幻想パズルパーティ～日常遅生活～

彼等はもう居ない

「人間風情が我に勝てるとでも思ったか！？」
　二人の人間とスライムのハーフの姉妹が複数の剣士に襲われているところを偶然私達が通りかかり、お父さんの川崎龍神之猛（かわさきりゅうじんのたける）が理不尽な圧倒的暴力で彼等をねじ伏せていた。
「え？こいつら死んだ？」
「うん、そのようだな」
「えぇ...」
　視線を助けられた彼女達に移した。逃げるのに夢中だったのか丸裸の状態で木の後ろに隠れていたのを思い出した。後に三人の葛城グループ設立当初の私も含めたメンバーだ。

「え？何で私全裸なの！？」
　私は川崎茜（かわさきあかね）、川崎龍神猛の一人娘だ。今は葛城グループから独立し、自身の薬学の知識を生かした川崎薬局の店長になっていた。
「川崎さんどうしたのそんな恰好で...」
「違います、朝起きたら何故か裸になってたんです！」
「じゃあ、何でベッドに押し倒されてたの？」
「何の事ですか？」
「覚えてないんだ...」
「どういう意味ですか？」
「お姉ちゃんに何かされてたでしょ？」
「あの人にそんな趣味があったなんて...」
　彼女は葛城葵（かつらぎあおい）さん、彩音（あやね）さんの実の妹で、『葛城グループ』設立当初の一員だった。
「もう、大丈夫だから。落ち着いて」
「分かりました。」
　時計を見ると午前〇時になりかけていた。彩音さんの「御飯出来たよー！」の声が聞こえる。私は料理が下手なのでいつも作ってもらってる。と一応出来るんだけどね...
「葵、一緒に食べてかない？」
「お姉ちゃんあんなのが趣味だったんだね！」
「何の事？」
「茜さんに睡眠薬飲ませて、全裸剥いてそれから...」
「昨日の見てたよね？」
「しばらく話しかけないでください。見損ないました」
　これ、完全に誤解されたな...だけどまさか、あんなことをするなんて。別居しようかな...あれ、お腹が空かない目の前においしそうな料理が有るのに、昔のことと思いだしたら自然と涙が出てきた。
「大丈夫？泣いてる」
「気のせいです。後しばらく、私に話しかけないでください」
「え？分かった...」
私と彩音さんの夫は普通の人間だったからあっという間に死んだ。寿命が私達よりも極端に短いせいだ。自分達の一日は彼等にとって五十年かもしれない。
「もう、結婚記念日か...居ないから意味ないか」
　夫の大智は、戦地で多くのテロリスト（民間軍事会社ファフニール）の人間殺害をしててたことによるPTSDでだいぶ苦しんでいて、その後一方的に離婚を迫られた。その後再会した時は初老って感じでアメリカの広大な土地でカウボーイみたいな事をやっていた。
「もしかして、昨日の夜の事怒ってる...？」
「呆れました。食事は..そこに置いといてください」
「...ごめんなさい」
「...もう分かりましたから。ただし次やったら叩きだしますよ」
　これは警告だ。二度目は容赦なくこの家から追い出すつもりだ。後で聞いた話によると私が男かどうか確かめたかったらしいけど女同士でも流石にあれは気持ち悪い。