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第三章
アザミは嘲った 4
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五軒目のマンションでようやく青木に道が開けた。そこは、随分と都心から離れた場所に建っていて、これまでのマンションと比べると若干見劣りする場所だった。
「河西様の同僚の方ですね。御神先生は最近お部屋にこもりっぱなしでしたから、やはり締め切り間際だったようですね。河西様からも先ほど、青木様が原稿の取り立てへ向かうから通して欲しいと、言づけを預かっております。御神先生に逃げられてしまっては困るでしょうから、今回もこっそりお通しいたしますね。」
コンシェルジュの女性はにこりと微笑み、まるで当たり前かのように告げてきたが、正直これは異例だ。一体、河西がどのように取り入ったかはあまり考えたくないが、今回ばかりは幸いだ。
「ありがとうございます。御神先生には逃げられてばかりですから大変助かります。」
半分本当のことだが、予備のキーを渡してくれた女性にお礼を告げて、青木は御神のいる部屋へと足早に向かった。
◇◇◇
最悪の事態も想定していたが、荒い息遣いでこちらに背を向ける大柄な裸体の男の間から、割開かれた細く白い脚が力なく揺れている光景を実際に目の当たりにした途端、青木の中で何かがプツリと切れる音がした。
御神は青木に気づくことなく、嘉月を貪っていた。青木は、更に抽挿を激しくしようとする御神の両腕を後ろ手に捻り上げた。
「その人から、離れろ。」
自分でも驚くほど冷淡な声が吐き出された。
「き、貴様っ!!!」
御神は痛みに呻き、ずるりと醜悪な性器を嘉月の中から引き抜いた。その衝撃に、嘉月は小さな悲鳴をあげた。
「またお前か!しつこい奴だな、これは私の番だ!部外者のベータごときにどうこう言われる筋合いはない!出て行けっ!!!立派な不法侵入だぞ!」
「患者を勝手に病室から連れ出した、あんたに言われたくないな。」
青木は御神を床へと突き落として、ベッドの上でぐったりと横たわる嘉月を抱きかかえた。内股には鮮血が伝っており、右手首には拘束された後がくっきりと残り、そこは皮が剥けて痛々しかった。鼻と口を覆っている布をそっと取り外すと、嘉月は、ぷはっと小さな息を吐いた。そして、無意識に青木へと身体を摺り寄せ顔を僅かに上げたが、その焦点が段々と合ってくると、今度はつん裂くような悲鳴をあげた。
「いやぁアアアァァッ!!!みないで、お、おねがいっ!みないでぇ!!!」
青木は腕の中で暴れる身体を力づくで押さえて、強く抱きしめた。
「いやだぁ・・・・イヤっ!!!き、きたない、からぁ!!!」
「嘉月先生、嘉月先生。大丈夫です。汚くありません。貴方はとても綺麗です。」
何度も何度も「汚くありません。綺麗です。」と語りかけ、ゆっくりと背中を撫でていると、大きく震えていた身体も次第に落ち着いてきたようだった。そのうち嘉月は、スンスンと匂いを嗅ぎ取るように青木の首筋へと顔を埋め始めた。
「嘉月先生・・・・?」
「匂い、イヤなの・・・・ユリのはなの匂い、きらい。でも、あおきさんの、匂いは、おちつく・・・・」
青木には嘉月の言う百合の花の香りは分からなかったが、そうして、ぎゅっと自身に抱きつく存在が、たまらなく愛おしく感じられた。
◇◇◇
「クソッ!ふざけるなよ!京、お前は私よりその男を選ぶというのか?!」
激昂した御神の威圧を受けた嘉月はびくりと震えたが、御神に背を向けて青木にしがみついたままであった。小さく震え続ける華奢な身体を可哀想に思い、青木もまた強く嘉月を抱き締めた。
その姿こそ嘉月の出した答えだと悟った御神は、「クックックッ・・・・」と小さく笑い始めた。しかし、その眼光が一瞬ギラリと光ったかと思えば、サイドチェストの引き出しから小さなナイフを取り出して、振りかざしたのだった。
「チッ」
青木は嘉月を背後へ庇うと、出鱈目にナイフを振り回す御神の鳩尾へと拳を落とし、左手でナイフを持つ御神の右手を弾いた。小振りのナイフは軽い音を立てて青木の足元へ転がった。
「死ね!死ね!死ね!」
大声で喚き散らす御神に馬乗りになると、青木は拾い上げたナイフの刃先を御神の首に押し当てた。
「死ぬのは、お前だ。」
怒りに任せて、ナイフを持つ手に力を込めようとした時だった。
「だ、め・・・・だめだよ、こ、ろしちゃ、だめ・・・・せ、かい、せかい・・・・」
愛おしい人の声が、聴こえた。
「河西様の同僚の方ですね。御神先生は最近お部屋にこもりっぱなしでしたから、やはり締め切り間際だったようですね。河西様からも先ほど、青木様が原稿の取り立てへ向かうから通して欲しいと、言づけを預かっております。御神先生に逃げられてしまっては困るでしょうから、今回もこっそりお通しいたしますね。」
コンシェルジュの女性はにこりと微笑み、まるで当たり前かのように告げてきたが、正直これは異例だ。一体、河西がどのように取り入ったかはあまり考えたくないが、今回ばかりは幸いだ。
「ありがとうございます。御神先生には逃げられてばかりですから大変助かります。」
半分本当のことだが、予備のキーを渡してくれた女性にお礼を告げて、青木は御神のいる部屋へと足早に向かった。
◇◇◇
最悪の事態も想定していたが、荒い息遣いでこちらに背を向ける大柄な裸体の男の間から、割開かれた細く白い脚が力なく揺れている光景を実際に目の当たりにした途端、青木の中で何かがプツリと切れる音がした。
御神は青木に気づくことなく、嘉月を貪っていた。青木は、更に抽挿を激しくしようとする御神の両腕を後ろ手に捻り上げた。
「その人から、離れろ。」
自分でも驚くほど冷淡な声が吐き出された。
「き、貴様っ!!!」
御神は痛みに呻き、ずるりと醜悪な性器を嘉月の中から引き抜いた。その衝撃に、嘉月は小さな悲鳴をあげた。
「またお前か!しつこい奴だな、これは私の番だ!部外者のベータごときにどうこう言われる筋合いはない!出て行けっ!!!立派な不法侵入だぞ!」
「患者を勝手に病室から連れ出した、あんたに言われたくないな。」
青木は御神を床へと突き落として、ベッドの上でぐったりと横たわる嘉月を抱きかかえた。内股には鮮血が伝っており、右手首には拘束された後がくっきりと残り、そこは皮が剥けて痛々しかった。鼻と口を覆っている布をそっと取り外すと、嘉月は、ぷはっと小さな息を吐いた。そして、無意識に青木へと身体を摺り寄せ顔を僅かに上げたが、その焦点が段々と合ってくると、今度はつん裂くような悲鳴をあげた。
「いやぁアアアァァッ!!!みないで、お、おねがいっ!みないでぇ!!!」
青木は腕の中で暴れる身体を力づくで押さえて、強く抱きしめた。
「いやだぁ・・・・イヤっ!!!き、きたない、からぁ!!!」
「嘉月先生、嘉月先生。大丈夫です。汚くありません。貴方はとても綺麗です。」
何度も何度も「汚くありません。綺麗です。」と語りかけ、ゆっくりと背中を撫でていると、大きく震えていた身体も次第に落ち着いてきたようだった。そのうち嘉月は、スンスンと匂いを嗅ぎ取るように青木の首筋へと顔を埋め始めた。
「嘉月先生・・・・?」
「匂い、イヤなの・・・・ユリのはなの匂い、きらい。でも、あおきさんの、匂いは、おちつく・・・・」
青木には嘉月の言う百合の花の香りは分からなかったが、そうして、ぎゅっと自身に抱きつく存在が、たまらなく愛おしく感じられた。
◇◇◇
「クソッ!ふざけるなよ!京、お前は私よりその男を選ぶというのか?!」
激昂した御神の威圧を受けた嘉月はびくりと震えたが、御神に背を向けて青木にしがみついたままであった。小さく震え続ける華奢な身体を可哀想に思い、青木もまた強く嘉月を抱き締めた。
その姿こそ嘉月の出した答えだと悟った御神は、「クックックッ・・・・」と小さく笑い始めた。しかし、その眼光が一瞬ギラリと光ったかと思えば、サイドチェストの引き出しから小さなナイフを取り出して、振りかざしたのだった。
「チッ」
青木は嘉月を背後へ庇うと、出鱈目にナイフを振り回す御神の鳩尾へと拳を落とし、左手でナイフを持つ御神の右手を弾いた。小振りのナイフは軽い音を立てて青木の足元へ転がった。
「死ね!死ね!死ね!」
大声で喚き散らす御神に馬乗りになると、青木は拾い上げたナイフの刃先を御神の首に押し当てた。
「死ぬのは、お前だ。」
怒りに任せて、ナイフを持つ手に力を込めようとした時だった。
「だ、め・・・・だめだよ、こ、ろしちゃ、だめ・・・・せ、かい、せかい・・・・」
愛おしい人の声が、聴こえた。
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