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サークル
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3話 サークル
「古川中学校の佐藤です!よろしくお願いします!」
先生に言われてついて早々みんなに挨拶して回った。
社会人のサークルとはいえ、学生、大学生、男女問わずいろんな人がいてびっくりした。
そしてサークルの代表の人に色々説明してもらった。
代表とさいごの学校の先生は、3年前から一緒にサークル活動しているメンバーらしく、今年からさいごもここのサークルに週何回かお世話になっているらしい。
「佐藤君も毎日でもおいでよ」
ここのサークルは代表が変わっていて学生並みに毎日何処かで打っているらしかった。代表はバドミントンやっている体格には見えずラグビーか柔道部って感じ。
新人戦とはいえ、大会でさいごに勝って、準決勝決勝で強豪校の山中にかって優勝して、少し過信していたのかもしれない。でもここのサークルの人には誰一人に勝てなかった。
「あの人はバド始めて3ヶ月だよ」
そう言って指差したのは20才位のさっき僕が負けた相手だった。
その日の夜は今度はショックで眠れなかった。もやもやする。バド好きでちゃんとトレーニングしてるのに誰一人に勝てない自分に腹が立った。
さいごにも帰り際ちょっと八つ当たりしてしまった。
山中に行けばいいのかな?さっきのサークルで練習すればいいのかな?
そう考えているとさっきのサークルの代表さんからメールが届いた。
そう言えば帰りに連絡先交換していたんだっけ。
(今日は参加ありがとう!佐藤君強いけどどう言う練習してるの?)
強いだって...全敗したやつ相手に何を言っているんだろうか!煽られてるみたいでまた腹が立った。
(全然強く無いっす。全部負けましたし)
(いやいや。佐藤君は素質があるし一番強いよ)
(なんでですか?)
(みんなね。力押し出来なかったり足が追いつかなかったりする時の【逃げ】を作ってプレイしているんだよ)
(逃げですか?逃げたら負けですよね?)
この時は理解出来ずに代表さんには悪いことしてしまった。イライラして無愛想に当たり散らしていたと思う。
でもいまではこんな僕に丁寧に教えてくれたこの代表樋口さんには一番感謝している。この人がいなければ僕は中学の大会に一度優勝しただけの落ちこぼれ。ただのまぐれの人間で終わっていた。
(いやいや。スポーツで【逃げ】は大事だよ。その逃げを使わずに全部直球で堂々と戦っている佐藤くんは一番強いよ)
まだわけが分からなかった。
頭の中が逃げと逃げないでぐるぐるしてどうしようもなくなった。
(明日また練習おいでよ。コツ教えてあげるから)
そう言われて親に相談して、樋口さんに送り迎えしてもらって練習にいくことにした。
「あの...昨日の【逃げの】話なんですけど」
「あぁごめんごめん。昨日は回りくどかったよね。今日教えてあげるよ」
昨日とは別の場所。僕はまたみんなに挨拶回りをしたけど、元気だねぇっておばちゃんたちに笑われてちょっと恥ずかしかった。
そして試合練習前の基礎うちの後に。
「こう言うこと。半面やろう。ちょっと球あげてみて」
「はい」
樋口さんに球をあげてみた。
スマッシュの構えに入った。
僕はレシーブの構えに入った。
樋口さんは大きく腕を振って...あれ?止めた。
「うわ!」
僕は前のめりになってしまい、シャトルを取れなかった。なんなんだよもう...
「よし。もう一回」
樋口さんにまた球を上げた。
どうせまたドロップだろう。
僕は普通のレシーブよりちょっと前に構えた。
樋口さんが大きく腕を振って...打って来ないまだ打って来ない...そして手首を落として球は僕の頭上超えてエンドラインへ。
「もう一回。次は取りなね」
ひたすら裏をかかれて半面なのに10球連続ノータッチで1球も返せなかった。微笑んでいたんだろうけど、俺には樋口さんの笑いがバカにしたように見えた。
ただのフェイントだろう!逃げってなんなんだよ!
「きついところに打たれるってのは主に自分からシャトルが一番遠いところに落とされるということ。逆に言うと打たれる側は一番そこを見ていて一番行きやすいラインなんだ。」
「どういう事ですか?わかんないっす」
また当たってしまった。
「つまり。相手がいないところじゃなくて、相手が行きにくいところを狙うんだよ。それとフェイントを混ぜると大きく分けると4パターン」
「相手がいないところにそのまま打つ。相手が行きにくいところにそのまま打つ!相手がいないところにフェイントで打つ!!相手が行きにくいところにフェイントで打つ!!!」
「そういう事!飲み込み早いなー」
「はい!」
「社会人の練習は主にダブルスだからいるところに打つ。体を狙う、2人の間に打つっていうのも入れればパターンはもっと多いんだけどね!」
「はい!!」
わかった!やっと樋口さんの言っている事が理解できて嬉しかった。
「よし!試合入ります!」
その日はおばちゃん相手も何人かいたので何回か勝つ事はできた。でもフェイントできないせいかまだまだ誰にも余裕で勝てる気がしなかった。
「不満そうな顔してるな!負けて悔しいんだろ?でも君はまだフェイントは覚えない方がいい。」
その日も眠れなかった。
僕みたいに弱くて全然勝てないやつがサークルにお邪魔してもいいんだろうか。山中で特訓した方がいいんだろうか。それとも山中に行っても邪魔になるだけだろうか。
樋口さんからメールだ!
(今日も参加ありがとう!あの後みんなで食事したんだけどね。佐藤くんのファン多かったよ!また打ちたいって話で持ちきりだったよ。)
(お疲れ様でした。どういう事ですか?)
(あんな素直で強いプレイヤー見た事ないってみんな褒めるんだよ)
(本当ですか?んじゃ僕また行ってもいいんですか?)
(何言ってるんだよ。こっちからお願いしたいよ。また来てね!)
(いきます!明日もやってますか?)
これが僕のバドライフの始まりだった。
次の日はさいごも来ていた。
「お前も足26.5でいいんだよな?」
そう言ってさいごは僕にシューズを渡してきた。
「これは?」
「俺のお古。もう新しいの買ったからあげる。中敷もかえといた。」
「え?ほんとに?いいの?」
「ああ」
「ありがとう!!履いてみる!!」
「履け履け」
バドミントンシューズ貰っちゃった!!
嬉しくてはしゃぎまわって叫びまくってたし泣きそうだったけど、あれ?なんかさいごが泣いてるw
「だからなんでさいごがなくのさ」
「泣いてねーわ!!お前ってほんと変なやつだよな」
お前もなー!
早速シューズ履いてさいごと基礎うちしてみた。
あれ?
「何やってんだお前」
クリア打つ時思いっきり後ろに転んでしまった。
疲れてるのかな?
「あはははっ!」
また転んでしまった!
指差して笑うさいご。そして今度は空振りの連発。
どうしたんだろう...
「今日はシューズ戻した方がいいかもね。滑らないから動きづらいのかもよ?」
「そうですかね?」
そう言われて内ばきに戻したらいつものプレーができた。
「普通バドシューズ履きたては調子上がるのにお前ほんと変わってるよな。」
「仕方ないでしょ!ずっとこれだったんだもん家でも」
「え?いえ?」
「うん」
「いえって何?」
「いやいや。いえは僕の家」
「そうじゃなくて!!もしかして家でも練習?」
「そうだよ?」
「何やってるの?」
「素振り」
「古川中学校の佐藤です!よろしくお願いします!」
先生に言われてついて早々みんなに挨拶して回った。
社会人のサークルとはいえ、学生、大学生、男女問わずいろんな人がいてびっくりした。
そしてサークルの代表の人に色々説明してもらった。
代表とさいごの学校の先生は、3年前から一緒にサークル活動しているメンバーらしく、今年からさいごもここのサークルに週何回かお世話になっているらしい。
「佐藤君も毎日でもおいでよ」
ここのサークルは代表が変わっていて学生並みに毎日何処かで打っているらしかった。代表はバドミントンやっている体格には見えずラグビーか柔道部って感じ。
新人戦とはいえ、大会でさいごに勝って、準決勝決勝で強豪校の山中にかって優勝して、少し過信していたのかもしれない。でもここのサークルの人には誰一人に勝てなかった。
「あの人はバド始めて3ヶ月だよ」
そう言って指差したのは20才位のさっき僕が負けた相手だった。
その日の夜は今度はショックで眠れなかった。もやもやする。バド好きでちゃんとトレーニングしてるのに誰一人に勝てない自分に腹が立った。
さいごにも帰り際ちょっと八つ当たりしてしまった。
山中に行けばいいのかな?さっきのサークルで練習すればいいのかな?
そう考えているとさっきのサークルの代表さんからメールが届いた。
そう言えば帰りに連絡先交換していたんだっけ。
(今日は参加ありがとう!佐藤君強いけどどう言う練習してるの?)
強いだって...全敗したやつ相手に何を言っているんだろうか!煽られてるみたいでまた腹が立った。
(全然強く無いっす。全部負けましたし)
(いやいや。佐藤君は素質があるし一番強いよ)
(なんでですか?)
(みんなね。力押し出来なかったり足が追いつかなかったりする時の【逃げ】を作ってプレイしているんだよ)
(逃げですか?逃げたら負けですよね?)
この時は理解出来ずに代表さんには悪いことしてしまった。イライラして無愛想に当たり散らしていたと思う。
でもいまではこんな僕に丁寧に教えてくれたこの代表樋口さんには一番感謝している。この人がいなければ僕は中学の大会に一度優勝しただけの落ちこぼれ。ただのまぐれの人間で終わっていた。
(いやいや。スポーツで【逃げ】は大事だよ。その逃げを使わずに全部直球で堂々と戦っている佐藤くんは一番強いよ)
まだわけが分からなかった。
頭の中が逃げと逃げないでぐるぐるしてどうしようもなくなった。
(明日また練習おいでよ。コツ教えてあげるから)
そう言われて親に相談して、樋口さんに送り迎えしてもらって練習にいくことにした。
「あの...昨日の【逃げの】話なんですけど」
「あぁごめんごめん。昨日は回りくどかったよね。今日教えてあげるよ」
昨日とは別の場所。僕はまたみんなに挨拶回りをしたけど、元気だねぇっておばちゃんたちに笑われてちょっと恥ずかしかった。
そして試合練習前の基礎うちの後に。
「こう言うこと。半面やろう。ちょっと球あげてみて」
「はい」
樋口さんに球をあげてみた。
スマッシュの構えに入った。
僕はレシーブの構えに入った。
樋口さんは大きく腕を振って...あれ?止めた。
「うわ!」
僕は前のめりになってしまい、シャトルを取れなかった。なんなんだよもう...
「よし。もう一回」
樋口さんにまた球を上げた。
どうせまたドロップだろう。
僕は普通のレシーブよりちょっと前に構えた。
樋口さんが大きく腕を振って...打って来ないまだ打って来ない...そして手首を落として球は僕の頭上超えてエンドラインへ。
「もう一回。次は取りなね」
ひたすら裏をかかれて半面なのに10球連続ノータッチで1球も返せなかった。微笑んでいたんだろうけど、俺には樋口さんの笑いがバカにしたように見えた。
ただのフェイントだろう!逃げってなんなんだよ!
「きついところに打たれるってのは主に自分からシャトルが一番遠いところに落とされるということ。逆に言うと打たれる側は一番そこを見ていて一番行きやすいラインなんだ。」
「どういう事ですか?わかんないっす」
また当たってしまった。
「つまり。相手がいないところじゃなくて、相手が行きにくいところを狙うんだよ。それとフェイントを混ぜると大きく分けると4パターン」
「相手がいないところにそのまま打つ。相手が行きにくいところにそのまま打つ!相手がいないところにフェイントで打つ!!相手が行きにくいところにフェイントで打つ!!!」
「そういう事!飲み込み早いなー」
「はい!」
「社会人の練習は主にダブルスだからいるところに打つ。体を狙う、2人の間に打つっていうのも入れればパターンはもっと多いんだけどね!」
「はい!!」
わかった!やっと樋口さんの言っている事が理解できて嬉しかった。
「よし!試合入ります!」
その日はおばちゃん相手も何人かいたので何回か勝つ事はできた。でもフェイントできないせいかまだまだ誰にも余裕で勝てる気がしなかった。
「不満そうな顔してるな!負けて悔しいんだろ?でも君はまだフェイントは覚えない方がいい。」
その日も眠れなかった。
僕みたいに弱くて全然勝てないやつがサークルにお邪魔してもいいんだろうか。山中で特訓した方がいいんだろうか。それとも山中に行っても邪魔になるだけだろうか。
樋口さんからメールだ!
(今日も参加ありがとう!あの後みんなで食事したんだけどね。佐藤くんのファン多かったよ!また打ちたいって話で持ちきりだったよ。)
(お疲れ様でした。どういう事ですか?)
(あんな素直で強いプレイヤー見た事ないってみんな褒めるんだよ)
(本当ですか?んじゃ僕また行ってもいいんですか?)
(何言ってるんだよ。こっちからお願いしたいよ。また来てね!)
(いきます!明日もやってますか?)
これが僕のバドライフの始まりだった。
次の日はさいごも来ていた。
「お前も足26.5でいいんだよな?」
そう言ってさいごは僕にシューズを渡してきた。
「これは?」
「俺のお古。もう新しいの買ったからあげる。中敷もかえといた。」
「え?ほんとに?いいの?」
「ああ」
「ありがとう!!履いてみる!!」
「履け履け」
バドミントンシューズ貰っちゃった!!
嬉しくてはしゃぎまわって叫びまくってたし泣きそうだったけど、あれ?なんかさいごが泣いてるw
「だからなんでさいごがなくのさ」
「泣いてねーわ!!お前ってほんと変なやつだよな」
お前もなー!
早速シューズ履いてさいごと基礎うちしてみた。
あれ?
「何やってんだお前」
クリア打つ時思いっきり後ろに転んでしまった。
疲れてるのかな?
「あはははっ!」
また転んでしまった!
指差して笑うさいご。そして今度は空振りの連発。
どうしたんだろう...
「今日はシューズ戻した方がいいかもね。滑らないから動きづらいのかもよ?」
「そうですかね?」
そう言われて内ばきに戻したらいつものプレーができた。
「普通バドシューズ履きたては調子上がるのにお前ほんと変わってるよな。」
「仕方ないでしょ!ずっとこれだったんだもん家でも」
「え?いえ?」
「うん」
「いえって何?」
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「そうだよ?」
「何やってるの?」
「素振り」
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