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第二章
喪失の檻 2
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「透、こんな母親でごめん。父さんも死なせてしまった。俺には、母さんには、透しかいないんだ。」
見慣れた部屋で涙を流して自分に謝り続ける母。その手を握って「大丈夫だよ」と言ってあげたいのに、何故だか脚が動かなくて、母の所へは行けなかった。底無しの沼に嵌ってしまったかのようにそこから動けない。声も喉の奥に張り付いてしまって魚みたいにパクパクと口を開閉させるだけだった。
お母さん!お母さん!
透は、はっと覚醒した。既に見慣れた病院の個室。ベッド脇のチェストの上に置かれた時計を見遣ると午前二時。薄らと開けたカーテンの隙間から眩しいくらいの月明かりが差し込んでいた。部屋は暗く、静けさに包まれている。けれども、心臓はバクバクと嫌な音を立てていた。
「・・・・行かないと」
点滴は数日前に外されていたから今なら行ける、と透は思った。思ってしまったのだ。
透はそっとベッドから降りて、大きな病院から抜け出した。
◇◇◇
何となく見覚えのある風景を滅茶苦茶に辿って、どうにか家まで辿り着いた。木造の古ぼけた二階建てアパート。良い思い出なんて殆ど無いのに、何故だか安心してしまう自分がいた。嫌な音を立てる階段をのぼり、角部屋へと向かっていると、随分と大きな声が響いてきた。父と母と自分の三人でひっそり住んでいた部屋から、くぐもった男の笑い声がいくつか聞こえる。慌てて扉の前に向かうと、その笑い声は確かにうちから聞こえるものだった。どういう状況なのか全く分からず、腹の傷がしくりと痛んだ。
お母さんに何かあったらどうしよう
透は、一色が荷物と共に返してくれた家の鍵をポケットから取り出してドアを開ける。
どうにか開けて入った六畳一間、そこは地獄の入り口だった。
見知らぬ男三人に身体を拓く母の姿。四つん這いになって前から男のものを咥え、後ろには二人分の性器を受け入れていた。
「男でもオメガの身体だったら全然抱けるな!」
そう言った男はガツガツと激しい抽送を繰り返し、母の奥の奥まで入り込もうとしているように見えた。
「んんっ!!、ぐっ、んん、ゔぅっ・・・・」
母は身を捩って逃げようとしたが、前から犯している男に頭を押さえつけられてしまい、されるがままに揺すられていた。
透は我を忘れて母のところに駆け寄って、男たちに身体ごとぶつかって突き飛ばした。
「っいってぇな!!!てめぇ、何しやがるんだ!!!」
母に口淫をさせていた男が透の胸ぐらを掴み怒鳴る。透も負けじとその男を睨みあげた。
「母さんに乱暴するな!!!!!」
身体は小刻みに震えてしまうけれども、必死に言い返した。しんと部屋中が静まり返る。しかしそれも一瞬で、その静寂をぶち壊すかのような笑い声が響く。
それは、今まさに男たちに犯されていた母のものだった。
母の笑い声に続いて、男たちも「くっくっ」と嫌な笑い方をした。
「おまえ、こいつの息子なわけ?」
母を後ろから犯していた一人が、吐き捨てるように言った。透が僅かに頷くと手と叩いて笑い始めた。
「なんか勘違いしてんのかもしんねえけど、俺たち、このオメガに呼ばれてここに来ただけだから。」
「え?」
そんな、なんで母さんが?
母を見つめると口端に薄く笑みを作って自分を見ていた。これは、怖い時の母だ。
「あーあ、いってえな。どう落とし前つけてくれんのかなぁ?」
ニタニタ笑いながら男が恐ろしい言葉を吐くものだから、助けて!と咄嗟に母へ視線を送る。しかし、今度は目を逸らされて無視された。胸がきゅっと痛くなった。
そして、透をどん底に突き落とす返事が、母の口から飛び出したのだった。
「いいよ、好きにして。こいつ、俺のこと置いて逃げた親不孝ものだから。それにさ、ほんとに俺の子かも分からないんだよね。産んだの俺じゃなくて、三年前に俺を置いて死にやがったあいつだから。」
「・・・・え?どういう、こと?」
頭が真っ白になって、気づけば目からぼろぼろ涙が零れ落ちていた。
「どこの誰かも分かんないアルファの子ども孕んで、挙句番も解消されて、ほんと馬鹿。まあ、俺も番に関してはどうこう言える立場じゃないか。でも、俺を残して死にやがって!おまえもあいつも大嫌いだ!何が息子だ!おまえのことなんて一度だって愛したことなんかねえよ!!!」
母はそう叫ぶと、家から飛び出してしまった。
「ま、待って!・・・・かあさん!かあさん!ぼ、僕、母さんを置いて行ったりなんて、そんなこと、考えてない!!!・・・・あああああっ」
母を追いかけたかったのに、透の身体は軽々と三人の男達に羽交い締めにされ、冷たい畳に押し付けられてしまった。
「あーあ、可哀想になぁ。おまえもオメガなんだろう?俺たちがたっぷり可愛がってやるよ。」
「正直、呼び出された対価はまだもらってねえしな。」
「ははっ!さっきの落とし前がエッチなことでチャラになるなんてついてるね。オメガなんだからエロいこと得意だろう?」
下卑た笑い声が頭上から降り注ぐ。
「せんせい」
透はお守りの言葉をこっそりと呟いた。
見慣れた部屋で涙を流して自分に謝り続ける母。その手を握って「大丈夫だよ」と言ってあげたいのに、何故だか脚が動かなくて、母の所へは行けなかった。底無しの沼に嵌ってしまったかのようにそこから動けない。声も喉の奥に張り付いてしまって魚みたいにパクパクと口を開閉させるだけだった。
お母さん!お母さん!
透は、はっと覚醒した。既に見慣れた病院の個室。ベッド脇のチェストの上に置かれた時計を見遣ると午前二時。薄らと開けたカーテンの隙間から眩しいくらいの月明かりが差し込んでいた。部屋は暗く、静けさに包まれている。けれども、心臓はバクバクと嫌な音を立てていた。
「・・・・行かないと」
点滴は数日前に外されていたから今なら行ける、と透は思った。思ってしまったのだ。
透はそっとベッドから降りて、大きな病院から抜け出した。
◇◇◇
何となく見覚えのある風景を滅茶苦茶に辿って、どうにか家まで辿り着いた。木造の古ぼけた二階建てアパート。良い思い出なんて殆ど無いのに、何故だか安心してしまう自分がいた。嫌な音を立てる階段をのぼり、角部屋へと向かっていると、随分と大きな声が響いてきた。父と母と自分の三人でひっそり住んでいた部屋から、くぐもった男の笑い声がいくつか聞こえる。慌てて扉の前に向かうと、その笑い声は確かにうちから聞こえるものだった。どういう状況なのか全く分からず、腹の傷がしくりと痛んだ。
お母さんに何かあったらどうしよう
透は、一色が荷物と共に返してくれた家の鍵をポケットから取り出してドアを開ける。
どうにか開けて入った六畳一間、そこは地獄の入り口だった。
見知らぬ男三人に身体を拓く母の姿。四つん這いになって前から男のものを咥え、後ろには二人分の性器を受け入れていた。
「男でもオメガの身体だったら全然抱けるな!」
そう言った男はガツガツと激しい抽送を繰り返し、母の奥の奥まで入り込もうとしているように見えた。
「んんっ!!、ぐっ、んん、ゔぅっ・・・・」
母は身を捩って逃げようとしたが、前から犯している男に頭を押さえつけられてしまい、されるがままに揺すられていた。
透は我を忘れて母のところに駆け寄って、男たちに身体ごとぶつかって突き飛ばした。
「っいってぇな!!!てめぇ、何しやがるんだ!!!」
母に口淫をさせていた男が透の胸ぐらを掴み怒鳴る。透も負けじとその男を睨みあげた。
「母さんに乱暴するな!!!!!」
身体は小刻みに震えてしまうけれども、必死に言い返した。しんと部屋中が静まり返る。しかしそれも一瞬で、その静寂をぶち壊すかのような笑い声が響く。
それは、今まさに男たちに犯されていた母のものだった。
母の笑い声に続いて、男たちも「くっくっ」と嫌な笑い方をした。
「おまえ、こいつの息子なわけ?」
母を後ろから犯していた一人が、吐き捨てるように言った。透が僅かに頷くと手と叩いて笑い始めた。
「なんか勘違いしてんのかもしんねえけど、俺たち、このオメガに呼ばれてここに来ただけだから。」
「え?」
そんな、なんで母さんが?
母を見つめると口端に薄く笑みを作って自分を見ていた。これは、怖い時の母だ。
「あーあ、いってえな。どう落とし前つけてくれんのかなぁ?」
ニタニタ笑いながら男が恐ろしい言葉を吐くものだから、助けて!と咄嗟に母へ視線を送る。しかし、今度は目を逸らされて無視された。胸がきゅっと痛くなった。
そして、透をどん底に突き落とす返事が、母の口から飛び出したのだった。
「いいよ、好きにして。こいつ、俺のこと置いて逃げた親不孝ものだから。それにさ、ほんとに俺の子かも分からないんだよね。産んだの俺じゃなくて、三年前に俺を置いて死にやがったあいつだから。」
「・・・・え?どういう、こと?」
頭が真っ白になって、気づけば目からぼろぼろ涙が零れ落ちていた。
「どこの誰かも分かんないアルファの子ども孕んで、挙句番も解消されて、ほんと馬鹿。まあ、俺も番に関してはどうこう言える立場じゃないか。でも、俺を残して死にやがって!おまえもあいつも大嫌いだ!何が息子だ!おまえのことなんて一度だって愛したことなんかねえよ!!!」
母はそう叫ぶと、家から飛び出してしまった。
「ま、待って!・・・・かあさん!かあさん!ぼ、僕、母さんを置いて行ったりなんて、そんなこと、考えてない!!!・・・・あああああっ」
母を追いかけたかったのに、透の身体は軽々と三人の男達に羽交い締めにされ、冷たい畳に押し付けられてしまった。
「あーあ、可哀想になぁ。おまえもオメガなんだろう?俺たちがたっぷり可愛がってやるよ。」
「正直、呼び出された対価はまだもらってねえしな。」
「ははっ!さっきの落とし前がエッチなことでチャラになるなんてついてるね。オメガなんだからエロいこと得意だろう?」
下卑た笑い声が頭上から降り注ぐ。
「せんせい」
透はお守りの言葉をこっそりと呟いた。
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