エロゲーの悪役に転生しても筋トレしかしない様子

タバスコ

文字の大きさ
21 / 32

王都にて、ダンベル販売してみた

しおりを挟む
 ジェンダーにプロテインを渡した数時間後。セクシャルは王都の商店街で筋トレをしていた。

 ちなみにだが、もちろん1人である。公爵子息なのにも関わらず、この自由さ。いつものことであるが、あたおかである。

 こんなところで筋トレするなんて何を考えているのかというと、どうやら、ダンベルやベンチ台などのトレーニング器具を販売するつもりのようだった。

 その証拠に、セクシャルが筋トレしている側には商品のダンベルとベンチが置いてあり、それぞれに値札が付いていた。

 普通のベンチ台が10000円で、背もたれの高さを変えることができる可変式のものが20000円。

 ダンベルは1キロ、2キロ、3キロ、4キロ……と10キロまで用意してあり、2つセットで販売するようだった。

 値段は、1キロ2つセットで1000円。そこから1キロ増えるごとに値段も1000円増えるように設定してあるようだ。つまり、10キロ2個セットは10000円。

 現代の相場と比べるなら結構お高めのダンベルということになるが、この世界にはダンベルがまだ存在しないことや、ここまで精密に加工する技術もないだろうという事情もある。

 現代のダンベルでさえ殆どが重さに5%以内の誤差が発生するのにもかかわらず、セクシャルの生成した器具は誤差がゼロ。こういった高性能っぷりも合わさるので、この程度の値段ならば許されるであろう。安定性や希少性というやつだな。

 ここだけの話、重さを変えられる可変式のものを発売しないのは、金儲けのためである。いやらしいやつだ。

 ただ、重さの変えられない固定式には、変えられる可変式と比べて小さくて扱いやすかったり、ダンベルの側面が平らなので膝においても突き刺さったりしないという利点もある。

 つまり、固定式のみを売るのは、完全に金儲けのためだけではないということだ。まあ、ある程度売れた後で可変式を売る計画も立てているようだったが。まあ、商売ってそんなもんよね。

 ちなみに、合計数百キロを超えるであろうこの重りたちをどうやって領地か遠く離れた王都まで運んできたのかというと、王都とハラスメント領を繋げる転移ゲートでやってきたのだ。

 ハラスメント領は田舎だが、一応公爵家の領地である。そのため、限られた場所にしかない王都と領地を繋げる転移ゲートが開かれているのだ。土地としてハズレな、魔境のある場所を治めることを任されている対価と言ってもいいだろう。こんくらいの特権がないと、ハードモードの土地を統治するなんてやってらんないよね。

 さて、絶賛筋トレに励むセクシャルに話を戻そうか。

 現在、セクシャルは上裸で大胸筋のトレーニングを行っている。セクシャルの名誉のために一応言っておくと、上裸なのは変態だからではなく、商品の売り上げを伸ばすためのパフォーマンスの一種である。

 他にも商品を売るための工夫は為されている。たとえば、今セクシャルが使っているダンベルを見てみると、一般的にダンベルに使われる素材である鉄よりも軽い素材で作られている。

 そうすることで、普通のダンベルよりも大きいダンベルを使って筋トレすることができ、客や通りすがりの人々に与えるインパクトを強くすることができるのだ。

 まあ、単純に鉄よりもその素材で作る方が魔力消費が少なかったという事情もあるが。

 そういった客寄せの努力もしっかり行ったことで、筋トレを行うセクシャルの周りには人だかりができ始めていた。

 こっちの世界ではダンベルなど現代では一般的な器具を使ったトレーニングが存在せず、物珍しいということもあるだろう。

「おいおい、やばいのがいるぞ?」
「見たところ体を鍛えているようだが……やばいな」
「手に持ってるあれ、デカすぎだろ。一体何キロあるんだよ……」
「筋肉もやばいな。めちゃくちゃデカい」
「大きさもそうだが、何よりも脂肪の少なさが美しいと思うな」

 周囲の人々は、セクシャルの狙い通りデカすぎるダンベルやセクシャルの肉体美について語り始める。

 すでに、値札を見て購入を検討している人もいるようだった。

 しかし、トレーニングに全集中しているセクシャルはそんなこと全く気が付かず、眉間に皺を寄せてものすごい必死な顔でトレーニングを続けていった。

「すぅーっ……ふっ! すぅーっ……ふっ!」

 そして、やがてトレーニングは終盤になり、セクシャルの胸や腕がプルプルと震え始めた。

 そもそも片手150キロもあるダンベルでダンベルプレスを行っているのだから、そりゃキツいに決まってる。それでもフォームを乱さないのが、セクシャルのすごいところだ。

「……………………ふっ! ぐ、ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 うめき声を上げながら、最終セットのラスト一回をどうにか挙げ切ったセクシャル。

 ベンチに寝そべっていた身体を起こすとともにダンベルを一旦膝に置き、ゆっくりと地面に下ろしていく。

 すると、ゆっくり地面に置いたはずなのにも関わらず、あまりに重いせいですごい振動が響きわたった。

 ゆっくり置いたはずなのに思ったより音が響いて家族に怒られる。家トレーニーあるあるである。

 さて、思ったよりも大きい音が出て、セクシャル自身も驚いたようだ。驚いて跳ねるように顔を上げ、そこで初めて、自分が人々に囲まれていることに気づいた。

「……いらっしゃい」

 騒音を立ててしまった申し訳なさ、顔面を崩壊させながら必死こいて筋トレしているのを見られた恥ずかしさ、すっかりパフォーマンス中だということを忘れていた失敗感。どれが原因かは定かではないが、少し気まずそうにセクシャルは声を出した。


あとがき

ここまでお読みくださりありがとうございます!ぜひ、お気に入り登録などを押していただけると嬉しいです!
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

俺、何しに異世界に来たんだっけ?

右足の指
ファンタジー
「目的?チートスキル?…なんだっけ。」 主人公は、転生の儀に見事に失敗し、爆散した。 気づいた時には見知らぬ部屋、見知らぬ空間。その中で佇む、美しい自称女神の女の子…。 「あなたに、お願いがあります。どうか…」 そして体は宙に浮き、見知らぬ方陣へと消え去っていく…かに思えたその瞬間、空間内をとてつもない警報音が鳴り響く。周りにいた羽の生えた天使さんが騒ぎたて、なんだかポカーンとしている自称女神、その中で突然と身体がグチャグチャになりながらゆっくり方陣に吸い込まれていく主人公…そして女神は確信し、呟いた。 「やべ…失敗した。」 女神から託された壮大な目的、授けられたチートスキルの数々…その全てを忘れた主人公の壮大な冒険(?)が今始まる…!

異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~

北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。 実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。 そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。 グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・ しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。 これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。

処理中です...