夕焼け

take

文字の大きさ
1 / 15
出会い

日曜日

しおりを挟む
 幸子とは5年ほど付き合った。大学1年の秋頃から付き合い、社会人2年目にお互い仕事が忙しく、会う機会が減り、別れた。浮気はしなかったし、多分あっちもしてない。
セックスをすることなく、5年も続いたのは我ながらプラトニック過ぎるなと思うけれど、お互い好きという気持ちに嘘は無かった。
ただ幸子の求めてるものと、自分の求めてるものには少し違いがあったなと今振り返れば思う。
幸子と付き合ってる間はそんなことを気にも留めなかったが、それが別れる原因だったのかもしれない。

 目覚ましをかけず、汗が滴り落ちるも、気だるげに何度も何度も眠りに落ち、布団と一体化するかしないかの感覚の中もう寝れないなと悟り、しばらく天井を見上げる。
 そして、今日やるべきこと、昨日までのミスを繰り返しを反芻し、そこから逃げるかのように寝返りをうち、じっと動きを止める。 
躾のなってないガキの大声がマンション内の廊下から空いた窓を通じて部屋に鳴り響くと共に、蒸し暑い部屋の中自分の汗の匂いに辟易とし、布団から飛び起きる。
普段より数倍自分の匂いを纏った身体を、ぬるめのシャワーですすぎ、何度もシャンプーで髪を泡立て、ぬるめのお湯で洗い落とす。幸子と付き合ってからずっと着古し、伸びきったTシャツに、古着屋でかった安い部屋着の半ズボンを履き、リビングのソファに腰掛け、窓から見える青空にぼーっとしながら、氷の入ったコップに注いだ炭酸水をそのシュワっとした感覚を楽しみをながらゆっくりと飲み干し、遅めの朝ごはんを口にする。
 食後に苦すぎて一瞬吐きかけるブラックコーヒーを一気飲みし、ソファに横になり、10分ほど自慰をし、陽が差し込んだ明るいリビングで、20分ほど昼寝をする。
散々寝ていたためすぐに目が覚め、長々と過ごしていたことによる逃げ場のない時間切れ感に焦りと後悔が一気に押し寄せた時、ようやく日曜の活動が始まる。

幸子と付き合っていた時はまだ規則正しい生活を送っていた。朝の散歩と夜の散歩は愛を確かめ合う時間で、何気ない会話で長々と歩き、時々思い出したかのようにキスをし、幸子が少し照れくさそうに微笑むのことが好きだった。

 だが今は堕落した生活を送っている。焦りに身を任せないと行動できない。毎日がぎりぎりの生活だ。貯金も毎月1万しかしないから高い買い物も出来ないし、旅行にも行けない。休みの多い中小の文具メーカーに勤めたのが関の山だったかもしれない。

留守番電話が一件あって確認すると、「もしもし、大和くん?荷物届いたよ。大和くんが暇なら会って話したいんだけど、どうかな?」
と幸子からメッセージがあった。幸子とは別れはしたものの、お互い話し合って、円満な別れだったため気まづくもなんともない。ただ、幸子に今から会いに行くと、それだけで休日が終わりそうな気がしたため、メールで今日は用事があると送り、外用の服装に着替え家を出た。今日はロールキャベツを食べよう。それだけ決めて最寄りの東戸塚駅のショッピングモールに向かう。道行く人の中で、もしかしたら幼なじみかもしれない女が、暑いからか痴女のように肩甲骨まで見える服装をしているのを見つけ軽く引きながらも、週末の昼の街並みを闊歩する。別れて一週間目の日曜日はなんとも平凡な1日だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

初体験の話

東雲
恋愛
筋金入りの年上好きな私の 誰にも言えない17歳の初体験の話。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

処理中です...