地縛霊おじさんは今日も安らかに眠れない

naimaze

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第15話 屋上プール

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 ……どうしてこうなった。

「あはは、それそれっ、ほら、礼二さんもやられてばかりじゃなくて、やり返してきていいんですよっ」

「ニャハハ、礼二くん、霊体化しても無駄ニャー! こっちからは霊体化した水が飛んで行くニャー!」

 バシャバシャと、右から、左から、水しぶきの音と共に跳ねる水が、夏の暑い日差しを受けて煌めき、乱反射し、ただでさえ明るい昼の空を賑やかに飾り立てる。

 遠くから聞こえてくるセミの鳴き声が夏らしい背景曲だとするならば、この水しぶきの音は夏らしい効果音といったところだろう。

 もし聞こえてくる音がそれだけであれば、ほんの少しの清涼感が加わった暑い夏という雰囲気から抜け出すことは出来ないだろうが、そこへ二人の少女の笑い声が加わることで、何となく、楽しい夏休みを彷彿とさせるような音へと変貌する。

 そう、世間は今、夏休みシーズン真っ只中だ。

 社会に出た独身男性にはあまり関係のない行事だが、小・中・高・大学生は皆、大量の宿題と引き換えに、長い夏休みを獲得し、家族や友達と自由な時間をエンジョイしていることだろう。

 そして、その学生という身分を持つ者が、身近に一人……。

「きゃっ、冷たいっ、もう、ネココさんずるいですよ、こっちの水は当たらないのに、そっちの水は当たるなんて」

 そこら中にいくつも設置されているビニールプールを行ったり来たりしながら、もう一人の、見た目だけは彼女より下の学生に見える少女と、水を掛け合っている。

 ……といっても、彼女の飛ばす水は少女の身体をすり抜けてしまうので、一方的にかけられているだけだが。

 まぁ、そういった少々不可思議な現象は起こっているものの、遠目からこの光景だけ見れば、何もおかしなことは無い、女子高生の姉と、小中学生くらいの妹の、何でもない、夏休みの一コマに見えるだろう……。

 実に微笑ましい、どこにでもある、楽しそうな夏休みの光景だ……。

 ……ただ……この場所が、廃ビルの屋上だという点を除けば。

「お前ら、プールで遊びたいなら市民プールにでも行けぇぇええ!!!」

 そう、ここは、廃ビルの屋上……。

 この少女たちは、誰も来なくなったその廃ビルの広い屋上に、カラフルなビニールプールをこれでもかといくつも広げて、わいわいキャッキャと、楽しそうに水を掛け合い、遊んでいるのだ。

「えー、別にいいでしょー、プールを用意したのはネココにゃんだし」

「そうですよ、それに、礼二さん、市民プールまで行けないじゃないですか」

「いや、別に俺はそもそもプールになんか……」

 確かに俺は地縛霊だから、一緒に行こうと誘われたところで市民プールや巨大プール施設には行けないが、もう30代後半のおじさんだ……誘われたところで別にそんな場所に好き好んでいきたいとは思わない……思わないのだが……。

 俺はそう言いながらも、それに反論するようにこちらへ詰め寄ってくる少女に気圧されて、思わずたじろいでしまう……。

 別に、可愛らしく頬を膨らませている彼女たちの顔が怖いというわけでは無いのだが……なんというか、それでも、威圧感というか……圧迫感というか……すごいのだ。

 まぁ、ネココの方に関しては、実年齢はともかく、見た目だけは本当にそのまま子供のような見た目なので、全く気にすることはないのだが……。

 静子ちゃんの方は、制服の上からでも分かっていたことではあるが、今はプールで遊ぶために水着を着ているせいで、溢れんばかりで、今にもはちきれそうで……もう、目のやり場しかない。

 そんな風に迫られたら、俺でなくとも、男なら誰でも、言いなりになってしまうのではないだろうか……。

 そうだとも……だから、俺が、流されるままに、ネココから渡された(どこから持ってきた?)水着を着ることになったとしても、それは決して俺のせいじゃない……強いて言うのであれば……。

 ……この暑い夏が悪い!

「……というか、急に二人で遊びに来たと思ったら、いつの間にやら屋上にこんなものを設置して遊び始めて……お前ら、いつの間にそんなに仲良くなったんだ?」

 そんなこんなで、俺も水着に着替えて、年齢を弁えずひとしきり遊んだ後、休憩がてら、これまたどこから持ってきたのか、ネココが屋上の隅に設置した、パラソルセットの下で、水分補給をしながらそんな会話を始める。

 先日、この間二人が出くわした時、確かに、それなりに気が合いそうな雰囲気を感じはしたが、まさか一緒に行動するまで仲が良くなっていたとは思わなかった。

「うーん、最近?」

「そうですね……というか、そういえばまだお伝えしていませんでしたっけ?」

「何を?」

 あれからも、静子ちゃんとは殆ど毎日のように会ってはいるが、別に彼女から最近ネココと遊んでいるというような話は聞いていない。

 静子ちゃんは生きた人間で、ネココは既に命の無い幽霊ではあるものの、こうしてお互いに知覚できて喋れている以上、確かに、友達になれないことは無いと思うが、女の子同士って言うのは、そんなにすぐに仲良くなったりするものなのだろうか。

 うーん、まぁ、男同士の友情とは、距離感が違うのかもな……という想像までは、辿り着いたが。

「ネココさん、今、うちに一緒に住んでます」

「……え? えぇぇえええええ!?!?」

 どうやら女の子同士の距離感というのは、俺の想像している以上の代物だったようだ……。

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