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第41話 進路相談
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「……というわけで、こうして昼間に集まってもらったわけだが」
太陽がほぼ真上にある、真夏のお昼時。
多くの幽霊が活動を控え、彼らの本来の活動時間である夜に備えて就寝していることが多いらしい時間帯。
最近、何だかんだ顔を合わせる機会が多くなった面々が、若干たまり場になりつつある廃ビルの俺の部屋へと集まっていた。
「わたしのために、わざわざすみません」
ここに集まった理由は、ほかならぬ、そんな風に本当に申し訳なさそうに謝っている静子ちゃんのためではあるのだが、俺に声を掛けられて集まってくれたこのメンバーの中に、彼女を批判するような人物は一人もいない。
現実の社会だとなかなかそうはいかないと思うが、幽霊社会だと仕事をしている社会人でも意外と交流を大事にするのか、それともたまたま自分の周りにいる連中がそういう性格だったのか、呼ばれれば暇つぶしに出てくる人物が多いようだ。
……まぁ、今日に限っては、その条件に当てはまらない人物も1人紛れ込んでいるんだが。
「あはは……私はこの間の撮影が無事に放送されて、ちょっとそのお礼を言いにきたら、なんか流れで参加させてもらえることになっただけなんですけど……むしろお邪魔でしたら申し訳ないです」
「そんなことは無いですっ、是非、るあさんのお仕事の話も聞かせてください」
見慣れない人物の中で恐縮しているのは、他のメンバーと比べると色々な意味で珍しい、生きている人間であり、現役のグラビアアイドルである、平井 るあちゃん。
本人がそう言っているように、彼女がここへ訪れたのは偶然で、どうやらこの間この廃ビルでソロキャンプをしていた映像が、無事に世間のお茶の間へ放送されたらしく、その報告と、協力してくれたお礼にといって、お菓子を持って遊びにきてくれたようだ。
だが、訪ねてみたら、そこには俺以外にも見知らぬ人物が沢山いて、しかも、その中の静子ちゃん以外が全員幽霊だと言ったからか、思考回路がショートしたらしい彼女は、何故か目をグルグル回しながら全員に名刺を配り始めた。
最近のグラビアアイドルは、一般人にも渡せるライトな名刺を持ち歩いているらしく、何やらカラフルで可愛らしい名刺をもらった。
俺やネココ、錬以外は、霊体化されていない物質を直接は受け取れないので、渡したはずの名刺がその場に落ちてしまうという現象に遭遇し、それがさらに彼女の混乱を加速させたようで、色々と事情を説明して落ち着かせるまで少し大変だったのだが……。
……まぁ、最近まで幽霊なんて見える体質じゃなかった人が、いきなり幽霊のたまり場に遭遇したら、普通は混乱するよな。
この中で普通に過ごしている静子ちゃんの方が、その環境も含めていろいろと常識外れなのだ。
ちなみに、るあちゃんの廃ビルキャンプ映像は、予想通り、ホラー枠ではなく、一見ホラーっぽいバラエティ枠として放送され、別途スタジオで撮影された、今回のキャンプで使用したテントや非常食を紹介するというオチを追加し、スポンサーの商品をダイレクトに宣伝する、スポンサー贔屓の映像に仕上がったらしい。
確かに、開かずの扉を開いても何もありませんでした。では、オチが弱いからな……二段構えの落ちでギャグに昇華させた方がいいと判断されたんだろう。
「……それで、改めて言うが、今日集まってもらったのは、静子ちゃんの進路について、皆も一緒に相談に乗って欲しいと思ったからだ……俺だけだと情報に偏りがあるからな、せっかくなら色々な職業の話を聞いてもらおうと思ってな」
「確かに、進路を決めるのに色々な職業の人から話を聞くのがいいことだってのは分かるっすけど、なんで先輩がそこまで気にかけるっすか? 静子ちゃんからお願いされたならともかく、わざわざ先輩が主導でみんなを集めるとか……小さな親切、大きなお世話、ってやつじゃないっすかねー?」
俺の説明に対して、錬が面倒くさそうに反論したように、静子ちゃんの進路は、静子ちゃん自身が自分で決めるべきだ。
今回みたいに、その選択肢を増やすために色々な職業の話を聞かせてあげるというのは、確かにいい刺激にはなるだろうが、本人がそれを望まないなら、無理に手助けするのも余計なお世話になりかねないだろう。
「そうだな……俺も、こんなものを見なければ、ここまでの行動は起こさなかっただろう……」
だが、彼女が新学期の授業に向けた予習のために持ち込んだ教科書の隙間からヒラリと舞い落ちた、『希望進路』と書かれたその1枚のプリントを見たら、行動を起こさずにはいられなかったのだ。
俺は、俺をこんな行動に掻き立てたその1枚の紙を、そっと、ちゃぶ台の上に広げた……。
わざわざチェックマークをつけて選ぶ二択として印刷されている『進学』も『就職』も二重線で消され、その下に『礼二さんのお嫁さん』と書かれた、その紙を……。
「「あぁ……」」
幽霊がそれなりに集まっている影響で、クーラーの無い部屋にしては涼しくなっているこの廃ビルの一室で……ちゃぶ台に置かれたその紙を見た全員が、同じ反応をした……。
太陽がほぼ真上にある、真夏のお昼時。
多くの幽霊が活動を控え、彼らの本来の活動時間である夜に備えて就寝していることが多いらしい時間帯。
最近、何だかんだ顔を合わせる機会が多くなった面々が、若干たまり場になりつつある廃ビルの俺の部屋へと集まっていた。
「わたしのために、わざわざすみません」
ここに集まった理由は、ほかならぬ、そんな風に本当に申し訳なさそうに謝っている静子ちゃんのためではあるのだが、俺に声を掛けられて集まってくれたこのメンバーの中に、彼女を批判するような人物は一人もいない。
現実の社会だとなかなかそうはいかないと思うが、幽霊社会だと仕事をしている社会人でも意外と交流を大事にするのか、それともたまたま自分の周りにいる連中がそういう性格だったのか、呼ばれれば暇つぶしに出てくる人物が多いようだ。
……まぁ、今日に限っては、その条件に当てはまらない人物も1人紛れ込んでいるんだが。
「あはは……私はこの間の撮影が無事に放送されて、ちょっとそのお礼を言いにきたら、なんか流れで参加させてもらえることになっただけなんですけど……むしろお邪魔でしたら申し訳ないです」
「そんなことは無いですっ、是非、るあさんのお仕事の話も聞かせてください」
見慣れない人物の中で恐縮しているのは、他のメンバーと比べると色々な意味で珍しい、生きている人間であり、現役のグラビアアイドルである、平井 るあちゃん。
本人がそう言っているように、彼女がここへ訪れたのは偶然で、どうやらこの間この廃ビルでソロキャンプをしていた映像が、無事に世間のお茶の間へ放送されたらしく、その報告と、協力してくれたお礼にといって、お菓子を持って遊びにきてくれたようだ。
だが、訪ねてみたら、そこには俺以外にも見知らぬ人物が沢山いて、しかも、その中の静子ちゃん以外が全員幽霊だと言ったからか、思考回路がショートしたらしい彼女は、何故か目をグルグル回しながら全員に名刺を配り始めた。
最近のグラビアアイドルは、一般人にも渡せるライトな名刺を持ち歩いているらしく、何やらカラフルで可愛らしい名刺をもらった。
俺やネココ、錬以外は、霊体化されていない物質を直接は受け取れないので、渡したはずの名刺がその場に落ちてしまうという現象に遭遇し、それがさらに彼女の混乱を加速させたようで、色々と事情を説明して落ち着かせるまで少し大変だったのだが……。
……まぁ、最近まで幽霊なんて見える体質じゃなかった人が、いきなり幽霊のたまり場に遭遇したら、普通は混乱するよな。
この中で普通に過ごしている静子ちゃんの方が、その環境も含めていろいろと常識外れなのだ。
ちなみに、るあちゃんの廃ビルキャンプ映像は、予想通り、ホラー枠ではなく、一見ホラーっぽいバラエティ枠として放送され、別途スタジオで撮影された、今回のキャンプで使用したテントや非常食を紹介するというオチを追加し、スポンサーの商品をダイレクトに宣伝する、スポンサー贔屓の映像に仕上がったらしい。
確かに、開かずの扉を開いても何もありませんでした。では、オチが弱いからな……二段構えの落ちでギャグに昇華させた方がいいと判断されたんだろう。
「……それで、改めて言うが、今日集まってもらったのは、静子ちゃんの進路について、皆も一緒に相談に乗って欲しいと思ったからだ……俺だけだと情報に偏りがあるからな、せっかくなら色々な職業の話を聞いてもらおうと思ってな」
「確かに、進路を決めるのに色々な職業の人から話を聞くのがいいことだってのは分かるっすけど、なんで先輩がそこまで気にかけるっすか? 静子ちゃんからお願いされたならともかく、わざわざ先輩が主導でみんなを集めるとか……小さな親切、大きなお世話、ってやつじゃないっすかねー?」
俺の説明に対して、錬が面倒くさそうに反論したように、静子ちゃんの進路は、静子ちゃん自身が自分で決めるべきだ。
今回みたいに、その選択肢を増やすために色々な職業の話を聞かせてあげるというのは、確かにいい刺激にはなるだろうが、本人がそれを望まないなら、無理に手助けするのも余計なお世話になりかねないだろう。
「そうだな……俺も、こんなものを見なければ、ここまでの行動は起こさなかっただろう……」
だが、彼女が新学期の授業に向けた予習のために持ち込んだ教科書の隙間からヒラリと舞い落ちた、『希望進路』と書かれたその1枚のプリントを見たら、行動を起こさずにはいられなかったのだ。
俺は、俺をこんな行動に掻き立てたその1枚の紙を、そっと、ちゃぶ台の上に広げた……。
わざわざチェックマークをつけて選ぶ二択として印刷されている『進学』も『就職』も二重線で消され、その下に『礼二さんのお嫁さん』と書かれた、その紙を……。
「「あぁ……」」
幽霊がそれなりに集まっている影響で、クーラーの無い部屋にしては涼しくなっているこの廃ビルの一室で……ちゃぶ台に置かれたその紙を見た全員が、同じ反応をした……。
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