地縛霊おじさんは今日も安らかに眠れない

naimaze

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第16話 パジャマパーティー

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 ……どうしてこうなった。(2回目)

「へー、それで美鈴さんは警察官になったんですねー」

「そうですっ、だから私は、どんな小さな悪も見逃しませんっ」

「んぐー! むぐぐぐぐー!」

 あの後も、休憩を挟みつつ、日が落ちて涼しくなってくるまで、屋上に設置したビニールプールで遊んだ俺たちは、その身体に心地よい疲れを感じながら、とりあえず俺の部屋に戻ってきたのだが……。

 そこから数時間経った現在……何故か俺の部屋にはコスプレ警官の苦掘 美鈴にがほり みすずと、元職場の後輩である管野 錬くだの れんが増えていた。

 ……片方は他の女子二人と一緒にパジャマ姿で、もう片方は布団でくるまれた上で縛り上げられた簀巻き姿で。

 ちなみにパジャマとは言っても、トップスとボトムスに分かれている一般的なものでも、ネグリジェのようなセクシーなものでもなく、なんか動物の着ぐるみのようなタイプのアレだ。

 ネココはもちろん猫のパジャマで、静子ちゃんは牛のパジャマ、追加で現れた美鈴ちゃんは犬のパジャマを着ている。

 例にもれず、この三着のパジャマもネココがどこからともなく取り出した代物なわけだが……取り出した本人の分はともかく、よくもまぁ、人の分まで、しかもここまでピッタリよく似合うパジャマを持っていたものだな……。

「で、でも……小さな野良猫なら見逃してくれてもいいんじゃニャいかニャ?」

「野良猫ちゃんなら、保健所に連れて行きます」

「ニャンと!? ネココ……処分されちゃうニャ!?」

「えー! そんなの酷いです! 可愛そうです!」

「大丈夫ですよ、最近は保健所でも出来るだけ処分はしたくないという思いが強まっていて、地域によってはTNRという活動を進めていたりしますから」

「てぃ……てぃー、えぬ、あーる……? って、何かニャ?」

「TNRというのは、野良猫ちゃんを保護した後、不妊・去勢手術を施してから、元の場所に帰す取り組みですね」

「!? ネココ、手術されるニャ!?」

「ついでに、この野良犬くんも保健所に連れて行って見ましょうか……野良犬くんのTNR活動は聞いたことがありませんが、何とか私の方で去勢手術だけで帰してもらえないか掛け合って見ましょう」

「むぐ!? んぐー! んぐー!」

 そんな風に、涙目で簀巻きになっている後輩に対して、蔑むような視線を向けながら物騒な冗談を言っているのはともかくとして、遠目からこの光景を見れば、女子三人によるただのパジャマパーティーだ。

 とは言っても、三人のうち一人は、見た目は一番若くとも、中身が女子なのか怪しいところだし、一人は心身ともに大人なので、流石に母親と言うほどの歳では無いにせよ、女子二人の保護者と言った雰囲気ではあるが……。

 ……まぁ、そうやって思ったことをうっかり口に出してしまった男の末路を目の前で見ているので、頭の中で思い浮かんでも口には出さないでおこう。

 女性が三人集まったら姦しいとはよく聞くが、警官の美鈴さんと女子高生の静子ちゃんは、今日が初対面だって言うのに、よくもまぁ会ってすぐにこれだけ仲良くなれるものだな……この女の子同士のコミュニケーション能力の高さは本当に尊敬する。

 うん、尊敬はする……するのだが……。

「パジャマパーティーするなら、別の場所でやってくれませんかねぇ……?」

 そう、女子三人がパジャマ姿で仲良く談笑しているのは、俺の部屋なのだ。

 そして、その部屋の主であるはずの俺は、簀巻きにはされていないものの、部屋の隅で後ろ手に手錠をつけられて拘束されている……。

「というか、せめてこの手錠を外してもらいたいんですけど……」

「却下します! か弱い女の子が寝泊まりする場所で、男の人を自由の身で放置することなんて出来ません!」

「いや、ここ、そもそも女の子が寝泊まりする場所じゃなくて、俺の部屋……」

「礼二くん、諦めるニャ、今日はここは、ネココたちのパジャマパーティー会場ニャ」

「え、えぇ……いやちょっと、なぁ、 静子ちゃんからも何か言って……」

「手錠で捕まっている礼二さんも素敵ですぅー」

「ダメだこの子、早く何とかしないと……おまわりさーん!」

「呼びましたか?」

「あ、おまわりさんもグルだった……」

 もうだめだ、この世界は終わりだ……。

 とまぁ、なんというか……。
 廃ビルの一室で、広げた段ボールの上に布団を敷いて、パジャマ姿の女子三人が仲良く談笑している横で、簀巻きになっている男が一人、後ろ手で手錠を掛けられている男が一人という、なんともカオスな状態になっているわけだが……。
 どうしてこんなことになっているかというと……その原因は全て、現役女子高生、静子ちゃんにある。

 よく分からないうちに始まって、流されるように一緒に遊んでしまった、屋上でのプール遊びが終わった後、とりあえず疲れた体を休憩させるために、いったん俺の部屋に集まったのはいいんだが……。
 いつもだったら休日でも夜になる前には帰っていた静子ちゃんが、今日は、いつになっても帰る気配がなかった。

 どうしてそうなったのかはともかく、どうやら今は一緒に住んでいるらしいネココと二人で帰るのであれば、一人で帰るよりは安全か、なんていう考えが思い浮かんだが、よく考えたら、ネココは普通の人には見えないし、もし見えたとしても、見た目は静子ちゃんよりも幼いから、何の解決にもならんやん、と思い直し……。

「静子ちゃん、暗くなってきたし、そろそろ帰った方がいいんじゃない?」

 と声を掛ければ。

「へ? 私、今日はここに泊まりますよ?」

 と、さもそれが当然のような、何を分かり切ったことを聞いているんだと、まるでそんな質問を投げかける俺の方が変だとでも言うように、そんな言葉を返してきたのだ……。

「いやいやいや、聞いてないよ!? っていうか、ダメだよ!?」

「まぁまぁ、いいじゃないですか、夏休みですし」

「いやいや、夏休みにそんな免罪符的な効果は無いから」

「でもほら、部活動の夏合宿とかあるじゃないですか」

「静子ちゃん、部活には入ってないって言ってなかったっけ……?」

「いいえ? ちゃんと部活動には所属していますよ?」

「……なに部?」

「帰宅部です♪」

「なら帰れぇぇえええええ!!!」

 まぁ、もちろん俺はそんな風に反対したのだが、その後もずっと、ああ言えばこう言うなハチャメチャ理論で、のらりくらりと躱され続けて、その横でネココがせっせと布団を増設して寝床の準備を進めていき……。

 三人分の寝床が整うと、パジャマに着替えるから部屋を出ているようにと追い出され……。

「だから、そこ、俺の部屋なんだけど……」

 そんな俺の声が、薄暗い廊下に空しく響いた……。

 ……そして、そんなタイミングで。

「せんぱーい! 助けてくださーい!!」

「こらー! 管野 錬! 待ちなさーい!!」

 コスプレ警官に追われた後輩が走ってきて……。

「ちょっと部屋に匿ってください!!」

「あ、今は……」

 そのまま俺の部屋が開け放たれ……。

「「きゃぁぁああああああ!!!!!」」

 そんな叫び声と共に、様々な物が飛び交う音が聞こえてきた……。

「ああ……今夜も寝るのが遅くなりそうだな……」

 俺は「何事!?」という声と共に追加で俺の部屋に入っていくコスプレ警官を諦めた表情で見送ると、耳を塞ぎ、目を閉じ、その場でしゃがみこんで出来るだけ小さく目立たない態勢を取りながら、後輩と、自分の部屋の冥福を祈った……。
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