37 / 73
2 真相解明! 砂漠の行き倒れ
2-7.空気の膜
しおりを挟む
「うーん……難しいな……」
ニコと考える「空気の膜」の仕組みは、なかなか難しいものであった。研究室にいた頃には、動物の腸で作った薄い膜なんかがあって、外側を振動が伝ってくるイメージを持たせやすかったものだが、ここには紙袋しかない。
「空気の膜……」
「あの……あたし、口を挟んでもいい?」
私とニコがうんうん唸っているのを、黙って見ていたサラ。二人の視線がそちらを向くと、彼女は一瞬口ごもってから、提案をした。
「ちょっと違うかもなんだけど……銭湯でお湯に浸かっているとき、人が入ってくると波が立つのと、似てるなあって気がしたりして……」
「……なるほど。そうだわ」
「え?」
空気の膜だから空気ということにこだわっていたが、イメージを持つという視点においては、それが水でも何でも変わりはない。
サラの発想は、新しく、はっとさせるものであった。
「どういうこと?」
「うーん……この桶を使ってみようかな」
部屋の隅に置きっ放しになっていた、手を洗う水を張るための桶。それは、ニコに初めて魔法を教えた日に使ったものである。
「ねえ、ニコ。ここに水を張って」
「いいけど……」
ざばあ。当然のように、難なく水が現れる。
「このくらいのことを、普通にできるようになったのね」
「そうだね。俺……成長したんだなあ」
しみじみ呟くニコ。この短期間で、水筒の水しか出せなかったニコが、空を飛び回り、風の渦で街中を綺麗にするだけの力を身につけた。
「ここに、手を入れてみて。それで、目を瞑って」
「……ああ、気持ち良いね、ひんやりして」
ニコが手を、水面に浸ける。手首ほどまでが、透明な水に包まれた。揺れる湖面の向こうで、彼の適度に焼けた肌がゆらめいて見える。
「目を閉じて、ニコ」
「……うん」
「今から、私が水面に手を入れるから。いつ手が入ったかを、感じ取って。神経を尖らせて」
「わかった」
目を閉じるニコ。睫毛を伏せ、静かに呼吸をしている。私は水面をじっと見つめ、先程立った波が、できるだけ鎮まるのを待った。
ゆらゆら小刻みに動いていた水面が、やがて、僅かな揺れになる。ほとんど水平になった水面へ、私は音もなく手を差し入れた。水音はならないものの、波紋が手から広がり、ニコの手まで伝わる。
「……あ、今でしょ」
「そう。わかった?」
「わかったよ。水が揺れたから」
ニコが目を開け、桶から手を出す。風を吹かせて、手についた水滴を軽く飛ばす。私が桶から手を引き抜くと、垂れる水滴を、同じように飛ばしてくれた。何気なく使う魔法の質が上がっていることに、ニコは気づいているだろうか。彼の生活に、着々と、魔法が息づいている。
「同じことを、空気でやるのよ。水に浸っている手が、水の揺らぎを感じたみたいに。空気の中にいる私たちは、空気の揺らぎを感じることができるの」
「空気の、揺らぎ……」
ニコは目を閉じる。自分の感覚に、集中しているのだ。
「イリス、ちょっと動いて」
私が手を挙げると、ニコがびく、と肩を跳ねさせた。
「……誰か、階段を上って来てる」
「え?」
「失礼致します」
ノックの音。「どうぞ」と声をかけると、ラルドが顔を出した。
「クッキーが焼けたので、いかがかと思いまして」
「ありがとうございます!」
クッキーの載った皿を受け取り、互いに会釈をして戸を閉める。
「……ラルドさん、隣の部屋にも、声をかけに行ったね」
「えっ……すごい。本当にわかるんですか?」
サラが目をぱちくりさせ、ニコに聞く。ゆっくり目を開けたニコは、頷いた。
「ありがとう、イリス。水の例えが、すごいわかりやすかった」
「アイディアを出したのはサラだわ」
「そうか。サラ、ありがとう」
「そんな、あたしは何も」
サラは照れたように頬を染め、毛先をくるりと指先で弄る。唇から覗く白い歯が眩しい。役に立つことは、嬉しいことなのだ。それは、サラのように魔法が使えないときには、特に強く感じられるものだ。
「……で、これを、西の壁全体に広げるわけ」
「そうか、壁に広げれば、余計なことを感知しなくて済むんだね」
「そう。膜状にしないと、何もかもが伝わってきて、頭が処理しきれなくなるわ」
私も、野営の時など、同様の膜を張って眠ったことがある。膜状にしないと、内部に寝る人々の動きが逐一伝わってきて、眠るどころではなくなるのだ。街中で使えば、それはなおさら。ひとりひとりの動きまで感知していては、頭が痛くなる。
ニコには予めそう伝えておく。彼も納得した様子だ。
「今のを、薄くしなくちゃいけないのか……ちょっとイリス、何度か扉を出入りしてくれない? 扉は開けっぱなしでいいから」
「わかったわ」
ニコの指示は的確である。自ら学び始めている証拠だ。私はベッドから立ち上がって、扉を開けた。ひょい、とそこから外へ一歩踏み出す。そのまま、ひょいひょい、と何度か出入りした。
「おや? お客様、どうされましたか」
「あっ……ちょっと、運動しようかと思って」
「そうですか……ここは通路ですから、お気をつけくださいね」
「はい」
その姿をラルドに見咎められる。どう見ても怪しい動きだ。しどろもどろになりながら適当な説明をすると、表情を僅かに緩め、注意を受けた。
ラルドの姿を見送ってから、足音が響かないよう余計に気をつけて、改めて出入りを繰り返す。
だんだん息が上がってきた。この体は、体力がない。はあはあという呼吸が、ぜえぜえとなり始めた時、ニコから「もう大丈夫」と声がかかった。
「大丈夫なの……?」
「え、イリス、大丈夫? 顔、すごい赤いけど」
「大丈夫。疲れただけ」
目を閉じて集中していたニコは、私の顔を見て、驚いて目を見開く。私は短く答えて、ベッドにどさりと腰掛けた。ぬるくなって丁度良い温度になったお茶の残りを、ぐっと飲み干す。人心地がついた。
「体力がないのよ……」
少し運動して、基礎体力をつけるべきかもしれない。
「俺も、ちょっと疲れたな。これ以上やると、具合が悪くなる気がする」
「いいんじゃない? 最近使える量が増えて、体調を崩すこともないから」
体調が崩れるほどに魔力を使うのは苦しいけれど、その先には多くの場合、成長がある。私の言葉に、ニコは「そうだね」と応えた。
「隣の道くらいまで、広げてみるよ」
「そんな、一気に……」
今までの魔法とは違い、この魔法は、範囲を広げると頭にかかる負荷が上がる。入ってくる情報量が、ぐっと増えるからだ。特にこの辺りは、人通りも多い。
止める間もなく、ニコはすぐに頭を抱えた。
「……やばい」
「人がいっぱい動いてた?」
「うん。こうなるの知ってたの、イリス。言ってよ」
「言おうとしたじゃない」
呻くニコは、私の体をぐっと引き寄せる。断りなく、魔孔に手を当てられた。
「えっ、ニコラウスさん……」
サラがぎょっとしている理由を、私は最近わかった。魔孔に手を当てて魔力を抜き取る行為は、知らない人から見ると、単に胸を触っているだけなのだ。
ニコだってそれに驚いていたくせに、サラの前で、躊躇なくそれをするとは。余程、体調に来たのかもしれない。
「これは、そういうのじゃないの」
「そういうのじゃないって、どういう……」
「……ありがとう、楽になった」
少しすっきりした表情で、顔を上げるニコ。サラが、ますます嫌そうな顔をした。
「……そういうことなの」
「そう。ニコは誰彼構わず胸を触るような変態じゃないから、安心して。普通の人は、魔力を抜かれるのも苦しいから、こんなこと私にしかできないし」
「いや、誰彼構わずとは思ってないけど……イリスちゃんは、ニコラウスさんの奥さんなんだから」
私が魔法を使えないことを明かし、魔孔について詳しく説明して、漸くサラの不名誉な誤解は解けた。ニコは、自分のことなのに、平気そうな顔をしている。私が苦労して説明するのは、なんだか違う気がするが、仕方がない。
「魔法が使えないことは、あまり言いふらさないで欲しいの」
「わかってる。あたしもだよ。お互いに、ね」
「そうね」
同じ問題を抱える彼女なら理解を示してもらえると踏んだのは、正解だった。約束、と言って、サラと左手の小指を絡め合う。約束を誓う、挨拶だそうだ。「指切りげんまん」と呟いて、指を解いた。
「そういえばイリスちゃんって、指輪はしてないんだね」
「指輪?」
「結婚指輪。そういう習慣って、王都にしかないのかな?」
「あっ……」
結婚指輪。そういえば、そんなものがあった。結婚した男女は、同じ指に、揃いの指輪をつけるのだ。それが結婚の証になる。結婚した研究仲間が、金属を捻じ曲げて自分だけの指輪を作るのを、手伝ったことがあるのを思い出した。
嘘がばれるのは、些細なことから。ここらが、嘘の限界だ。観念した私とニコは、顔を見合わせる。
「実は、私たち」
「俺たち、指輪はこれから買うんだよ」
私がしようとした説明と、真逆のことを、ニコが言う。嘘に嘘を塗り重ねている。嘘をつくのもサラに悪いし、ちゃんと説明すればいいのに。
咎める気持ちを込めてニコを見ると、ニコはわざとらしく、「ね、イリス」と念を押した。
ここで違うと否定するのも、ますます混乱を招く。言葉が二転三転したら、サラの信用も失うだろう。
「そうね」
諦めて肯定すると、サラは「素敵ね」と、自分のことのように嬉しそうに言った。
ニコと考える「空気の膜」の仕組みは、なかなか難しいものであった。研究室にいた頃には、動物の腸で作った薄い膜なんかがあって、外側を振動が伝ってくるイメージを持たせやすかったものだが、ここには紙袋しかない。
「空気の膜……」
「あの……あたし、口を挟んでもいい?」
私とニコがうんうん唸っているのを、黙って見ていたサラ。二人の視線がそちらを向くと、彼女は一瞬口ごもってから、提案をした。
「ちょっと違うかもなんだけど……銭湯でお湯に浸かっているとき、人が入ってくると波が立つのと、似てるなあって気がしたりして……」
「……なるほど。そうだわ」
「え?」
空気の膜だから空気ということにこだわっていたが、イメージを持つという視点においては、それが水でも何でも変わりはない。
サラの発想は、新しく、はっとさせるものであった。
「どういうこと?」
「うーん……この桶を使ってみようかな」
部屋の隅に置きっ放しになっていた、手を洗う水を張るための桶。それは、ニコに初めて魔法を教えた日に使ったものである。
「ねえ、ニコ。ここに水を張って」
「いいけど……」
ざばあ。当然のように、難なく水が現れる。
「このくらいのことを、普通にできるようになったのね」
「そうだね。俺……成長したんだなあ」
しみじみ呟くニコ。この短期間で、水筒の水しか出せなかったニコが、空を飛び回り、風の渦で街中を綺麗にするだけの力を身につけた。
「ここに、手を入れてみて。それで、目を瞑って」
「……ああ、気持ち良いね、ひんやりして」
ニコが手を、水面に浸ける。手首ほどまでが、透明な水に包まれた。揺れる湖面の向こうで、彼の適度に焼けた肌がゆらめいて見える。
「目を閉じて、ニコ」
「……うん」
「今から、私が水面に手を入れるから。いつ手が入ったかを、感じ取って。神経を尖らせて」
「わかった」
目を閉じるニコ。睫毛を伏せ、静かに呼吸をしている。私は水面をじっと見つめ、先程立った波が、できるだけ鎮まるのを待った。
ゆらゆら小刻みに動いていた水面が、やがて、僅かな揺れになる。ほとんど水平になった水面へ、私は音もなく手を差し入れた。水音はならないものの、波紋が手から広がり、ニコの手まで伝わる。
「……あ、今でしょ」
「そう。わかった?」
「わかったよ。水が揺れたから」
ニコが目を開け、桶から手を出す。風を吹かせて、手についた水滴を軽く飛ばす。私が桶から手を引き抜くと、垂れる水滴を、同じように飛ばしてくれた。何気なく使う魔法の質が上がっていることに、ニコは気づいているだろうか。彼の生活に、着々と、魔法が息づいている。
「同じことを、空気でやるのよ。水に浸っている手が、水の揺らぎを感じたみたいに。空気の中にいる私たちは、空気の揺らぎを感じることができるの」
「空気の、揺らぎ……」
ニコは目を閉じる。自分の感覚に、集中しているのだ。
「イリス、ちょっと動いて」
私が手を挙げると、ニコがびく、と肩を跳ねさせた。
「……誰か、階段を上って来てる」
「え?」
「失礼致します」
ノックの音。「どうぞ」と声をかけると、ラルドが顔を出した。
「クッキーが焼けたので、いかがかと思いまして」
「ありがとうございます!」
クッキーの載った皿を受け取り、互いに会釈をして戸を閉める。
「……ラルドさん、隣の部屋にも、声をかけに行ったね」
「えっ……すごい。本当にわかるんですか?」
サラが目をぱちくりさせ、ニコに聞く。ゆっくり目を開けたニコは、頷いた。
「ありがとう、イリス。水の例えが、すごいわかりやすかった」
「アイディアを出したのはサラだわ」
「そうか。サラ、ありがとう」
「そんな、あたしは何も」
サラは照れたように頬を染め、毛先をくるりと指先で弄る。唇から覗く白い歯が眩しい。役に立つことは、嬉しいことなのだ。それは、サラのように魔法が使えないときには、特に強く感じられるものだ。
「……で、これを、西の壁全体に広げるわけ」
「そうか、壁に広げれば、余計なことを感知しなくて済むんだね」
「そう。膜状にしないと、何もかもが伝わってきて、頭が処理しきれなくなるわ」
私も、野営の時など、同様の膜を張って眠ったことがある。膜状にしないと、内部に寝る人々の動きが逐一伝わってきて、眠るどころではなくなるのだ。街中で使えば、それはなおさら。ひとりひとりの動きまで感知していては、頭が痛くなる。
ニコには予めそう伝えておく。彼も納得した様子だ。
「今のを、薄くしなくちゃいけないのか……ちょっとイリス、何度か扉を出入りしてくれない? 扉は開けっぱなしでいいから」
「わかったわ」
ニコの指示は的確である。自ら学び始めている証拠だ。私はベッドから立ち上がって、扉を開けた。ひょい、とそこから外へ一歩踏み出す。そのまま、ひょいひょい、と何度か出入りした。
「おや? お客様、どうされましたか」
「あっ……ちょっと、運動しようかと思って」
「そうですか……ここは通路ですから、お気をつけくださいね」
「はい」
その姿をラルドに見咎められる。どう見ても怪しい動きだ。しどろもどろになりながら適当な説明をすると、表情を僅かに緩め、注意を受けた。
ラルドの姿を見送ってから、足音が響かないよう余計に気をつけて、改めて出入りを繰り返す。
だんだん息が上がってきた。この体は、体力がない。はあはあという呼吸が、ぜえぜえとなり始めた時、ニコから「もう大丈夫」と声がかかった。
「大丈夫なの……?」
「え、イリス、大丈夫? 顔、すごい赤いけど」
「大丈夫。疲れただけ」
目を閉じて集中していたニコは、私の顔を見て、驚いて目を見開く。私は短く答えて、ベッドにどさりと腰掛けた。ぬるくなって丁度良い温度になったお茶の残りを、ぐっと飲み干す。人心地がついた。
「体力がないのよ……」
少し運動して、基礎体力をつけるべきかもしれない。
「俺も、ちょっと疲れたな。これ以上やると、具合が悪くなる気がする」
「いいんじゃない? 最近使える量が増えて、体調を崩すこともないから」
体調が崩れるほどに魔力を使うのは苦しいけれど、その先には多くの場合、成長がある。私の言葉に、ニコは「そうだね」と応えた。
「隣の道くらいまで、広げてみるよ」
「そんな、一気に……」
今までの魔法とは違い、この魔法は、範囲を広げると頭にかかる負荷が上がる。入ってくる情報量が、ぐっと増えるからだ。特にこの辺りは、人通りも多い。
止める間もなく、ニコはすぐに頭を抱えた。
「……やばい」
「人がいっぱい動いてた?」
「うん。こうなるの知ってたの、イリス。言ってよ」
「言おうとしたじゃない」
呻くニコは、私の体をぐっと引き寄せる。断りなく、魔孔に手を当てられた。
「えっ、ニコラウスさん……」
サラがぎょっとしている理由を、私は最近わかった。魔孔に手を当てて魔力を抜き取る行為は、知らない人から見ると、単に胸を触っているだけなのだ。
ニコだってそれに驚いていたくせに、サラの前で、躊躇なくそれをするとは。余程、体調に来たのかもしれない。
「これは、そういうのじゃないの」
「そういうのじゃないって、どういう……」
「……ありがとう、楽になった」
少しすっきりした表情で、顔を上げるニコ。サラが、ますます嫌そうな顔をした。
「……そういうことなの」
「そう。ニコは誰彼構わず胸を触るような変態じゃないから、安心して。普通の人は、魔力を抜かれるのも苦しいから、こんなこと私にしかできないし」
「いや、誰彼構わずとは思ってないけど……イリスちゃんは、ニコラウスさんの奥さんなんだから」
私が魔法を使えないことを明かし、魔孔について詳しく説明して、漸くサラの不名誉な誤解は解けた。ニコは、自分のことなのに、平気そうな顔をしている。私が苦労して説明するのは、なんだか違う気がするが、仕方がない。
「魔法が使えないことは、あまり言いふらさないで欲しいの」
「わかってる。あたしもだよ。お互いに、ね」
「そうね」
同じ問題を抱える彼女なら理解を示してもらえると踏んだのは、正解だった。約束、と言って、サラと左手の小指を絡め合う。約束を誓う、挨拶だそうだ。「指切りげんまん」と呟いて、指を解いた。
「そういえばイリスちゃんって、指輪はしてないんだね」
「指輪?」
「結婚指輪。そういう習慣って、王都にしかないのかな?」
「あっ……」
結婚指輪。そういえば、そんなものがあった。結婚した男女は、同じ指に、揃いの指輪をつけるのだ。それが結婚の証になる。結婚した研究仲間が、金属を捻じ曲げて自分だけの指輪を作るのを、手伝ったことがあるのを思い出した。
嘘がばれるのは、些細なことから。ここらが、嘘の限界だ。観念した私とニコは、顔を見合わせる。
「実は、私たち」
「俺たち、指輪はこれから買うんだよ」
私がしようとした説明と、真逆のことを、ニコが言う。嘘に嘘を塗り重ねている。嘘をつくのもサラに悪いし、ちゃんと説明すればいいのに。
咎める気持ちを込めてニコを見ると、ニコはわざとらしく、「ね、イリス」と念を押した。
ここで違うと否定するのも、ますます混乱を招く。言葉が二転三転したら、サラの信用も失うだろう。
「そうね」
諦めて肯定すると、サラは「素敵ね」と、自分のことのように嬉しそうに言った。
10
あなたにおすすめの小説
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
【 完 結 】スキル無しで婚約破棄されたけれど、実は特殊スキル持ちですから!
しずもり
ファンタジー
この国オーガスタの国民は6歳になると女神様からスキルを授かる。
けれど、第一王子レオンハルト殿下の婚約者であるマリエッタ・ルーデンブルグ公爵令嬢は『スキル無し』判定を受けたと言われ、第一王子の婚約者という妬みや僻みもあり嘲笑されている。
そしてある理由で第一王子から蔑ろにされている事も令嬢たちから見下される原因にもなっていた。
そして王家主催の夜会で事は起こった。
第一王子が『スキル無し』を理由に婚約破棄を婚約者に言い渡したのだ。
そして彼は8歳の頃に出会い、学園で再会したという初恋の人ルナティアと婚約するのだと宣言した。
しかし『スキル無し』の筈のマリエッタは本当はスキル持ちであり、実は彼女のスキルは、、、、。
全12話
ご都合主義のゆるゆる設定です。
言葉遣いや言葉は現代風の部分もあります。
登場人物へのざまぁはほぼ無いです。
魔法、スキルの内容については独自設定になっています。
誤字脱字、言葉間違いなどあると思います。見つかり次第、修正していますがご容赦下さいませ。
無自覚人たらしマシュマロ令嬢、王宮で崇拝される ――見た目はぽっちゃり、中身は只者じゃない !
恋せよ恋
ファンタジー
富豪にして美食家、オラニエ侯爵家の長女ステファニー。
もっちり体型から「マシュマロ令嬢」と陰口を叩かれる彼女だが、
本人は今日もご機嫌に美味しいものを食べている。
――ただし、この令嬢、人のオーラが色で見える。
その力をひけらかすこともなく、ただ「気になるから」と忠告した結果、
不正商会が摘発され、運気が上がり、気づけば周囲には信奉者が増えていく。
十五歳で王妃に乞われ、王宮へ『なんでも顧問』として迎えられたステファニー。
美食を愛し、人を疑わず、誰にでも礼を尽くすその姿勢は、
いつの間にか貴族たちの心を掴み、王子たちまで惹きつけていく。
これは、
見た目はぽっちゃり、されど中身は只者ではないマシュマロ令嬢が、
無自覚のまま王宮を掌握していく、もっちり系・人たらし王宮譚。
🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。
🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。
🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。
🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。
🔶 エール📣いいね❤️励みになります!
🔶表紙はAI生成画像です🤖
魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
辺境薬術師のポーションは至高 騎士団を追放されても、魔法薬がすべてを解決する
鶴井こう
ファンタジー
【書籍化しました】
余分にポーションを作らせ、横流しして金を稼いでいた王国騎士団第15番隊は、俺を追放した。
いきなり仕事を首にされ、隊を後にする俺。ひょんなことから、辺境伯の娘の怪我を助けたことから、辺境の村に招待されることに。
一方、モンスターたちのスタンピードを抑え込もうとしていた第15番隊。
しかしポーションの数が圧倒的に足りず、品質が低いポーションで回復もままならず、第15番隊の守備していた拠点から陥落し、王都は徐々にモンスターに侵略されていく。
俺はもふもふを拾ったり農地改革したり辺境の村でのんびりと過ごしていたが、徐々にその腕を買われて頼りにされることに。功績もステータスに表示されてしまい隠せないので、褒賞は甘んじて受けることにしようと思う。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる