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第6話 鬼ヶ島
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翌日、桃太郎たちは海岸にたどり着いた。ここからは舟で移動しなければならない。
「わあ、海ってこんなに大きいんですね。終わりが見えませんよ!」
「波打ち際って面白いですね、何べん足跡つけてもすぐに消えちゃいますよ!」
「砂でお城をつくったらさぞ楽しいでしょうね。あ、この貝殻きれいです、おばあさんのお土産にしましょう」
桃太郎があまりはしゃぐので、見かねた仲間たちは砂の城を蹴飛ばしてやさしく諭した。
「すみません。つい……」
崩れた城を見て涙が出そうになるのをこらえ、気を取り直して辺りを見回す。
「あ、うまい具合に小舟が一艘あります。これ、使っても大丈夫ですかね?」
「誰もいないし、問題ないだろう」とサル。
「それじゃ窃盗じゃないか。よし、筏をつくろう」とイヌ。
「時間かかるじゃん。その間に村が襲われたら元も子もなくね?」とキジ。
結局、お代として黍団子を3つ葉っぱにくるんでおいておくことに落ち着いた。
「しかし、これだと持ち主じゃないやつが持っていってしまうかもしれないな」
イヌが不満そうに言う。
「細かいやつだな。そんなに心配ならオイラじゃなく団子を見張ってりゃいいだろ」
サルが言い返すと、イヌはしぶしぶ引き下がった。
「では、いざ鬼ヶ島へ!」
一行が舟に乗りこむと桃太郎は一声張り上げ、大海原へ漕ぎ出した。舟を漕ぐのは初めてだったが、すぐにこつをつかんだ。桃太郎の見事な櫂さばきにより、小舟はぐいぐい進んだ。今度はサル、イヌ、キジが大はしゃぎだった。
「すっげー! マジすっげー! 桃さんサイコー!!」
「本当だな、これなら鬼ヶ島までひとっ飛びだ。ん? 犬っころ、元気ないな」
「そんなことはない。最高のクルージングだ」
イヌは船酔いしていたが、けっして弱音と胃の中身を吐かなかった。
しばらくすると、だんだん海が時化てきた。桃太郎は波に櫂が取られないように、いっそう力強く漕いだ。
「おっ、見えた! 鬼ヶ島のご登場だ!」
キジがいち早く島を見つけた。
「みなさん、お知らせがあります」
桃太郎は息を切らせながら呼びかけた。
「どうした、今さら怖気づいたってのはなしだぜ」とサル。
「いえ、そうではなく……」
桃太郎の顔は海のように青くなっていた。
「この舟、勢いがつきすぎたのか止まらないんです。身の安全は各自守ってください」
「冗談だろ? この速度で突っ込んだら木っ端微塵に……」
舟が大きく揺れ、サルは舌を噛んだ。
数秒後、舟は岩礁にぶつかって無残に砕け、乗組員は大きな放物線を描いて投げ出された。
「僕が相撲で投げ飛ばした子たちは、いつもこんな気分だったのかな」
宙を舞うあいだ、そんなことが頭をよぎったが、そこはさすがの桃太郎、うまく受身をとって陸に転がりこんだ。目線の先には、たいそう立派な門構えの御殿と、筋骨隆々の大鬼が立っていた。桃太郎は息をのみ、ひざをはらって立ち上がった。
「こ、こんにちは」
「………」
「僕は、桃太郎といいます」
「………」
「突然来て、怒ってます?」
「………」
大鬼は何も答えない。
「気をつけろ桃太郎。この鬼、見たところ相当の手練れだ」
茂みから出てきたイヌが、勇敢にも桃太郎の前に立った。が、残念ながら船酔いのせいで足元はふらふらだった。
「おほん、実はですね、隣村であなたがたが金品を奪ったり人をさらったりしたというので、僕が代表して話をつけに来たんです。どうか、人だけでも返していただけないでしょうか?」
「………」
「こいつ、口が利けないんじゃねえの?」
木に引っかかっていたサルがぴょんと飛び出してきて言った。
「やいお前、図体ばっかりでかくても怖かねーぞ!」
「こら、おやめなさいったら」
すると、大鬼が金棒を振り上げた。
「やばいな、怒らせちまったか!?」
「この阿呆ザル! お前のせいで全員巻き添えじゃないか」
イヌが低く唸って身構える。
しかし、大鬼は振り上げた金棒を肩にかつぐと、そのまま重い門扉を開けのっしのっしと中に入っていった。そしてちらりと振り返る。
「ついてこいということでしょうか?」
「大丈夫か? のこのこついていって集団で襲われたらたまったもんじゃないぞ。あんたはともかく、オイラたちは1秒と持たないね」
「でも、彼に敵意があるようには見えませんでしたし。心配なら君たちはここで待っていてください。僕ひとりでも行ってきます」
桃太郎は迷わず大鬼のあとについて歩き出した。
「やれやれ。怖いもの知らずだな」
イヌは尻尾をピンと立て桃太郎のあとに続く。
「ちくしょう、ご馳走までの道は険しいな」
サルは両手で顔をパチンとやると、意を決して歩き出した。
「おいチキン、そのまま隠れてるとあとで言いふらすぞ」
サルが言うと、岩陰からキジがびくりと出てきた。
「ビビッてないビビッてない。やだな、ちょっと気を失ってただけっすよ」
キジもひとりで待つのは心細いと思い至り、サルを追った。
「そうだ、いざとなったらオレ飛べるし。海だって頑張れば渡れるし」
そう言って桃太郎のすぐ後ろに滑り込んだ。
「わあ、海ってこんなに大きいんですね。終わりが見えませんよ!」
「波打ち際って面白いですね、何べん足跡つけてもすぐに消えちゃいますよ!」
「砂でお城をつくったらさぞ楽しいでしょうね。あ、この貝殻きれいです、おばあさんのお土産にしましょう」
桃太郎があまりはしゃぐので、見かねた仲間たちは砂の城を蹴飛ばしてやさしく諭した。
「すみません。つい……」
崩れた城を見て涙が出そうになるのをこらえ、気を取り直して辺りを見回す。
「あ、うまい具合に小舟が一艘あります。これ、使っても大丈夫ですかね?」
「誰もいないし、問題ないだろう」とサル。
「それじゃ窃盗じゃないか。よし、筏をつくろう」とイヌ。
「時間かかるじゃん。その間に村が襲われたら元も子もなくね?」とキジ。
結局、お代として黍団子を3つ葉っぱにくるんでおいておくことに落ち着いた。
「しかし、これだと持ち主じゃないやつが持っていってしまうかもしれないな」
イヌが不満そうに言う。
「細かいやつだな。そんなに心配ならオイラじゃなく団子を見張ってりゃいいだろ」
サルが言い返すと、イヌはしぶしぶ引き下がった。
「では、いざ鬼ヶ島へ!」
一行が舟に乗りこむと桃太郎は一声張り上げ、大海原へ漕ぎ出した。舟を漕ぐのは初めてだったが、すぐにこつをつかんだ。桃太郎の見事な櫂さばきにより、小舟はぐいぐい進んだ。今度はサル、イヌ、キジが大はしゃぎだった。
「すっげー! マジすっげー! 桃さんサイコー!!」
「本当だな、これなら鬼ヶ島までひとっ飛びだ。ん? 犬っころ、元気ないな」
「そんなことはない。最高のクルージングだ」
イヌは船酔いしていたが、けっして弱音と胃の中身を吐かなかった。
しばらくすると、だんだん海が時化てきた。桃太郎は波に櫂が取られないように、いっそう力強く漕いだ。
「おっ、見えた! 鬼ヶ島のご登場だ!」
キジがいち早く島を見つけた。
「みなさん、お知らせがあります」
桃太郎は息を切らせながら呼びかけた。
「どうした、今さら怖気づいたってのはなしだぜ」とサル。
「いえ、そうではなく……」
桃太郎の顔は海のように青くなっていた。
「この舟、勢いがつきすぎたのか止まらないんです。身の安全は各自守ってください」
「冗談だろ? この速度で突っ込んだら木っ端微塵に……」
舟が大きく揺れ、サルは舌を噛んだ。
数秒後、舟は岩礁にぶつかって無残に砕け、乗組員は大きな放物線を描いて投げ出された。
「僕が相撲で投げ飛ばした子たちは、いつもこんな気分だったのかな」
宙を舞うあいだ、そんなことが頭をよぎったが、そこはさすがの桃太郎、うまく受身をとって陸に転がりこんだ。目線の先には、たいそう立派な門構えの御殿と、筋骨隆々の大鬼が立っていた。桃太郎は息をのみ、ひざをはらって立ち上がった。
「こ、こんにちは」
「………」
「僕は、桃太郎といいます」
「………」
「突然来て、怒ってます?」
「………」
大鬼は何も答えない。
「気をつけろ桃太郎。この鬼、見たところ相当の手練れだ」
茂みから出てきたイヌが、勇敢にも桃太郎の前に立った。が、残念ながら船酔いのせいで足元はふらふらだった。
「おほん、実はですね、隣村であなたがたが金品を奪ったり人をさらったりしたというので、僕が代表して話をつけに来たんです。どうか、人だけでも返していただけないでしょうか?」
「………」
「こいつ、口が利けないんじゃねえの?」
木に引っかかっていたサルがぴょんと飛び出してきて言った。
「やいお前、図体ばっかりでかくても怖かねーぞ!」
「こら、おやめなさいったら」
すると、大鬼が金棒を振り上げた。
「やばいな、怒らせちまったか!?」
「この阿呆ザル! お前のせいで全員巻き添えじゃないか」
イヌが低く唸って身構える。
しかし、大鬼は振り上げた金棒を肩にかつぐと、そのまま重い門扉を開けのっしのっしと中に入っていった。そしてちらりと振り返る。
「ついてこいということでしょうか?」
「大丈夫か? のこのこついていって集団で襲われたらたまったもんじゃないぞ。あんたはともかく、オイラたちは1秒と持たないね」
「でも、彼に敵意があるようには見えませんでしたし。心配なら君たちはここで待っていてください。僕ひとりでも行ってきます」
桃太郎は迷わず大鬼のあとについて歩き出した。
「やれやれ。怖いもの知らずだな」
イヌは尻尾をピンと立て桃太郎のあとに続く。
「ちくしょう、ご馳走までの道は険しいな」
サルは両手で顔をパチンとやると、意を決して歩き出した。
「おいチキン、そのまま隠れてるとあとで言いふらすぞ」
サルが言うと、岩陰からキジがびくりと出てきた。
「ビビッてないビビッてない。やだな、ちょっと気を失ってただけっすよ」
キジもひとりで待つのは心細いと思い至り、サルを追った。
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そう言って桃太郎のすぐ後ろに滑り込んだ。
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