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お願い社長!
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「これでよし、っと」
投稿完了の文字。タイムラインを見ると、地下駐車場で高級車のボンネットに腰をかけ、けだるげなピースサインをする自身の写真。今しがた撮り終えた画像だ。
瞬く間にスマートフォンが震え、通知欄が埋まっていく。賛辞、羨望、そしてあわよくばおこぼれに預かろうとするコバンザメ共からのメッセージ。本当に浅ましく、愚かな奴らだ。
返信をしたくて、自慢をしたくて指先がうずうずしてしまうがまだ早い。王者の風格、余裕を見せつけてやらないといけないからな。このビルに入っているブランドものの服屋でスーツの試着をして、その写真も投稿してやろう。今日はオフだからTシャツにジーパンというゆるい格好だが、仕事用のスーツを新調しにきた、設定としてはそんなところだろう。
自分でも、馬鹿みたいだと思う。SNS上でやり手の経営者や富豪を装ってみたところで虚構でしかない。ぼくが帰るのは、都内のタワーマンションの最上階ではなく、四畳半のボロアパート。カップ麺なんて高級品は手が出せないから、スーパーで特売日に買ったモヤシを炒めて空腹をしのぐ。そして目を覚ませば日雇いのアルバイトを探すために……ああ、やめやめ。言われずともわかっているんだ。でも、こうやって自分を偽ったときにだけ、自分という存在が誰かから手放しに認めてもらえるんだ。きっとコレが本当の自分で、現実の自分は何かの間違い。そうに決まっている。
「おい」
唐突に背中を刺した、怒気をはらんだ声。周りには人の気配がない。
「聞こえてんのか? なあ?」
左肩に爪が食い込んだ。まずい。
車のオーナーが戻ってきたのだ。こうなることを避けるために、車を降りてすぐのタイミングを狙ったのに。忘れ物でも取りに来たのか、いずれにしても、最悪だ。
「なっ、なな、なんですかっ」
しらを切って振り返ってみると、更に最悪なことになった。獣人、オオカミ。しかもサングラスに黒スーツ。諜報機関のエージェントというよりは、チンピラとかマフィアとかヤクザとか、その手の類い。
「なんですか? じゃねえだろ。クソ人間がよお。人様の車にきったねえケツ乗せやがって」
ああ、見られてたの。一部始終。
「す、すみま……ヘブッ!?」
これだから嫌いなんだ。すぐに手を出す野蛮な連中。暴力でなんでも解決できると思っている。
追撃に備え身体を丸く縮める。防御態勢。さすがに殺されはしないと思うが、骨折ぐらいはあるかも。滲んだ視界越しにうつる大きな影が、思い出したくない嫌な記憶をほじくり返す。あの頃の悪ガキやいじめっ子と姿形は違えども、コイツらは皆、本質は同じなのだ。
「いっ……てえ…………」
あれから背中を二、三発蹴り上げ、捨て台詞を吐いてからあのオオカミは立ち去った。
どうする? このまますごすごと帰るのか?
ぼくの行いが発端とはいえ、暴行を受けたのだ。警備員か、警察を呼んで訴えれば勝てる見込みはゼロじゃない。あんな人相の悪いヤツの言葉よりも、真っ当なぼくの言葉の方が信頼も得られるだろう。
あるいは、このご自慢の高級車に十円玉でひっかき傷を付けてやるのもいいかもしれない。バカとかアホとか、小学生が考えそうな言葉でもいいけれど、ワンコロなんて彫ってやったら傑作だな。
「はあ……かえろ」
断じて逃げるわけじゃない。無益な争いをしない極めて理性的な判断だ。目を付けられたら地の果てまで追いかけられそうとかじゃないからな、決して。
重い身体を引きずってなんとか家に帰り着き、食事もとらずに死んだように寝転がった。
翌日、仕事なんて当然行く気にもならない。次の日も、そのまた次の日も、痛みがすっかり消え去ってしまっても、外に出る気はこれっぽっちも起こらなかった。
あれから何日経っただろう。それにしても。
「やはりムカつく!」
こうなったら、もうヤケクソだ!
すぐ借金センターで10万を借りる!
この金でタピオカ屋を設立。想定以上の大繁盛! 資金が十倍増し!
つぎは車を配置しよう。星5車560万……高すぎ。星4車250万、これもむり。星3車50万……これに決めた。
あれ?
そこにおばさんが倒れている。手伝ってあげよう! おばさんが感謝のために、直接10連ガチャをくれた!!
100億資金!
星5名車!
星5オフィスビル!!
…………。
突如として降って湧いた幸運。自分でも何が何だかわからないくらいのスピードで、めまぐるしく環境が激変していく。モヤシ生活をしていたなんて今では考えられない。今やぼくは、この摩天楼の支配者といっても過言ではないだろう。ああ、社長室から見下ろす景色は最高だ。
「ん? なんだ、バカに騒がしいな」
ビルの入り口付近で誰かが言い争っているようだ。
おおよその見当は付いている。環境保護だかの市民団体が抗議にきたか、寄付金目当ての座り込みか。いずれにしても、放っておいても警備員が片付けてくれるはずだ。
「よし、行ってみるか」
野次馬根性もあるが、ちょうど退屈していたんだ。マグロの解体ショーができそうなくらい広々とした机に並べられた書類に判子を押すだけなんて、アクビがでるくらいつまらないんだ。椅子に座りっぱなしというのも身体によくないというし、散歩がてら様子を見に行こう。
「おい、何の騒ぎだ?」
何人かの警備員と社員とで囲われた輪の中で、誰かが座り込んで、いや土下座というべきか。
「あっ、しゃ、社長! 申し訳ございません! こやつが獣人の分際で、ウチで雇って欲しいなどと……」
取り囲んでいた社員のひとり、バーコードハゲがぼくに向かって弁明をする。
昨今では平等な社会だとか、多様性がどうとか世の中では騒がれているが、ぼくは獣人ってヤツが嫌いだ。人間様と対等みたいなツラをしておきながら、口よりも先に手が出る野蛮な存在。あの毛むくじゃらの顔を見ただけで反吐が出る。
だから、あの10連ガチャで莫大な資金を得た後、持て余した金で周囲の会社という会社を全て買収し、表立ってはいえないが、奴らを排除するべく獣人を雇わないように圧力をかけてやったのだ。街中ではすっかり見ることはなくなって、せいせいしていたというのにまだしぶとく生き残りが居たとはな。
「おっ、お願いします! 掃除でも、荷物運びでも、なんでもしますから……どうか雇ってください!」
ソイツはぼくが来たとみるや、石畳に頭を擦りつけて更に大きな声で懇願する。
気が付けば人だかりが出来ている。興味深げに眺める通行人。いくら裏で手を回したところで、建前というのがある。下手にこの場面をSNSなんかに投稿されでもしたら、会社の評判がガタ落ちになるかもしれない。炎上は避けねば。
「きみ、いいから顔を上げなさい。話を聞こうじゃないか」
つとめて紳士的に。大富豪としての余裕と慈悲の心を見せなければ。
「ああっ!? お、お前は!」
顔を上げたオオカミが、ぼくを指さして叫んだ。
ぼくも危うく叫び出しそうになるのを堪えて、精一杯の笑顔を張り付かせる。
浮浪者としかいいようのないボロボロの身なり。でも、知っている。スーツも、サングラスもつけていないけれど、この声と毛の色、忘れない。ぼくを殴ったアイツだ! あんな高級車を乗り回していたというのに、落ちぶれたものだな。
「みなさんご安心ください! 我が社は、この困窮した獣人の彼に手を差し伸べ、仕事を与えようと思います!」
声高らかに宣言してみせる。たちどころに割れんばかりの拍手。
さあ、もっと動画を撮れ。SNSに投稿しろ。この感動的な場面を宣伝するんだ!
困惑したオオカミをよそに、ぼくは聴衆たちに笑顔で手を振った。
「あっ、あの……ええと、あの時はすみませんでした」
社長室のふかふかのソファーから身を乗り出して、スライディングするように土下座をするオオカミ。
「そんな昔のコト、覚えていませんよ。それより、随分とお困りのようですね?」
防音もバッチリなこの部屋で二人きり。人払いもしてある。だから、罵声を浴びせようが殴りかかろうが思うがままにできるのだが。ま、ぼくは野蛮なコイツらとは違うからな。
「その、この街だと、どうしてか獣人は仕事をもらえなくなってしまって」
そうしたからな、ぼくが。
「しかし、ほかの街……まあ、田舎の方なら働き口があるだろう?」
そうまでしてこの街にいる理由なんてないはずだ。いくら金にものを言わせたからといっても、世界中全部を買収できるわけじゃない。ぼくの力が及ばない場所でなら、それなりの生活だってできるだろう。
「おっ、弟が病気で、ココのでっかい病院じゃないとダメなんです。だから、どうかお願いします社長! お、オレ、獣人なんで体力はあるし、弟のためなら何でもやりますから!」
へえ。こんな奴らでも、家族同士の情けはあるらしい。知ったこっちゃないけどな。
「それは大変でしたね。いやあ、実はちょうど秘書を探していたんですよねえ」
ピクリと耳が立った。
「…………殺しでも、汚れ仕事でも、やります」
さすがはチンピラ、察しが良い。
「いやいや! そんな物騒なコト! 映画の見過ぎですよ」
しかし、ぼくが望んでいるのはそんなことじゃない。
「くわえろ」
オオカミの前に仁王立ちになり、ズボンのジッパーを降ろす。面食らったオオカミの顔が、一拍おいてから歪んでいく。怒りか、嫌悪か、はたまた。
「あ、あんた、なにいって……」
戸惑うのも無理はない。よほどの好き者でもない限りは、男のモノを咥えるなんて。
「入院費用は全額負担しよう」
そんなはした金ぐらい、この余興のためならどうってことない。オオカミの目の色が変わる。自分のプライドを取るのか、それとも己を捨てて弟を取るのか、どちらだろうか。
「おっ、お願い、します。しゃぶらせて、ください」
思わず絶頂しかける。なんと美しい兄弟愛だろうか。
ちゅぷっ、はむっ。
覚悟を決めてからというものの、行動に移すのは早かった。
目をつぶり、眉間にしわを寄せながらも恐る恐るちんぽを咥えてみせるオオカミ。時折えずきそうになりながらも、必至に堪えて奉仕をする。
「はあ。そんな辛気くさいツラで舐められたら萎えちまいそうだな」
ぐぷっ、じゅぽっ、くぽっ。
なんとか早く射精させてしまおうとストロークを長く激しくしてみせるが、かえって逆効果。こんな嫌々事務的にされたところで、ちっとも気持ちよくない。
「おい、ワンコロらしく尻尾でも振って媚びてみせろ」
閉じられていた目が開き、キッとぼくを睨み付ける。いいんだぞ、嫌なら今すぐやめたって。
「しゃっ、社長の、アソコ、おいし……んブッ!?」
耳を思い切り手前に引っ張って腰を打ち付けてやる。まだまだ教育が必要なようだ。
「ちんぽ、だろ?」
生意気にもグルグルと唸り声を立て始めたものだから、耳を千切れんばかりにひねってやると、憐れっぽい鼻声に変わる。どっちが上なのか、しっかりとたたき込んでやらないとな。
「社長の、ちんぽ……お、おっきくて、おいしいです」
ぎこちなく振られる尻尾。中に鉄芯でも入っているようだ。
「そうかそうか、ワンコロは人間様のちんぽ好きか?」
口元が恥辱に震え、金色の目が鋭さを増していく。万が一、逆上して噛み切られでもしたら大惨事だ。股間が血まみれになる様を想像してゾッとしてしまう。フェラチオさせているという圧倒的な優位にあるようでいて、一番の弱点を猛獣の口の中に委ねているのだ。
「はい……人間様のちんぽ、しょっぱくてエッチな味……」
くんくんっ。ぬぶぶっ、じゅぷ。
ほう、これはなかなか堂に入っているじゃないか。手綱代わりに掴んでいた耳を解放してやり頭を軽く撫でてやると、今度は滑らかに尻尾が揺れる。
「ああ、いいぞ……いい子にしてたら毎日ちんぽ恵んでやるからな」
ちゅっ、ちゅぷ。にゅくっ、にゅこっ。
これは、なんとも具合がいい。長細い口吻が余すところなくちんぽ全体を包み込んで、ヒリヒリと火傷してしまいそうな熱をもって先走りを吸い上げる。搾乳機を思わせる。
「ああっ、いく、いくぞ! 全部、飲めよっ!」
びゅっ、びゅーっ! びゅるるっ、びゅ。
もう少し楽しみたいという気持ちもあったが、あっけなく果ててしまう。いいさ、楽しみはまだまだこれからなんだから。
「えっと、カイ、ここが兄ちゃんの仕事場です」
スマートフォンの画面にうつる緊張の面持ち。
「あの、ホントに大丈夫なんでしょうね?」
疑り深い声。
「大丈夫だって、そういうシチュエーションのフリだけだから」
あれから数ヶ月。毎日のようにオオカミの口内に射精した。あるときは仕事をしながら机の下に潜り込んで、またあるときは全社員に向けて経営方針を説明する場の演台の中に隠れて、このオオカミはぼくのちんぽを咥えた。だけど、コンビニ弁当も一通り食べ尽くしてしまえば飽きてしまう。新鮮なシチュエーション、新たな刺激を求めて開拓精神がうずいてしまうのだ。
今日思いついたシチュエーションは、オオカミの弟に向けたビデオレターという趣。兄の仕事っぷりを、病室で一人寂しく過ごしている弟くんに見てもらおうというモノだ。スマートフォンで録画をしているものの、あくまでフリだけで、録画もコトが終わればすぐに破棄するからと言いくるめてなんとか実現した。
「じゃあ、お兄ちゃんのお仕事を紹介しよっか?」
ノリノリのぼくとは対照的に、少し呆れた表情を見せるオオカミ。お金を盾に無理矢理付き合わされているとはいえ、最近は少しだけ、ほんの少しだけぼくに軽口だって叩くようになってきた。
「にっ、兄ちゃんは、毎日、はぁっ……おいしそう……」
鼻をひくつかせながら、顔を蕩けさせてしまう。
「ちんぽっ、社長さんのちんぽにご奉仕して、あっ、た、食べたいっ」
説明も半ばに、だらりと舌を垂らしてちんぽに食らいつこうとしたところに腰を引く。不満げな顔。
「こーらっ、ちゃんとカイくんに説明してあげないと」
コスプレもののエロ動画で、しょっぱなから全裸になってしまったら興ざめだろ?
「まっ、まずは、こうやってクンクンして……んっ、うんっ」
盛り上がったズボンの先端にジワリと染みができる。
「それからっ、ちんぽに、いただきますのチューをして」
ちゅっ、ちゅうっ。れるっ、れちゃっ。
窄められた口先で尿道口を覆い、舌先がチロチロと先走りをすくい上げる。
「もっ、もう食べてもいいっ!?」
またもや飛びかかりそうになるが、鼻先を突いて制止する。最近は我慢がきかなくなってしまっているな。
「これから、お兄ちゃんのお口の中にちんぽが入っちゃうんだけど」
涎をボタボタと垂らすオオカミのマズルの上にちんぽを乗せる。金玉に塞がれた鼻の穴が、豚の鳴き声のような音を立てた。
「このぐらいのトコロまで入っちゃうかな。お口の中がちんぽでいっぱいになっちゃうね?」
一応は弟くんに説明している体裁で。本来はこのオオカミに説明させたかったのだが、鼻先に乗せられたちんぽを寄り目がちに凝視して鼻息を荒くするだけで、もうマトモに喋れそうにはなかった。
「はあ……それじゃあ、お兄ちゃんに実演してもらおうか」
待ってましたとばかりに輝く目。
「カイっ、お、お兄ちゃんがちんぽ食べてるところ、よく見るんだぞっ」
ちゅぷぷ……ぶぷっ。
「おっきいちんぽ……おいしいっ……こうやって舌で、裏側とかっ」
ぴちゅっ、ぺちゃ、べろっ。
「カリ首の、つなぎ目のトコロ、ぺろぺろして」
ぐぷっ、ぐぶ、ぐっぽ。
「あっ、あ、あっ、ちんぽっ、ちんぽもぐもぐするんだぞっ」
口内の肉襞が擦りあげてくる。毎日味わっているもののはずなのに、今日は一段と欲張りだ。
「ちんぽおいしい?」
頭を撫でてやると、即座に尻尾が埃を巻き上げる。
「おいひいっ! んっ、ぐっ、口の中で、ど、どんどんエッチな味になってる……」
にゅぽっ、にゅこ、ぬこ、ぬこっ。
「ああいきそ……カイくんに、ちんぽミルクごくごくするところ見てもらおうね」
びゅるるっ! ごくっ。びゅーっ、ごくっんくっ。びゅっぴゅ。こく。
久々にハッスルしてしまった。心臓がまだバクバクと叩かれていて目眩をおこしてしまいそう。
「いやあ、お兄ちゃんの仕事っぷり、よかったねえ」
ようやく息が整ったころに、そう声をかけてみるとオオカミは呆れたようなジト目でこちらを見上げる。いつまでそのプレイをしているつもりなのだ、と。
ちょっと可哀想な気もするが、種明かしといくか。机の上に乗っているモニタをぐるりとひっくり返してオオカミの方に向けてやる。
「んなっ!? ちょっ、な、なな、なんっ、なんで!?」
モニタの向こうには、生中継された兄の痴態に顔を真っ赤にして、股間を大きくしている弟くんの姿があった。
ボタ、ポタ……。
ズボンから染みだした精液が床を打ち付けていた。
栄枯盛衰。盛者必衰。
経営の知識もセンスもないヤツが、たまたま手にした幸運だけでいつまでも過ごせるわけがない。
莫大な借金を抱え、手には一箱の段ボールを抱え、かつては自分のものだったビルの前で立ちすくむ。
金の切れ目が縁の切れ目。あれほど金魚の糞のように付きまとっていた部下たちも、社長の座を追われて無一文になった自分には見向きもしない。警備員ですら「早く立ち去れ」と言わんばかりに睨み付けてくる。
「なあ」
見知ったオオカミの顔。隣には、小さなオオカミ。
憐れな末路を笑いに来たか、罵りに来たか、どちらでもいいさ。
「アンタは滅茶苦茶なヤローだったけど、コイツの命の恩人だ」
ただの気まぐれ。猛獣を従わせるための人質。恩に着せるつもりもない。
「ようやく退院できたんだ。だからもうこの街を出て、どこか田舎で暮らそうと思う」
義理堅くお別れのご挨拶ってことか、ワンコロらしいな。そう皮肉りかけてやめた。ただただ頷いて、それから笑顔を作って、「よかったな」そういって見送ろうと。今更善人ぶりたい訳でなく、どうしてか、心の底からそうしたいって思ったんだ。
「それで、だ、な……アンタさえよければ、一緒に来ないか?」
鼻先をポリポリとかくその顔からは、騙してやろうとか、陥れてやろうとか、そんな感情は欠片も感じられなかった。いいんだろうか。伸ばされたこの手を、掴んでも。
「にーちゃん、昨日もちんぽ食べたいっていってひとりでエッチなことしてたもんね!」
「わっ、わわっ! か、カイ! お前見てたのかよっ!?」
自信も根拠もないけれど、きっと上手くやれる。なぜだかそう確信していた。
投稿完了の文字。タイムラインを見ると、地下駐車場で高級車のボンネットに腰をかけ、けだるげなピースサインをする自身の写真。今しがた撮り終えた画像だ。
瞬く間にスマートフォンが震え、通知欄が埋まっていく。賛辞、羨望、そしてあわよくばおこぼれに預かろうとするコバンザメ共からのメッセージ。本当に浅ましく、愚かな奴らだ。
返信をしたくて、自慢をしたくて指先がうずうずしてしまうがまだ早い。王者の風格、余裕を見せつけてやらないといけないからな。このビルに入っているブランドものの服屋でスーツの試着をして、その写真も投稿してやろう。今日はオフだからTシャツにジーパンというゆるい格好だが、仕事用のスーツを新調しにきた、設定としてはそんなところだろう。
自分でも、馬鹿みたいだと思う。SNS上でやり手の経営者や富豪を装ってみたところで虚構でしかない。ぼくが帰るのは、都内のタワーマンションの最上階ではなく、四畳半のボロアパート。カップ麺なんて高級品は手が出せないから、スーパーで特売日に買ったモヤシを炒めて空腹をしのぐ。そして目を覚ませば日雇いのアルバイトを探すために……ああ、やめやめ。言われずともわかっているんだ。でも、こうやって自分を偽ったときにだけ、自分という存在が誰かから手放しに認めてもらえるんだ。きっとコレが本当の自分で、現実の自分は何かの間違い。そうに決まっている。
「おい」
唐突に背中を刺した、怒気をはらんだ声。周りには人の気配がない。
「聞こえてんのか? なあ?」
左肩に爪が食い込んだ。まずい。
車のオーナーが戻ってきたのだ。こうなることを避けるために、車を降りてすぐのタイミングを狙ったのに。忘れ物でも取りに来たのか、いずれにしても、最悪だ。
「なっ、なな、なんですかっ」
しらを切って振り返ってみると、更に最悪なことになった。獣人、オオカミ。しかもサングラスに黒スーツ。諜報機関のエージェントというよりは、チンピラとかマフィアとかヤクザとか、その手の類い。
「なんですか? じゃねえだろ。クソ人間がよお。人様の車にきったねえケツ乗せやがって」
ああ、見られてたの。一部始終。
「す、すみま……ヘブッ!?」
これだから嫌いなんだ。すぐに手を出す野蛮な連中。暴力でなんでも解決できると思っている。
追撃に備え身体を丸く縮める。防御態勢。さすがに殺されはしないと思うが、骨折ぐらいはあるかも。滲んだ視界越しにうつる大きな影が、思い出したくない嫌な記憶をほじくり返す。あの頃の悪ガキやいじめっ子と姿形は違えども、コイツらは皆、本質は同じなのだ。
「いっ……てえ…………」
あれから背中を二、三発蹴り上げ、捨て台詞を吐いてからあのオオカミは立ち去った。
どうする? このまますごすごと帰るのか?
ぼくの行いが発端とはいえ、暴行を受けたのだ。警備員か、警察を呼んで訴えれば勝てる見込みはゼロじゃない。あんな人相の悪いヤツの言葉よりも、真っ当なぼくの言葉の方が信頼も得られるだろう。
あるいは、このご自慢の高級車に十円玉でひっかき傷を付けてやるのもいいかもしれない。バカとかアホとか、小学生が考えそうな言葉でもいいけれど、ワンコロなんて彫ってやったら傑作だな。
「はあ……かえろ」
断じて逃げるわけじゃない。無益な争いをしない極めて理性的な判断だ。目を付けられたら地の果てまで追いかけられそうとかじゃないからな、決して。
重い身体を引きずってなんとか家に帰り着き、食事もとらずに死んだように寝転がった。
翌日、仕事なんて当然行く気にもならない。次の日も、そのまた次の日も、痛みがすっかり消え去ってしまっても、外に出る気はこれっぽっちも起こらなかった。
あれから何日経っただろう。それにしても。
「やはりムカつく!」
こうなったら、もうヤケクソだ!
すぐ借金センターで10万を借りる!
この金でタピオカ屋を設立。想定以上の大繁盛! 資金が十倍増し!
つぎは車を配置しよう。星5車560万……高すぎ。星4車250万、これもむり。星3車50万……これに決めた。
あれ?
そこにおばさんが倒れている。手伝ってあげよう! おばさんが感謝のために、直接10連ガチャをくれた!!
100億資金!
星5名車!
星5オフィスビル!!
…………。
突如として降って湧いた幸運。自分でも何が何だかわからないくらいのスピードで、めまぐるしく環境が激変していく。モヤシ生活をしていたなんて今では考えられない。今やぼくは、この摩天楼の支配者といっても過言ではないだろう。ああ、社長室から見下ろす景色は最高だ。
「ん? なんだ、バカに騒がしいな」
ビルの入り口付近で誰かが言い争っているようだ。
おおよその見当は付いている。環境保護だかの市民団体が抗議にきたか、寄付金目当ての座り込みか。いずれにしても、放っておいても警備員が片付けてくれるはずだ。
「よし、行ってみるか」
野次馬根性もあるが、ちょうど退屈していたんだ。マグロの解体ショーができそうなくらい広々とした机に並べられた書類に判子を押すだけなんて、アクビがでるくらいつまらないんだ。椅子に座りっぱなしというのも身体によくないというし、散歩がてら様子を見に行こう。
「おい、何の騒ぎだ?」
何人かの警備員と社員とで囲われた輪の中で、誰かが座り込んで、いや土下座というべきか。
「あっ、しゃ、社長! 申し訳ございません! こやつが獣人の分際で、ウチで雇って欲しいなどと……」
取り囲んでいた社員のひとり、バーコードハゲがぼくに向かって弁明をする。
昨今では平等な社会だとか、多様性がどうとか世の中では騒がれているが、ぼくは獣人ってヤツが嫌いだ。人間様と対等みたいなツラをしておきながら、口よりも先に手が出る野蛮な存在。あの毛むくじゃらの顔を見ただけで反吐が出る。
だから、あの10連ガチャで莫大な資金を得た後、持て余した金で周囲の会社という会社を全て買収し、表立ってはいえないが、奴らを排除するべく獣人を雇わないように圧力をかけてやったのだ。街中ではすっかり見ることはなくなって、せいせいしていたというのにまだしぶとく生き残りが居たとはな。
「おっ、お願いします! 掃除でも、荷物運びでも、なんでもしますから……どうか雇ってください!」
ソイツはぼくが来たとみるや、石畳に頭を擦りつけて更に大きな声で懇願する。
気が付けば人だかりが出来ている。興味深げに眺める通行人。いくら裏で手を回したところで、建前というのがある。下手にこの場面をSNSなんかに投稿されでもしたら、会社の評判がガタ落ちになるかもしれない。炎上は避けねば。
「きみ、いいから顔を上げなさい。話を聞こうじゃないか」
つとめて紳士的に。大富豪としての余裕と慈悲の心を見せなければ。
「ああっ!? お、お前は!」
顔を上げたオオカミが、ぼくを指さして叫んだ。
ぼくも危うく叫び出しそうになるのを堪えて、精一杯の笑顔を張り付かせる。
浮浪者としかいいようのないボロボロの身なり。でも、知っている。スーツも、サングラスもつけていないけれど、この声と毛の色、忘れない。ぼくを殴ったアイツだ! あんな高級車を乗り回していたというのに、落ちぶれたものだな。
「みなさんご安心ください! 我が社は、この困窮した獣人の彼に手を差し伸べ、仕事を与えようと思います!」
声高らかに宣言してみせる。たちどころに割れんばかりの拍手。
さあ、もっと動画を撮れ。SNSに投稿しろ。この感動的な場面を宣伝するんだ!
困惑したオオカミをよそに、ぼくは聴衆たちに笑顔で手を振った。
「あっ、あの……ええと、あの時はすみませんでした」
社長室のふかふかのソファーから身を乗り出して、スライディングするように土下座をするオオカミ。
「そんな昔のコト、覚えていませんよ。それより、随分とお困りのようですね?」
防音もバッチリなこの部屋で二人きり。人払いもしてある。だから、罵声を浴びせようが殴りかかろうが思うがままにできるのだが。ま、ぼくは野蛮なコイツらとは違うからな。
「その、この街だと、どうしてか獣人は仕事をもらえなくなってしまって」
そうしたからな、ぼくが。
「しかし、ほかの街……まあ、田舎の方なら働き口があるだろう?」
そうまでしてこの街にいる理由なんてないはずだ。いくら金にものを言わせたからといっても、世界中全部を買収できるわけじゃない。ぼくの力が及ばない場所でなら、それなりの生活だってできるだろう。
「おっ、弟が病気で、ココのでっかい病院じゃないとダメなんです。だから、どうかお願いします社長! お、オレ、獣人なんで体力はあるし、弟のためなら何でもやりますから!」
へえ。こんな奴らでも、家族同士の情けはあるらしい。知ったこっちゃないけどな。
「それは大変でしたね。いやあ、実はちょうど秘書を探していたんですよねえ」
ピクリと耳が立った。
「…………殺しでも、汚れ仕事でも、やります」
さすがはチンピラ、察しが良い。
「いやいや! そんな物騒なコト! 映画の見過ぎですよ」
しかし、ぼくが望んでいるのはそんなことじゃない。
「くわえろ」
オオカミの前に仁王立ちになり、ズボンのジッパーを降ろす。面食らったオオカミの顔が、一拍おいてから歪んでいく。怒りか、嫌悪か、はたまた。
「あ、あんた、なにいって……」
戸惑うのも無理はない。よほどの好き者でもない限りは、男のモノを咥えるなんて。
「入院費用は全額負担しよう」
そんなはした金ぐらい、この余興のためならどうってことない。オオカミの目の色が変わる。自分のプライドを取るのか、それとも己を捨てて弟を取るのか、どちらだろうか。
「おっ、お願い、します。しゃぶらせて、ください」
思わず絶頂しかける。なんと美しい兄弟愛だろうか。
ちゅぷっ、はむっ。
覚悟を決めてからというものの、行動に移すのは早かった。
目をつぶり、眉間にしわを寄せながらも恐る恐るちんぽを咥えてみせるオオカミ。時折えずきそうになりながらも、必至に堪えて奉仕をする。
「はあ。そんな辛気くさいツラで舐められたら萎えちまいそうだな」
ぐぷっ、じゅぽっ、くぽっ。
なんとか早く射精させてしまおうとストロークを長く激しくしてみせるが、かえって逆効果。こんな嫌々事務的にされたところで、ちっとも気持ちよくない。
「おい、ワンコロらしく尻尾でも振って媚びてみせろ」
閉じられていた目が開き、キッとぼくを睨み付ける。いいんだぞ、嫌なら今すぐやめたって。
「しゃっ、社長の、アソコ、おいし……んブッ!?」
耳を思い切り手前に引っ張って腰を打ち付けてやる。まだまだ教育が必要なようだ。
「ちんぽ、だろ?」
生意気にもグルグルと唸り声を立て始めたものだから、耳を千切れんばかりにひねってやると、憐れっぽい鼻声に変わる。どっちが上なのか、しっかりとたたき込んでやらないとな。
「社長の、ちんぽ……お、おっきくて、おいしいです」
ぎこちなく振られる尻尾。中に鉄芯でも入っているようだ。
「そうかそうか、ワンコロは人間様のちんぽ好きか?」
口元が恥辱に震え、金色の目が鋭さを増していく。万が一、逆上して噛み切られでもしたら大惨事だ。股間が血まみれになる様を想像してゾッとしてしまう。フェラチオさせているという圧倒的な優位にあるようでいて、一番の弱点を猛獣の口の中に委ねているのだ。
「はい……人間様のちんぽ、しょっぱくてエッチな味……」
くんくんっ。ぬぶぶっ、じゅぷ。
ほう、これはなかなか堂に入っているじゃないか。手綱代わりに掴んでいた耳を解放してやり頭を軽く撫でてやると、今度は滑らかに尻尾が揺れる。
「ああ、いいぞ……いい子にしてたら毎日ちんぽ恵んでやるからな」
ちゅっ、ちゅぷ。にゅくっ、にゅこっ。
これは、なんとも具合がいい。長細い口吻が余すところなくちんぽ全体を包み込んで、ヒリヒリと火傷してしまいそうな熱をもって先走りを吸い上げる。搾乳機を思わせる。
「ああっ、いく、いくぞ! 全部、飲めよっ!」
びゅっ、びゅーっ! びゅるるっ、びゅ。
もう少し楽しみたいという気持ちもあったが、あっけなく果ててしまう。いいさ、楽しみはまだまだこれからなんだから。
「えっと、カイ、ここが兄ちゃんの仕事場です」
スマートフォンの画面にうつる緊張の面持ち。
「あの、ホントに大丈夫なんでしょうね?」
疑り深い声。
「大丈夫だって、そういうシチュエーションのフリだけだから」
あれから数ヶ月。毎日のようにオオカミの口内に射精した。あるときは仕事をしながら机の下に潜り込んで、またあるときは全社員に向けて経営方針を説明する場の演台の中に隠れて、このオオカミはぼくのちんぽを咥えた。だけど、コンビニ弁当も一通り食べ尽くしてしまえば飽きてしまう。新鮮なシチュエーション、新たな刺激を求めて開拓精神がうずいてしまうのだ。
今日思いついたシチュエーションは、オオカミの弟に向けたビデオレターという趣。兄の仕事っぷりを、病室で一人寂しく過ごしている弟くんに見てもらおうというモノだ。スマートフォンで録画をしているものの、あくまでフリだけで、録画もコトが終わればすぐに破棄するからと言いくるめてなんとか実現した。
「じゃあ、お兄ちゃんのお仕事を紹介しよっか?」
ノリノリのぼくとは対照的に、少し呆れた表情を見せるオオカミ。お金を盾に無理矢理付き合わされているとはいえ、最近は少しだけ、ほんの少しだけぼくに軽口だって叩くようになってきた。
「にっ、兄ちゃんは、毎日、はぁっ……おいしそう……」
鼻をひくつかせながら、顔を蕩けさせてしまう。
「ちんぽっ、社長さんのちんぽにご奉仕して、あっ、た、食べたいっ」
説明も半ばに、だらりと舌を垂らしてちんぽに食らいつこうとしたところに腰を引く。不満げな顔。
「こーらっ、ちゃんとカイくんに説明してあげないと」
コスプレもののエロ動画で、しょっぱなから全裸になってしまったら興ざめだろ?
「まっ、まずは、こうやってクンクンして……んっ、うんっ」
盛り上がったズボンの先端にジワリと染みができる。
「それからっ、ちんぽに、いただきますのチューをして」
ちゅっ、ちゅうっ。れるっ、れちゃっ。
窄められた口先で尿道口を覆い、舌先がチロチロと先走りをすくい上げる。
「もっ、もう食べてもいいっ!?」
またもや飛びかかりそうになるが、鼻先を突いて制止する。最近は我慢がきかなくなってしまっているな。
「これから、お兄ちゃんのお口の中にちんぽが入っちゃうんだけど」
涎をボタボタと垂らすオオカミのマズルの上にちんぽを乗せる。金玉に塞がれた鼻の穴が、豚の鳴き声のような音を立てた。
「このぐらいのトコロまで入っちゃうかな。お口の中がちんぽでいっぱいになっちゃうね?」
一応は弟くんに説明している体裁で。本来はこのオオカミに説明させたかったのだが、鼻先に乗せられたちんぽを寄り目がちに凝視して鼻息を荒くするだけで、もうマトモに喋れそうにはなかった。
「はあ……それじゃあ、お兄ちゃんに実演してもらおうか」
待ってましたとばかりに輝く目。
「カイっ、お、お兄ちゃんがちんぽ食べてるところ、よく見るんだぞっ」
ちゅぷぷ……ぶぷっ。
「おっきいちんぽ……おいしいっ……こうやって舌で、裏側とかっ」
ぴちゅっ、ぺちゃ、べろっ。
「カリ首の、つなぎ目のトコロ、ぺろぺろして」
ぐぷっ、ぐぶ、ぐっぽ。
「あっ、あ、あっ、ちんぽっ、ちんぽもぐもぐするんだぞっ」
口内の肉襞が擦りあげてくる。毎日味わっているもののはずなのに、今日は一段と欲張りだ。
「ちんぽおいしい?」
頭を撫でてやると、即座に尻尾が埃を巻き上げる。
「おいひいっ! んっ、ぐっ、口の中で、ど、どんどんエッチな味になってる……」
にゅぽっ、にゅこ、ぬこ、ぬこっ。
「ああいきそ……カイくんに、ちんぽミルクごくごくするところ見てもらおうね」
びゅるるっ! ごくっ。びゅーっ、ごくっんくっ。びゅっぴゅ。こく。
久々にハッスルしてしまった。心臓がまだバクバクと叩かれていて目眩をおこしてしまいそう。
「いやあ、お兄ちゃんの仕事っぷり、よかったねえ」
ようやく息が整ったころに、そう声をかけてみるとオオカミは呆れたようなジト目でこちらを見上げる。いつまでそのプレイをしているつもりなのだ、と。
ちょっと可哀想な気もするが、種明かしといくか。机の上に乗っているモニタをぐるりとひっくり返してオオカミの方に向けてやる。
「んなっ!? ちょっ、な、なな、なんっ、なんで!?」
モニタの向こうには、生中継された兄の痴態に顔を真っ赤にして、股間を大きくしている弟くんの姿があった。
ボタ、ポタ……。
ズボンから染みだした精液が床を打ち付けていた。
栄枯盛衰。盛者必衰。
経営の知識もセンスもないヤツが、たまたま手にした幸運だけでいつまでも過ごせるわけがない。
莫大な借金を抱え、手には一箱の段ボールを抱え、かつては自分のものだったビルの前で立ちすくむ。
金の切れ目が縁の切れ目。あれほど金魚の糞のように付きまとっていた部下たちも、社長の座を追われて無一文になった自分には見向きもしない。警備員ですら「早く立ち去れ」と言わんばかりに睨み付けてくる。
「なあ」
見知ったオオカミの顔。隣には、小さなオオカミ。
憐れな末路を笑いに来たか、罵りに来たか、どちらでもいいさ。
「アンタは滅茶苦茶なヤローだったけど、コイツの命の恩人だ」
ただの気まぐれ。猛獣を従わせるための人質。恩に着せるつもりもない。
「ようやく退院できたんだ。だからもうこの街を出て、どこか田舎で暮らそうと思う」
義理堅くお別れのご挨拶ってことか、ワンコロらしいな。そう皮肉りかけてやめた。ただただ頷いて、それから笑顔を作って、「よかったな」そういって見送ろうと。今更善人ぶりたい訳でなく、どうしてか、心の底からそうしたいって思ったんだ。
「それで、だ、な……アンタさえよければ、一緒に来ないか?」
鼻先をポリポリとかくその顔からは、騙してやろうとか、陥れてやろうとか、そんな感情は欠片も感じられなかった。いいんだろうか。伸ばされたこの手を、掴んでも。
「にーちゃん、昨日もちんぽ食べたいっていってひとりでエッチなことしてたもんね!」
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自信も根拠もないけれど、きっと上手くやれる。なぜだかそう確信していた。
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