミリオネア…もう…離れてくれ…」
「どうして?」
懇願するように気弱な声でジャスティンが告げる。
まだ触れてはならないルールは適用されているのだろうか?
そんな自分ルールに私が従う義務はない。
「その…手を出してしまいそうだから…」
「……そういう所はあまり変わらないのね?」
「好きな女が腕にいたら…男はみんなそうなるんだよ」
ぐぅっと唸りながらジャスティンが我慢している。
犬に待て!を躾けているみたいな気になるわね。
でも私は意地悪だから、やめてはやらない。
「嫌よ。離れないわ。寂しかったのはあなただけじゃないのよ?」
「くっ…意地が悪いぞ…」
「そうよ?たっぷり仕返ししてやるんだから」
「…キスしたい…」
「学園だもの、ダメよ」
クスクスと笑いながらそう告げると、ふわりと抱き上げられてソファにどさりと下ろされて。
隣に座ったジャスティンにまた抱き締められて。
「…キスして…どろどろに溶かしたい…」
「ダメ」
「全身に俺の跡を残したい…」
「絶対ダメ」
「ミリオネアの胎内に入りたい…」
「もう…いやらしい事ばかりじゃない…」
「もうずっとそうしたいと思ってた」
ぎゅうぎゅうとしてくるけれど、手は出して来ないから言うだけ言って発散してるんだなと思うと笑ってしまう。
私はゆっくりとジャスティンの頭を撫でた。
「ミリオネア…デート…行くのか…?」
「そうね、約束してるから…」
「だ、誰か…聞いても…?」
ジャスティンの脳内では今、色んな男性がひょこひょこと出て来ているんだろうな…と笑いを堪える。
それにしても、ジャスティンはこんなにわかりやすい人だったかしら?
いつも無表情で何を考えてるのかわからない事も沢山あったけれど。
今は手に取るようにわかるわ。
顔に全部出るからかしら…?
「ユーリス様と、ケーキを食べに行くのよ」
「ユーリス…シグナッド侯爵家の…女性か…」
明らかにほっとしたジャスティンは、色んな事がダダ漏れ状態だ。
今ならカタギリ様の事も白状するかしら。
過去の事はもういいとしても、カタギリ様の事はまた別の話だ。
「ねぇ、ジャスティン。カタギリ様といつも何をしてたの?」
「…調べ物だ。口外は出来ないが」
「それでいつも一緒にいたの?」
「そうだ。誓って疾しい事はない。絶対に」
「ふぅん…」
「ミリオネアに勘違いをさせて…悪かった」
「女神様が呪いの類を使う人かもって言っていたから、心配してたの。変な物を掛けられてないかって」
「彼女は呪いなどは掛けないと思う」
はっきりと否定するジャスティンに、地味にイラッとするんだけど。
私は心配して…かなり心配してたのよ。
なのに夜も帰って来なくなっちゃうし…。
挙句に「彼女はそんなことしない」みたいな信頼は何処から生まれるわけ?
あれ?何か、私って損な役回りばっかりじゃない?
浮気を見せつけられて、自殺して、生き返って、また浮気の疑いとか。
「そう。心配するだけ無駄だったみたいね。じゃあもうずーっと調べ物でもしてなさいよ、彼女とね!」
「え、ミリオネア?何で怒ってるんだ?」
「私はケーキ食べに行くから離してくれるかしら!?」
「待て、何でそんなに怒ってるんだ」
何もわかってないジャスティンに怒りをぶつけるのもバカバカしくて…自分が情けなくなって来た。
それに、勝手に心配してそれの対価みたいに行動の制限をするのも違う気もするけど。
でも…急速に信頼し合える関係性が私を不安にさせる。
じわり、と目に涙が浮かぶ。
ダメよ、こんな事くらいで。
自分だってロイ兄様の討伐の時は言えなかったじゃない。
ジャスティンだって同じよ、何か理由があるのよ。
必死で自分を諭して、顔を彼に見られたくなくて下を向く。
どこまでが浮気じゃなくて、どこからが浮気なのか。
もう良くわからない。
「ミリオネア…?なっ…泣いてるのか?」
気付けば静かに涙は溢れる。
必死で涙を抑え込んで、淑女を顔に張り付けた。
「…私を避けていた間に随分と信頼関係を築いたのね…」
「それは……」
「もう、いい。言えないならいいわ。もう二度と聞かない」
ふらりと立ち上がる私を慌てた様子で見る彼に、既存の愛はあるのかと。
問いたい気持ちを閉じ込めた。
前とは違う、わかっているけど。
何を言っても、きっと彼女との信頼の上に成り立った秘密の方が勝つのだろう。
君はここからは入れない、と線を引かれた気がして。
ひゅっと顔が強張った。
「ミリオネア!?待て!」
「……」
空気が変わったのを察知したのか、ジャスティンが焦っているけど、初手を間違えたのはあなたなの。
もう聞きたくない、と脳が拒否している。
思えばアイラの時もそんなだったな、と余計に惨めになって来て。
ジクジクと古傷が痛むみたいに、また心が凍りそうになった。
なんだ、全然完治してないじゃないと乾いた笑いが出る。
「ミリオネア!!」
ぐっと腕を引かれてバランスを崩し、ジャスティンの胸で受け止められても今は何も思えなくて。
ジャスティンもこんな仄暗い、陰湿な気持ちだったのかと今更にして理解した。
気持ちが疲れると身体にもダメージを喰らうのね。
どっと疲れた。
「ミリオネア、俺が愛してるのはミリオネアだけだから」
「私も…」
「え?」
「私も同じ事をしてやろうかしら。あなたは体感しないとわからないみたいだから」
「…ダメだ」
「いいえ、もう決めたわ。毎日その方とランチして、調べ物をするわ。ジャスティンが心配しても、彼はそんなことしないって彼を信じるわ。そして、私が何をしているかは、あなたには絶対に言わない。そして、あなただけを愛してると言えばいい」
「ミリオネア…お願いだから止めてくれ」
ジャスティンの濃紺が暗く濁る。
でも、私の気持ちもわかって欲しかった。
嫌な言い方になってしまったし、可愛い女の子でもないけれど。
傷付いているジャスティンにも可哀想だけれど。
気持ちを信じて貰えないのも、隠し事をされるのも、どちらも不安を煽るのだと知れば良い。
「じゃあ、私もう行くわ」
「ミリオネア…頼む…止めてくれ…」
「自分は良くて私はダメな理由がないでしょ?あなたがしているのはそういう事よ。話せない理由があるから、仕方ないんでしょうけど」
「…国家機密に該当する内容だ」
「…え?」
「だから、話せない。すまない、ミリオネア」
ジャスティンは真剣な眼差しを私に向ける。
国家機密では…確かに話せない。
カタギリ様は一体何者なんだろう。
そして何を調べているのか…。
「だから…止めてくれ、ミリオネア。俺が狂いそうだ」
「……そうね…それは言えないわね。ごめんなさい、ジャスティン」
「俺こそ、変に隠して悪かった…」
私の背中に回した腕に力が入る。
情けないなぁ…嫉妬して…不安になって問い詰めて。
私、何をしてるんだろう…。
はぁ…と思わず溜息を吐いてしまった。
ジャスティンが何とも言えない顔で私を見ている。
「じゃあ、私行くわね。調べ物、頑張って」
「…あぁ」
私はそのまま部屋を出た。
浅はかな自分が嫌になる。
ケーキを食べてちょっと気分を変えよう。
ユーリス様の元へと急いで向かった。
今は何も考えたくなかった。
702
あなたにおすすめの小説
白い結婚で結構ですわ。殿下より、私の自由のほうが大事ですので
鍛高譚
恋愛
「第二王子との婚約? でも殿下には平民の恋人がいるらしいんですけど?
――なら、私たち“白い結婚”で結構ですわ。お好きになさってくださいな、殿下」
自由気ままに読書とお茶を楽しむのがモットーの侯爵令嬢・ルージュ。
ある日、突然“第二王子リオネルとの政略結婚”を押しつけられてしまう。
ところが当の殿下は平民の恋人に夢中で、
「形式上の夫婦だから干渉しないでほしい」などと言い出す始末。
むしろ好都合とばかりに、ルージュは優雅な“独身気分”を満喫するはずが……
いつしか、リナという愛人と妙に仲良くなり、
彼女を巡る宮廷スキャンダルに巻き込まれ、
しまいには婚約が白紙になってしまって――!?
けれどこれは、ルージュが本当の幸せを掴む始まりにすぎなかった。
自分を心から大切にしてくれる“新しい旦那様”候補が現れて、
さあ、思い切り自由に愛されましょう!
……そして、かの王子様の結末は“ざまぁ”なのか“自業自得”なのか?
自由気ままな侯爵令嬢が切り開く、
“白い結婚破談”からの痛快ざまぁ&本当の恋愛譚、はじまります。
大人になったオフェーリア。
ぽんぽこ狸
恋愛
婚約者のジラルドのそばには王女であるベアトリーチェがおり、彼女は慈愛に満ちた表情で下腹部を撫でている。
生まれてくる子供の為にも婚約解消をとオフェーリアは言われるが、納得がいかない。
けれどもそれどころではないだろう、こうなってしまった以上は、婚約解消はやむなしだ。
それ以上に重要なことは、ジラルドの実家であるレピード公爵家とオフェーリアの実家はたくさんの共同事業を行っていて、今それがおじゃんになれば、オフェーリアには補えないほどの損失を生むことになる。
その点についてすぐに確認すると、そういう所がジラルドに見離される原因になったのだとベアトリーチェは怒鳴りだしてオフェーリアに掴みかかってきた。
その尋常では無い様子に泣き寝入りすることになったオフェーリアだったが、父と母が設定したお見合いで彼女の騎士をしていたヴァレントと出会い、とある復讐の方法を思いついたのだった。
ソウシソウアイ?
野草こたつ/ロクヨミノ
恋愛
政略結婚をすることになったオデット。
その相手は初恋の人であり、同時にオデットの姉アンネリースに想いを寄せる騎士団の上司、ランヴァルド・アーノルト伯爵。
拒否に拒否を重ねたが強制的に結婚が決まり、
諦めにも似た気持ちで嫁いだオデットだが……。
殺された伯爵夫人の六年と七時間のやりなおし
さき
恋愛
愛のない結婚と冷遇生活の末、六年目の結婚記念日に夫に殺されたプリシラ。
だが目を覚ました彼女は結婚した日の夜に戻っていた。
魔女が行った『六年間の時戻し』、それに巻き込まれたプリシラは、同じ人生は歩まないと決めて再び六年間に挑む。
変わらず横暴な夫、今度の人生では慕ってくれる継子。前回の人生では得られなかった味方。
二度目の人生を少しずつ変えていく中、プリシラは前回の人生では現れなかった青年オリバーと出会い……。
愛しい人、あなたは王女様と幸せになってください
無憂
恋愛
クロエの婚約者は銀の髪の美貌の騎士リュシアン。彼はレティシア王女とは幼馴染で、今は護衛騎士だ。二人は愛し合い、クロエは二人を引き裂くお邪魔虫だと噂されている。王女のそばを離れないリュシアンとは、ここ数年、ろくな会話もない。愛されない日々に疲れたクロエは、婚約を破棄することを決意し、リュシアンに通告したのだが――
【完結】裏切られたあなたにもう二度と恋はしない
たろ
恋愛
優しい王子様。あなたに恋をした。
あなたに相応しくあろうと努力をした。
あなたの婚約者に選ばれてわたしは幸せでした。
なのにあなたは美しい聖女様に恋をした。
そして聖女様はわたしを嵌めた。
わたしは地下牢に入れられて殿下の命令で騎士達に犯されて死んでしまう。
大好きだったお父様にも見捨てられ、愛する殿下にも嫌われ酷い仕打ちを受けて身と心もボロボロになり死んでいった。
その時の記憶を忘れてわたしは生まれ変わった。
知らずにわたしはまた王子様に恋をする。
貴方の記憶が戻るまで
cyaru
恋愛
「君と結婚をしなくてはならなくなったのは人生最大の屈辱だ。私には恋人もいる。君を抱くことはない」
初夜、夫となったサミュエルにそう告げられたオフィーリア。
3年経ち、子が出来ていなければ離縁が出来る。
それを希望に間もなく2年半となる時、戦場でサミュエルが負傷したと連絡が入る。
大怪我を負ったサミュエルが目を覚ます‥‥喜んだ使用人達だが直ぐに落胆をした。
サミュエルは記憶を失っていたのだった。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
史実などに基づいたものではない事をご理解ください。
※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。
表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。
※作者都合のご都合主義です。作者は外道なので気を付けてください(何に?‥いろいろ)
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
『婚約破棄されたので王太子女となります。殿下より上位です』
鷹 綾
恋愛
「君は王太子妃に相応しくない」
その一言で、私は婚約を破棄されました。
理由は“真実の愛”。選ばれたのは、可憐な令嬢。
……ええ、どうぞご自由に。
私は泣きません。縋りません。
なぜなら——王家は、私を手放せないから。
婚約は解消。
けれど家格、支持、実務能力、そして民の信頼。
失ったのは殿下の隣の席だけ。
代わりに私は、王太子女として王政補佐の任を命じられます。
最初は誰もが疑いました。
若い、女だ、感情的だ、と。
ならば証明しましょう。
怒らず、怯えず、排除せず。
反対も忠誠も受け止めながら、国を揺らさずに保つことを。
派手な革命は起こしません。
大逆転も叫びません。
ただ、静かに積み上げます。
そして気づけば——
“殿下の元婚約者”ではなく、
“揺れない王”と呼ばれるようになるのです。
これは、婚約破棄から始まる静かな逆転譚。
王冠の重みを受け入れた一人の女性が、
国を、そして自分の立場を塗り替えていく物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる