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第22話 格差社会
しおりを挟む「あー、くそ重い……」
夏の夜。耳をすませば鈴虫や蛙の合唱が聞こえる、田舎と言われれば田舎の部類に入るのかもしれない発展途上地域で、俺は汗を流しながら、せっせとコンクリートブロックを運んでいた。
簡単なブロック塀を作る時に使われたりする、長方形の立方体に三つ穴が開いている感じのあれだ。
おそらく、廃ビルの敷地をぐるりと囲う形でブロック塀を作る材料として使われようとしていたものが、廃ビル自体の建築が中止になった時に片付けられず放置されたのだろう。
まだ三段くらいしか積みあがっていないブロック塀の脇に未使用のコンクリートブロックが山積みになっていたので、4つほど拝借して、どうにか頑張って両手で抱えて運んでいる。
ひとつあたり10kgくらいだから、全部合計すると40kgか? 背の低い細身の女性くらいあるんじゃなかろうか……。
そしてなぜ俺がこんな重い思いをして頑張っているのかというと、言わずもがな、コンクリート剥き出しの廃ビル屋内にテントを立てようとしているグラビアアイドルを陰ながら手助けしようとしているわけだが……。
彼女はたしかに背は少し低めでスタイルは良いが、出るところもきちんと立派に出ているので、彼女を抱きかかえるとしたら今抱えているコンクリートブロックを運ぶより少し大変かもしれないな……色んな意味で。
社会人になってから本格的な運動とかは全くしてこなかったし、幽霊になってからでは、いくら筋トレしても筋肉がつかないらしいので、こうして合計40kgのブロックを運ぶだけで体力不足でバテテしまうのも仕方ないだろう。
その道のりも廃ビルの敷地から外に出るまでは行かないものの、何せその廃ビルの敷地というのが、俺が普段過ごしている場所も含めてビルが三棟建ち並んでいるような広い敷地だから、その端の方まで歩くとなると俺の寝泊まりしている真ん中のビルまでそれなりに距離がある。
「あれ? 先輩、なんか大変そうっすね」
そんな風に俺がぜえはぁ言いながら、蒸し暑い夏の夜の駐車場を、あと少しで廃ビルの入り口まで辿り着くといったところまで歩いたあたりで、その背中に声がかけられた。
元々、俺がどうにかして困っている彼女を助けられないかと唸っていたところに、どこかからコンクリートブロックを運んでそのあたりに転がしておけば、それでロープを固定出来ることを思いつくのではないかと提案してきたのは後輩の飲んだくれだ。
そしてそいつ自身もその提案と同時にどこかにコンクリートブロックを探しに行っていたので、俺とは別の場所から使えそうなものを持ってきたのだろう。
「そりゃあお前、いくら大人でもコンクリブロックを一気に4つも運んでたらキツイに決まって……って、えぇぇええぇぇええええ!?!?」
自分が運動不足だからということは棚に上げて、持っているものが重すぎるのだと言うアピールをしながら後ろを振り返ると、そこには、それ1つの重さでも俺が持っているもの2つ分以上の重さはありそうなコンクリートブロックを、両肩に1つずつ、合計2つ担いで、涼しい顔で平然と立っている後輩の姿が……。
こちらもよく見かけるものではあるが、ブロック塀を立てる時に使うものではなく、お店の宣伝などを目的に店頭に掲げられるのぼり旗を立てるときに使うコンクリートスタンドだ。
いったいどこから運んできたのか、1つ25kg以上はあるだろう、かなりがっしりしたタイプだから、合計50kgを超えるはずだが……40kgでぜぇはぁ言っている俺とそう変わらない体格のこいつの、一体どこに、それを平気で担げるだけの力があるんだ……。
「? どうしたんすか?」
「いやいや、どうしたってお前……それ、重くないのか?」
「は? 何言ってんすか先輩……霊体化した物体に重さなんか無いっすよ?」
「……」
「……」
「このチート野郎ぉぉおおおぉおおおお!!!」
「うぉっ、びっくりした」
そうか、そういえば、言われてみればそうだった……。
俺は物を霊体化して運ぶんじゃなくて、自分自身が半実体化して運ぶから、物の重さは変わらないが、こいつやネココは、物の方を霊体化して運ぶから、重さも何もないんだったな……。
くそっ、物は重いし、タンスの角に足の小指はぶつけるし、俺の方のポルターガイスト能力は、つくづく良いところが無いな……。
しかも、こいつは敷地の外にも物を漁りに行けるご身分だが、俺はこの廃ビルの敷地から外には出られない。
別に他の世界を知らなきゃ、そういう物かと受け入れられなくもないくらいのものではあるが、知ってしまうと他人を羨まずにはいられない……俺がいったい生前どんな罪を犯してこんな能力になっているってんだ……。
「はぁ……まぁいい、このまま悩んでても手が疲れるだけだし、さっさと運んで、るあちゃんの近くに置いておこう……あと、お前は色々と終わったらそれ、ちゃんと元の場所に戻しておけよ」
「うぃーっす」
俺はそうして、幽霊の格差を全身に感じつつ、引き続き1歩1歩踏ん張りながらるあちゃんの元へと戻っていった。
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