エロゲーの悪役に転生しても筋トレしかしない様子

タバスコ

文字の大きさ
19 / 32

なんか、めちゃくちゃ勘違いされてて草

しおりを挟む
まえがき

バグで前話が2話投稿されていました!その話に付箋をつけてくださっていた方、本当に申し訳ありませんでした!


 ていうか、やっぱり顔以外の見た目もイケメンになるには重要だよね。

 土まみれで髪の毛が全てヘルメットに仕舞われていて、だっさい迷彩服を着ているセクシャルを見ると、改めてそう感じた。

 普段はイケメンなはずなのに、一気に乞食みたいだもん。

「どうして君は、泥に塗れてまでこんなことをするんだい?」
「?……ああ、これか。この森の動物たちは気配や香りにすごく敏感でな。人間の臭いを隠すため、森の土を染み込ませた森色の服を着る必要があるんだ」

 顔を顰めて質問するコウセイに対して、セクシャルは至って普通の表情でそう回答した。

「いや、そうじゃなくて……」
「なんのために狩りをするのか。ってことでしょ? 私もおんなじ気持ちよ。趣味にしても、そんなに土まみれになって汚れて……ちょっと心配しちゃうわ」

 どうやらアクティもコウセイと同じことを思っていたようで、話を引き継いだ。

 確かに貴族目線からすると、趣味の一環としてこれはやりすぎなのだろう。

 そもそも、農作業でさえ貴族の彼らからすると本当にありえないことなのだ。

 1日に何度も体を清め、汗をかかないために短距離の移動でも馬車を使い、服は汚れたらすぐに破棄する。どこかの貴族家には、24時間ずっと屋敷を掃除するための人員が配置されているところもあるのだとか。

 基本的に彼ら貴族が汗をかき汚れるのは、性行為の時だけであると言ってもいいだろう。まあ、若い男などは剣術の訓練を行ったりもするが、それは例外だろう。

「狩りの目的……そうだな。あいつらに肉を食わせるためだ」
「え……?」
「それは……」

 それは、どういうことなのかを聞こうとしたのだろう。普通、公爵家くらい裕福な領地には、狩猟を行うハンターが過剰なほどに存在する。

 命の危険があり、技術が必要なその仕事に就く人間は大切にされ、ギルド制度などを用いて手厚く保証を受けられる場所もあるそうだ。

 しかし、ハラスメント領にはそういった制度がない。理由としては、存在する少数のハンターたちに仕事をさせるだけで、貴族や金持ち、平民達の食事は賄えるからである。

 そのためハンターを志すものは少ないが、食えないのは貧民や農民だけ。それら少数のためだけに時間と労力と金を使うほど、ハラスメント家の人間は優しくも賢くもなかった。

 たとえ農民が全員餓死しても、平民達に農作業をさせればいいとでも思っていたのではないだろうか。

 本当に、ハラスメント家は貴族としてはちょいワル程度だが、人間として、家族として見ると本当に嫌な人間達である。

「うちの領地に存在する動物や魔物達は、なぜか異常に強い。だから領地も未発達だし、あいつらみたいな貧しい奴らはまともに飯も食えないんだ」
「なるほど。だから、みんなあんなに細かったのか……」
「ああ。3時間おきのプロテインどころか、1日2食食べるのもキツいような状況だった。そんなんじゃ、筋肉はつかん」

 納得したような、呆然としたような表情の2人を見て、話が終わったと思ったのだろうか。

 じゃあ俺は行くぞ。と一言声をかけたセクシャルは、慣れた様子で蔓まみれの森の中をスイスイと進んで行った。

 セクシャルが消えた後の空間には、沈黙が広がっていた。そして、しばらく時間を置いてから、アクティが口を開く。

「……ねえ、あなたにも同じことができる?普通に生きてたら目にも入らないような人たちのために、服だけじゃなくて髪まで土まみれで、帰ってきたら、きっと血まみれで……。」
「悔しいけど、無理だね。……そもそも、今まで自分の領地の貧民のことなんて、考えたこともなかった。それにもし、仮に俺が食料問題を解決するなら、適当に人を雇って送り込んで終わりにしていたと思う」
「私だってそう。勉強して、領地経営についてわかった気でいたけど……全然違った。人を惹きつけるような領主になるなら、お金を使って解決するだけじゃダメなのね……」

 2人は、自らを危険に晒してまで食料を取りに行くセクシャルの姿を見て、何か思うことがあったようだ。

「でも、本当に情けないのは俺だよ。君たち2人はまだ6歳で、本当は領地のことなんか考えるような年じゃない。あそこまで大人びたセクくんですら、最近までなにも出来ていなかったと言っていたじゃないか」
「ううん、違うの。今思えばきっと、セクは昔からずっと領民のことを考えていたんだと思う」
「……聞かせてくれるかい?」
「うん……えっと、昔からね、セクはちょっと変な子だったの。性格もそうだけど、特に食事。公爵子息なのに質素なものばかり食べてたの。鳥の胸肉を茹でたものとか……そればっかり。なんでそんなの食べてるの?って聞くとね、力をつけるためだって言ったの」

 アクティは、昔を思い出しながら、少しずつ語った。

「じゃあ、どうして力をつけたいのか聞いても、はっきりと答えてくれなかったの。でも、確実に何か目的を持ってた。
 じゃないと、あんなに……何度も何度も筋肉がちぎれるまで自分を追い詰めて、その度に私に回復させて、そんな辛いこと、できるわけない……。」

 少しずつ感情的になり、声が震える。そして、こぼれ落ちた涙を隠すように手で顔を覆った。

「じゃあ、その目的っていうのが、領民を救うためだったんだね。そして、彼は今それを体現している。だからこそ、あそこまで領民たちに慕われているんだ。」
「セク……どうして、どうしてなにも相談してくれなかったの……。あんなに辛い想いをして、1人で抱え込んで……」
「ああ、彼は、本当に……」

 森の奥から、優しい風が吹いた。それはまるで、2人の感傷的な雰囲気を洗い流すかのような、温かい風だった……。



 ん? いやいやいや、まてまて。なんだかすごく都合よく解釈されているが、セクシャルの行動源は全て私欲である。

 トレーニングは楽しいから続けているだけだろうし、筋繊維がちぎれるまでトレーニングをするのは、アクティの回復能力を最大限利用するためだ。

 そして、農民たちを助けるのは……善意ももちろんあるが、例の思い込みによる自分のバルクアップのため。

 ちなみにだが、現在魔物と交戦中のセクシャルは、白目を剥いて気持ち良くなりながらハイオークに腹筋を殴られている。

 殴られて筋肉を強くする、空手とかそういう式の筋トレ方法を思い出し、やってみたくなったらしい。

「あ"ぁ"……これは、意外といいかも……」

 頼むから、誤解よ解けろ。こいつは、君たちが想像しているような聖人などではない。ただの変態である。


あとがき

ぜひ、お気に入り登録をお願いします……!
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

俺、何しに異世界に来たんだっけ?

右足の指
ファンタジー
「目的?チートスキル?…なんだっけ。」 主人公は、転生の儀に見事に失敗し、爆散した。 気づいた時には見知らぬ部屋、見知らぬ空間。その中で佇む、美しい自称女神の女の子…。 「あなたに、お願いがあります。どうか…」 そして体は宙に浮き、見知らぬ方陣へと消え去っていく…かに思えたその瞬間、空間内をとてつもない警報音が鳴り響く。周りにいた羽の生えた天使さんが騒ぎたて、なんだかポカーンとしている自称女神、その中で突然と身体がグチャグチャになりながらゆっくり方陣に吸い込まれていく主人公…そして女神は確信し、呟いた。 「やべ…失敗した。」 女神から託された壮大な目的、授けられたチートスキルの数々…その全てを忘れた主人公の壮大な冒険(?)が今始まる…!

異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~

北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。 実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。 そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。 グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・ しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。 これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。

処理中です...