地縛霊おじさんは今日も安らかに眠れない

naimaze

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第18話 懺悔

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「じゃあ礼二さん、また今度」

「ああ、気を付けて帰れよ」

「ふふん、ネココがついているから心配いらないニャ!」

「そうだな、じゃあ、二人をよろしくお願いします、美鈴さん」

「はい、静子さんとネココさんの護衛は本官にお任せください」

「ネココは戦力外ニャ!?」

 突発的に開催されたパジャマパーティーから夜が明け、俺はネココや美鈴さんと一緒に自宅へと帰っていく静子ちゃんを見送った。

 それでも普通に生きている人間には、静子ちゃんが一人で帰っているように見えるだろうが、今はもう人通りのある時間帯だし、美鈴さんが送っているのは、それが警察官である彼女の仕事だからという理由の方が強いだろう。

 実際、彼女は現実世界の人や物体に直接触れることは出来ないので、もし護衛としての役割が必要な場面に遭遇したとしても、活躍するのはネココの方になるだろうからな。

「心配ですか?」

「まぁ、少しはな……だけど、今はネココもついてるし、本当に一人でここを行き来していた時よりは不安は少ない」

 そんなことを考えながら、遠くなっていく彼女たちの背中を眺めている俺に、後ろから地方公務員の宇井さんが声をかけてきたので、俺は今の正直な気持ちを答える。

 彼女も同じように、ポルターガイスト能力は持っていないので、一緒について行っても役に立たないということで、見送る側に回った……ということだが、多分、それだけが理由ではないのだろう。

「……少し、話をしてもよろしいですか?」

「……ああ」

 だから俺は、きっとその話とやらが、彼女がここに残った本当の理由なのだろうと察して、一緒に俺の部屋まで戻っていった……。


「粗茶ですが、どうぞ」

「ありがとうございます」

 部屋まで戻ると、俺はいつものルーチンでお茶を入れて、ちゃぶ台に置く。

 今、この場にいるのは、昨日と変わらない姿の俺と、ピシッとしたスーツ姿に着替えている宇井さんだけ……昨日、パジャマ姿の彼女を見ているだけに、何だか微妙に気まずく感じているのは、俺だけだろうか。

 ちなみに、タクシー役のキーヤンこと佐藤 吉一郎さとう きいちろうは、外で自分の車をメンテナンスしながら、タバコを吸っている。

 そして、昨日、美鈴さんに追われて俺の家に来たものの、ずっと布団で簀巻きにされていた錬は、朝起きて確認した時には既にいなかった。

 ロープで縛られた布団だけを残して、中身は空……きっと、拘束の際にネココに霊体化されていた布団やロープを、彼自身のポルターガイスト能力で実体化させて、静かに通り抜けて出て行ったのだろう。
 思い返してみると、俺たちがトランプで遊びだした時には静かになっていたので、あの時は寝たのかと思っていたが、もうその時には逃げ出していたのかもしれない。

 ズズズ、と、二人分のお茶を飲む音が部屋に響き、コトン、と、ちゃぶ台に湯呑を置く音もほぼ同時に聞こえた。

 前回の俺が住所登録の手続きをした時もそうだったが、宇井さんは話を溜めて、気まずい空気を作るのが趣味なのだろうか……。
 話があると言ってきたのは彼女の方なので、それならさっさと彼女の方から話を始めて欲しいのだが……。

「あのー……」

「静子さんの事ですが……」

 沈黙に耐えきれなくなった俺が発した声と、やっと話始めた宇井さんの声が被る。
 気まずいことこの上ないが、まぁ話が進みそうなので気にしない方向でいこう。

「静子さんの事ですが、彼女とあなたはどういった関係なのでしょうか?」

「……」

 何となく、そんな質問が飛んでくるんじゃないかと思っていた俺に、予想通りの質問が飛んできたが、まだ明確な回答を用意できていなかったので、少し言葉に詰まってしまう。

 見た目は俺より若そうだったが、美鈴さんも、宇井さんも公務員という立派な職業に就いている社会人で、大人だ。
 おそらく、昨日の時点でこの話題を出したかったのだろうが、空気を読んで、静子ちゃんの笑顔を壊さないことを優先して行動してくれたのだろう。
 質問をするタイミングを伸ばしてくれたとはいえ、美鈴さんも宇井さんも、職業的に、この辺りのことは聞かないといけないだろうからな……美鈴さんが静子ちゃんを送って、宇井さんがここに残ると言った時点で、この状況になることは何となく想像していた。

「……」

 宇井さんは、沈黙を保っている俺に対して、問い詰めたり、返答を急がせたりすることなく、ただ黙って、俺が自主的に話始めるのを待っている。

 これで相手が強面の刑事とかだったら、取調室でカツ丼でも出されているような気分にでもなったのかもしれないが、彼女からは不思議とそんな威圧感は全く感じず、むしろ、母親に優しく見つめられているような感覚さえしてきた。

 地方公務員と言っても色々な仕事があるし、もしかすると彼女は生前、そういったスキルが必要な仕事をしていたりしたのだろうか……。

「ちょっと頭の中で話が整理できてなくて、時系列がバラバラになったり、冗長になったりするかもしれないが、それでもいいか?」

「構いません」

「そうか、じゃあ、まずは……」

 そうして、俺は静かに、つらつらと、取り留めなく、俺がまだ生きていた頃に静子ちゃんとどんな出会い方をしたかとか、俺が命を落としてから彼女とどんな出会いをしたかとか、その後、彼女とどんな交流を持ったかといった話を始めた……。

 まるで、教会の懺悔室で、自分の罪を告白するかのように……。
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