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2❀部活動
13*居場所
しおりを挟む深月の考えてることを理解して、俺は深月を庇うことしか出来なかった。
「みつはここがお気に入りの場所でさ、よくここで昼寝とかもしてるんだよ」
遥音の視線がこちらに向いて、俺も俺で俯く深月の方を見て背中をさすっていた。
「……俺もみつを迎えに来るんだけど、静かで緑が綺麗で………居心地がいいっていうか」
ここにいると本当に落ち着くし、心が癒される気がする。
「だからまあ…言い方はちょっと違うかもしれないけど、居場所って感じかな
みつも俺も安心していられる場所、みたいな」
……………そう言うと、遥音は少し沈黙した後、……顔を上げた。
「………つまり、…………縄張りってことか………?」
………!
「んー…まあそんな感じかな」
「なるほど………居場所…縄張り………確かに勝手に入られるのは嫌だな」
………まあ、この庭園は俺達だけのものって訳でもないから、そこまで強くは言えないんだけど。
お昼休みとかには生徒もちらほらいるけど、放課後は皆部活や帰宅していてここにくる生徒は0に等しい。
人の少ないこの場所は、深月にとっても居心地の良い場所だった。
遥音は、また少し考えてから、……少しだけ俯いて、
「………居場所がないのは、辛いもんな」
なにか小声で呟いて、また顔を上げた。
「…分かった、深月が俺達のこと信用してくれるまで、ここには入らない、それでいいか?」
…なんて、遥音にしては聞き分けが良くて、
「遥音ってそんな物分り良かったか…??」
「うるさい誠一、……深月、いい?」
深月も少し顔を上げて、下から遥音を見上げる。
「………、
……………分かった。」
……………どうやら納得したようだった。
「良かった………」
「…なんでそんなに聞き分けいいの、…気持ち悪い………」
「な…ッ、やっぱお前すごいムカつくわ……………」
………まあそれは、俺もちょっと気になるけど。
「……だって嫌だろ、自分が安心出来る場所、誰かに奪われるなんて」
………遥音のその言葉の意味を、あの時の俺はまだ理解出来ていなかった。
ーーー
時間が経つのは思っていたよりも早くて、気がつけばもう部活が終わる時間になっていた。
「じゃあまた明日な!お疲れ様でしたー」
遥音と律歌と別れて、深月と寮へ向かった。
ーーー
(遥音side)
「とうか、今日は何食べる?」
「そうだなぁ……たまには中華食べたいかも!」
正反対の方向へ歩く2人を眺めていたら、律歌に話しかけられた。
「………深月、僕達のことまだ信用してないね」
………
「……会ったばっかりだし普通だろ、…第一、俺だってまだあいつらのこと信用してない」
「まあそうなんだけどさ………、……誠一もそうだったりするのかな」
……………誠一は、
「あいつはどうなんだろ………何も考えてなさそうだけど」
「まあね……、…それは僕も思った」
…ただ、なんとなく思っていたこと。
「原因わかってるから触れなかったけど、誠一頬に絆創膏してたね」
「あぁ……どうしたんだろうな」
「分かってるくせに」と、じと目でこちらを見てくる律歌。
……そういえばなんか、俺がなにかしたような記憶はある………ような。
「すぐ手出す癖やめた方がいいかな」
「うーん……まあ誠一にやるのはやめた方がいいかもね、身内じゃないし」
身内じゃないから、簡単に暴力なんて振るうべきじゃない。
……………そんな考えもおかしいのかもしれない。
「じゃああいつにならいい訳?」
「…んー………、……でも僕はあの人の事は殴れないから、…遥音はすごいなって思うよ?」
...
「そのすごいってどっちの意味?良い方?悪い方?」
「…遥音はしつこいね、もう遅いし、僕達も早く帰ろうよ」
そう言うと律歌は、誰もいない廊下を小走りしていった。
そして振り返って、「遥音!」ってこちらに向かって笑いかけてくる。
「………ちょっと待てって、そこにいろ!」
俺も律歌に追いつくように小走りし始めた。
あいつが待つ俺の元の居場所に、戻る事にした。
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