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第三章 最強のお兄ちゃんは隣国へ行く
ハウラさん、ご乱心!
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西方と陸続きと言えど、僕の目の前に広がるのは異世界だった。
石畳みの道は、帝国でよく見かけた泥や粘土を焼いた長方体のものではなく、様々な形や大きさの天然石が敷かれていた。建物も朱色に染められた木製のもので統一されている。よく見ると、屋根の間にたくさんの動物が彫り込まれていて少し可愛かった。そんな屋根は、恐らく青銅でできている。何もかもが帝国で見たものとは違っていた。
「すごい・・・・」
ぽかんと口を開けて見上げていたら、案内役の近衛として検問所へとやって来た「穏やかそうだった人」が、今ではとんでもなく胡散臭く見える笑みを浮かべた。
「モルダバイト帝国の城下街に比べたら、些か乱雑でしょう。」
帝都の城下街は、モリオンの盤のように通りが整っているけれど、バナジナイト王国は眩しいほどの建造物が、自由気ままに建てられていた。けれども僕には、それが乱雑だとは思えなかった。
「趣向が異なっているだけであり、優劣をつけるものではないのでは?」
「おや?あなたは変わられたようだ。」
やっぱり僕を覚えていたようだ。
それにしてもバナジナイト王国の服装は、ハウラさんに向いているかもしれない。彼らは裾の長い服を一枚で着ていた。それぞれの体型に合わせて、身体の横部分に取り付けられた釦で、着丈を調整している。そのため、腰紐も必要ない。袖口も広く窮屈感がなかった。
「あなたは変わっていませんね。穏やかそうだった人?」
五年前、気弱そうに見せかけて奇襲をかけてきた穏やかそうだった人は、やはり自国では本性をあらわにした話し方をした。
「コハクくん。知り合いなの?」
そんな僕たちの、少し黒い会話にハウラさんが入ってきた。
「ええ。五年前に少しだけ。」
僕はコホンと小さく咳払いをすると、ハウラさんへ言った。
「少しどころか、思いっきり横っ面を殴られました。」
なっ!まーったく反省していないな!
「カルサさんの言うことを聞かなかったのが悪いんじゃん!」
あ!あっという間にいつもの口調に・・・・!
僕としたことが・・・・!!!
「ふむ。やはり変わっていないようですね。」
もう、もーう!やっぱり腹立つな、この人!
穏やかそうだった人が、僕を嘲笑した。
「え、コハクくん。もしかして、意識して丁寧な言葉を使ってたの?いいよ、そんなことしなくて!いつも通りで!」
ハウラさんが、仕返しとばかりに穏やかそうだった人を煽り始めた。
「お前はカルサに似てるが中身は全く違うな!」
「きみも外見に関わらず粗野じゃないか。」
ハウラさんが、穏やかそうだった人を鼻で笑った。
ああ。ハウラさんの真骨頂が発揮されつつある。
「ジャスパーの前ではわきまえて欲しいものですね。」
ジャスパー呼びなのは、相変わらず仲が良いみたいだね。
「そちらの王子がそもそもの事の発端だと思うのだが?」
「それはあなたたちの言いがかりです。」
「それはどうかな。」
ハウラさんと穏やかそうだった人の間で火花が散っている。この二人、もしかして似たもの同士なのかもしれない。
「穏やかそうだった人って、名前なんて言うの?」
「ああ。そう言えばまだ聞いてなかったね。」
ハウラさんと僕は、検問所で身分と名前(仮)を明かしているけれど、穏やかそうだった人は名乗りもせずに、「それでは、王国へと案内します。」の一言だけで、僕たちをバナジナイト王国へと入国させてくれた。
「ケセラスだ!」
穏やかそうだった人は、若干の苛立ちを放ちながら教えてくれた。
「ケセラスさんね!よろしく!」
僕が元気良く手を差し出すと、その手は振り払われた。酷い・・・・。
「まさか、こんな者たちがカルサの一族にいるとは・・・・」
「まさか、ジャスパー様の取り巻きがこんなに短気だったとは・・・・」
手を振り払われた当て付けに、ぼそっとハウラさんに耳打ちした。
「コハクくん、コハクくん。そこまでにしておきなさい。外交問題に関わってきたら面倒だからね。特に相手は短気なケセラスだ。」
ハウラさんの方が、何故だか容赦がなかった。
「・・・・本当に外交問題にしてやりましょうか?」
「その時は、そちらが遂に消滅する頃でしょうね。」
それからハウラさんは、絶対零度の言葉を放ち、ケセラスさんを撃沈させていた。これまで、たくさんのハウラさんの一面を見てきたけれど、ここまで容赦のない姿を見るのは初めてかもしれない。
◇◇◇
僕たちが連れて来られたのは、王城ではなかった。流石に初っ端から城には招かれないか。
通されたのは、バナジナイト王国の花街の一画にある娼館だった。
ど、どう言うことでしょうか?!
花街の中でも、一際大きな娼館の一際大きな個室へと案内される。中からは、美しい女性の話し声が漏れ聞こえている。
ヒスイ!お兄ちゃん、絶対不埒なことはしません!これは、多分必要なことで、必要な話しをしたら真っ直ぐ帰るからね!安心してね!
「ジャスパー!無礼者たちを連れて来たよ!」
ケセラスさんが、扉の前で大きな声を出した。
「客人に対して無礼者とは・・・・」
「隠れる気もない偵察兵だろうが!」
ハウラさんのケチに、ケセラスさんはいちいち反応を示した。
「うるさいぞ。ケセラス。・・・・お!お前はあの時の狂犬じゃないか!」
ケセラスさんと同じような衣服を身に纏ったジャスパー様が、部屋から出てきた。それでも、ケセラスさんとは違い、銀製の細やかな装飾品をシャラシャラと付けていた。
「狂犬じゃないもん!コハクだもん!」
あれ?何だかこの台詞、五年前にも言ったような・・・・?
「そうだったな。五年経ってもキャンキャンしていて可愛いままだな。どうだ、俺の側女にならないか?」
ジャスパー様は僕へと顔を近づけて「相変わらず溢れそうな琥珀色の瞳だ。」と言った。
「ソバメ・・・・」
ソバメ・・・・ソバメ・・・・ツバメ・・・・?
ああ!燕か!でも何で燕?鳥だよね?
「斬る」
現実逃避に走っていた僕の思考を遮るように、ハウラさんの冷たい言葉が響き渡った。おまけに、鞘から少しだけ剣身を見せている。
「え?!ちょっとハウラさん?!何やってるの?!」
僕は慌ててハウラさんの謎の暴挙を止めに入った。
「ハウラ?カルサじゃないのか?」
対照的に、ジャスパー様は特に気にした様子もなく、あっけらかんとしていた。
「カルサは私であって私でないようなもの。そして半分、私のようなものだ。」
「意味は分からないが、確かに五年前に会ったやつとは雰囲気が違うな。」
ジャスパー様はにやりと笑ったが、ハウラさんの表情筋は死んでいた。本当にどうしちゃったの、ハウラさん?!
「剣を収めなければ、こちらも応戦するまでだ。」
僕があわあわしていると、またもや聞き覚えのある声がした。
「あ!頭ぐるぐる巻きの人だ!」
彼は変わらず短剣を構えていた。
「・・・・クロムだ。」
クロムさんは、眉間に皺を寄せて渋々と名乗ってくれた。
「クロムさんね!よろしく!」
僕は、ケセラスさんの時と同じように手を差し出したけれど、悲しいほどに無視された。ジャスパー様の取り巻きは、挨拶の基本がなっていない。じぃじが見たら、きっと喝を入れられるだろう。
「戦意が削がれるな。なんだこいつ。・・・・ジャスパー、こんな奴を側に置くのはやめた方がいい。悪趣味だと思われるぞ。」
他人のことを言えた義理はないかもしれないけれど、ジャスパー様の取り巻きは、ちくちく言葉常習犯だ。僕が、僕の周りを脅かす人に少しばかり意地悪になってしまうからかもしれないけれど・・・・。
結構、酷いことを言われた自覚はあるよ。
「口を慎め」
少しだけうなだれていると、再びハウラさんの硬い言葉とともに、ハウラさんの周囲が凍りつくんじゃないかと心配になるくらい、一気に空気が冷たくなっていった。
「ハウラさん、ハウラさん!口車に乗っかってどうするの?!」
僕は、今にも収めた剣を抜こうとしているハウラさんに飛びかかった。一体どうしちゃったの、ハウラさん?!
石畳みの道は、帝国でよく見かけた泥や粘土を焼いた長方体のものではなく、様々な形や大きさの天然石が敷かれていた。建物も朱色に染められた木製のもので統一されている。よく見ると、屋根の間にたくさんの動物が彫り込まれていて少し可愛かった。そんな屋根は、恐らく青銅でできている。何もかもが帝国で見たものとは違っていた。
「すごい・・・・」
ぽかんと口を開けて見上げていたら、案内役の近衛として検問所へとやって来た「穏やかそうだった人」が、今ではとんでもなく胡散臭く見える笑みを浮かべた。
「モルダバイト帝国の城下街に比べたら、些か乱雑でしょう。」
帝都の城下街は、モリオンの盤のように通りが整っているけれど、バナジナイト王国は眩しいほどの建造物が、自由気ままに建てられていた。けれども僕には、それが乱雑だとは思えなかった。
「趣向が異なっているだけであり、優劣をつけるものではないのでは?」
「おや?あなたは変わられたようだ。」
やっぱり僕を覚えていたようだ。
それにしてもバナジナイト王国の服装は、ハウラさんに向いているかもしれない。彼らは裾の長い服を一枚で着ていた。それぞれの体型に合わせて、身体の横部分に取り付けられた釦で、着丈を調整している。そのため、腰紐も必要ない。袖口も広く窮屈感がなかった。
「あなたは変わっていませんね。穏やかそうだった人?」
五年前、気弱そうに見せかけて奇襲をかけてきた穏やかそうだった人は、やはり自国では本性をあらわにした話し方をした。
「コハクくん。知り合いなの?」
そんな僕たちの、少し黒い会話にハウラさんが入ってきた。
「ええ。五年前に少しだけ。」
僕はコホンと小さく咳払いをすると、ハウラさんへ言った。
「少しどころか、思いっきり横っ面を殴られました。」
なっ!まーったく反省していないな!
「カルサさんの言うことを聞かなかったのが悪いんじゃん!」
あ!あっという間にいつもの口調に・・・・!
僕としたことが・・・・!!!
「ふむ。やはり変わっていないようですね。」
もう、もーう!やっぱり腹立つな、この人!
穏やかそうだった人が、僕を嘲笑した。
「え、コハクくん。もしかして、意識して丁寧な言葉を使ってたの?いいよ、そんなことしなくて!いつも通りで!」
ハウラさんが、仕返しとばかりに穏やかそうだった人を煽り始めた。
「お前はカルサに似てるが中身は全く違うな!」
「きみも外見に関わらず粗野じゃないか。」
ハウラさんが、穏やかそうだった人を鼻で笑った。
ああ。ハウラさんの真骨頂が発揮されつつある。
「ジャスパーの前ではわきまえて欲しいものですね。」
ジャスパー呼びなのは、相変わらず仲が良いみたいだね。
「そちらの王子がそもそもの事の発端だと思うのだが?」
「それはあなたたちの言いがかりです。」
「それはどうかな。」
ハウラさんと穏やかそうだった人の間で火花が散っている。この二人、もしかして似たもの同士なのかもしれない。
「穏やかそうだった人って、名前なんて言うの?」
「ああ。そう言えばまだ聞いてなかったね。」
ハウラさんと僕は、検問所で身分と名前(仮)を明かしているけれど、穏やかそうだった人は名乗りもせずに、「それでは、王国へと案内します。」の一言だけで、僕たちをバナジナイト王国へと入国させてくれた。
「ケセラスだ!」
穏やかそうだった人は、若干の苛立ちを放ちながら教えてくれた。
「ケセラスさんね!よろしく!」
僕が元気良く手を差し出すと、その手は振り払われた。酷い・・・・。
「まさか、こんな者たちがカルサの一族にいるとは・・・・」
「まさか、ジャスパー様の取り巻きがこんなに短気だったとは・・・・」
手を振り払われた当て付けに、ぼそっとハウラさんに耳打ちした。
「コハクくん、コハクくん。そこまでにしておきなさい。外交問題に関わってきたら面倒だからね。特に相手は短気なケセラスだ。」
ハウラさんの方が、何故だか容赦がなかった。
「・・・・本当に外交問題にしてやりましょうか?」
「その時は、そちらが遂に消滅する頃でしょうね。」
それからハウラさんは、絶対零度の言葉を放ち、ケセラスさんを撃沈させていた。これまで、たくさんのハウラさんの一面を見てきたけれど、ここまで容赦のない姿を見るのは初めてかもしれない。
◇◇◇
僕たちが連れて来られたのは、王城ではなかった。流石に初っ端から城には招かれないか。
通されたのは、バナジナイト王国の花街の一画にある娼館だった。
ど、どう言うことでしょうか?!
花街の中でも、一際大きな娼館の一際大きな個室へと案内される。中からは、美しい女性の話し声が漏れ聞こえている。
ヒスイ!お兄ちゃん、絶対不埒なことはしません!これは、多分必要なことで、必要な話しをしたら真っ直ぐ帰るからね!安心してね!
「ジャスパー!無礼者たちを連れて来たよ!」
ケセラスさんが、扉の前で大きな声を出した。
「客人に対して無礼者とは・・・・」
「隠れる気もない偵察兵だろうが!」
ハウラさんのケチに、ケセラスさんはいちいち反応を示した。
「うるさいぞ。ケセラス。・・・・お!お前はあの時の狂犬じゃないか!」
ケセラスさんと同じような衣服を身に纏ったジャスパー様が、部屋から出てきた。それでも、ケセラスさんとは違い、銀製の細やかな装飾品をシャラシャラと付けていた。
「狂犬じゃないもん!コハクだもん!」
あれ?何だかこの台詞、五年前にも言ったような・・・・?
「そうだったな。五年経ってもキャンキャンしていて可愛いままだな。どうだ、俺の側女にならないか?」
ジャスパー様は僕へと顔を近づけて「相変わらず溢れそうな琥珀色の瞳だ。」と言った。
「ソバメ・・・・」
ソバメ・・・・ソバメ・・・・ツバメ・・・・?
ああ!燕か!でも何で燕?鳥だよね?
「斬る」
現実逃避に走っていた僕の思考を遮るように、ハウラさんの冷たい言葉が響き渡った。おまけに、鞘から少しだけ剣身を見せている。
「え?!ちょっとハウラさん?!何やってるの?!」
僕は慌ててハウラさんの謎の暴挙を止めに入った。
「ハウラ?カルサじゃないのか?」
対照的に、ジャスパー様は特に気にした様子もなく、あっけらかんとしていた。
「カルサは私であって私でないようなもの。そして半分、私のようなものだ。」
「意味は分からないが、確かに五年前に会ったやつとは雰囲気が違うな。」
ジャスパー様はにやりと笑ったが、ハウラさんの表情筋は死んでいた。本当にどうしちゃったの、ハウラさん?!
「剣を収めなければ、こちらも応戦するまでだ。」
僕があわあわしていると、またもや聞き覚えのある声がした。
「あ!頭ぐるぐる巻きの人だ!」
彼は変わらず短剣を構えていた。
「・・・・クロムだ。」
クロムさんは、眉間に皺を寄せて渋々と名乗ってくれた。
「クロムさんね!よろしく!」
僕は、ケセラスさんの時と同じように手を差し出したけれど、悲しいほどに無視された。ジャスパー様の取り巻きは、挨拶の基本がなっていない。じぃじが見たら、きっと喝を入れられるだろう。
「戦意が削がれるな。なんだこいつ。・・・・ジャスパー、こんな奴を側に置くのはやめた方がいい。悪趣味だと思われるぞ。」
他人のことを言えた義理はないかもしれないけれど、ジャスパー様の取り巻きは、ちくちく言葉常習犯だ。僕が、僕の周りを脅かす人に少しばかり意地悪になってしまうからかもしれないけれど・・・・。
結構、酷いことを言われた自覚はあるよ。
「口を慎め」
少しだけうなだれていると、再びハウラさんの硬い言葉とともに、ハウラさんの周囲が凍りつくんじゃないかと心配になるくらい、一気に空気が冷たくなっていった。
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