僕はいかにしてオオカミくんとイチャイチャしたのか。(アイデアメモ)

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キミと交尾がシたいんですっ!

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 キミと交尾がシたいんですっ!

 とある動物園での昼下がり。
「ねえお父さん見て見て!オオカミさんいるー!」
「ほんとだねぇ、わんちゃんみたいで可愛いね」
「あっちの小さくて白い方がお母さんオオカミかな?」
「黒い方がお父さんかな、仲のいい夫婦だね」

 一方、オリの中。
「……だってよ?」
「もう!僕オスなのにっ!」
「いいじゃねえかよ、実際ちっこくて可愛いんだから」
 そう言って大きい方のオオカミがもう一方に擦り寄る。
「オレら、夫婦に見られちゃったなぁ」
 にやけ顔で先ほどの親子の言葉を噛みしめるオオカミ。
「な、なあ、夫婦だったらよ……」
 小さいオオカミは眉間にしわを寄せて怪訝な顔をする。
「こ、交尾とかしても良いよな?なっ?」
 そう言いながら、鼻息も荒く興奮した様子でマウンティングしようとする。

 がぶり。

「いってえぇぇ!!」
「近寄らないで!バカ!変態っ!」
「んだよ、つれねぇなぁ……」
 噛まれた鼻先をさすりながらも、どこか嬉しそうなオオカミ。
 かたや噛み付いた方のオオカミは、ふいと顔を背けて怒ったそぶり。でも、僅かに揺れている尻尾を悟られないように……
「あーっ!白いオオカミさん尻尾ふりふりしてる!」
「なんだよやっぱり交尾した……ぐぎゃっ!」
 今度は加減無しで噛み付くと、なんとも情けない声があがった。


 閉園のアナウンスが流れる。今日も一日が終わる。2匹のオオカミは、ぞろぞろと帰っていく来園者たちにサービスとばかりにいつものように遠吠えで挨拶をする。
「シロくん、クロくん、今日も一日おつかれさま」
 そう言ってオリに入ってきたのは飼育員の犬井さんだ。
「それにしても二人とも、あんまり喧嘩しちゃダメだよ?今日もお客さんに言われたんだから」
「ぼ、僕は別にケンカなんて……クロが悪いんですっ!」
「だってよぅ、シロが構ってくれねぇから」
「はいはい、わかったわかった」
 いつもの見慣れた光景に、犬井さんは動じない。
「じゃあ掃除するから、奥の方に行っててね」
「はぁーい……」
 力無く答えると、獣舎の奥にある寝床へと足を進めていく。
「あ、そうだ」
 シロが足を止めて振り返る。
「あの、犬井さん、あとで二人きりでお話がしたくて」
 後ろの方でクロがオレは除け者かとぎゃあぎゃあ騒いでいるが気にしない。
「うん、わかった。あとでね」


 すっかり日も落ちて静まり返った運動場に行くと、犬井さんが待っていた。
「それで、話ってなにかな?」
「あの、クロの事で……」
 犬井さんの表情が少し硬くなった。
「えと、その、なんというか」
 もじもじとしながら言い淀むシロ。
「大丈夫、僕たちしか居ないし、誰にも言わないから安心して」
 大きく息を吸った後、意を決して口を開く。
「あの、オス同士でも……番いつがいになれるんでしょうかっ!?」
 犬井さんは目を丸くした後、肩を震えさせる。
「ぷっ、くく……」
「ちょっと!笑い事じゃ無いですよっ!」
「ごめんごめん、あまりに意外だったから」
 謝罪の言葉を口にしながらも、おかしくてたまらないといった様子だ。
 ひとしきり笑った後、犬井さんはふくれっ面のシロの横に座って、空を見上げながらゆっくりと語りかけた。
「野生動物でも、オス同士がパートナーになるのはそんなに珍しいことじゃないよ」
「ほっ、ホントですか!」
 思わず耳がピンと立つ。
「うん、それに海外ではオオカミとクマがパートナーになった例だってあるんだよ」
 オオカミとクマ……なんだか凄い組み合わせだな。
「シロくんは、クロくんのことが好き?」
「……クロは、ガサツで無神経で、自分勝手だしすぐに僕とくっつきたがるし」
「でも」
「うん」
「そんな所が好きなんです……僕、変ですよね」
 うーん、とうなった後、犬井さんはシロの頭を優しく撫でた。
「ほんとはね、二人にはそれぞれお嫁さんをもらって繁殖してくれたら嬉しかったんだけど」
「あ、ご、ごめんなさい……」
「でも、僕は応援するよ。君たちが幸せになってくれるのが一番だから」


「なあシロ、犬井と何の話してたんだ?」
 寝床に戻った僕に、クロが話しかけてくる。
「えへへ、秘密!」
「ちぇーっ、なんだよぅ」
 ちょっとだけクロが可哀想だったから、僕はクロの横に寝そべる。
「今日は一緒に寝てあげてもいいよ……でも変なことしないでよね!」
「わかってるってぇ」
 僕はクロの大きないびきを聞きながら目を閉じた。

 という感じの動物園を舞台にしたラブコメ調のお話。
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