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第63夜 タロ
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これは、私の母が体験した話です。
私の母が住んでいた家の近所に、一人暮らしのおばあさんがいました。
おばあさんはタロという名前の柴犬を飼っていて、母はタロと遊ぶためにおばあさんの家によく行っていました。
おばあさんは若い頃に旦那さんと別れ、女手一つで3人の子供を育てた人で、気さくで面倒見が良く、母はおばあさんのことが大好きだったそうです。
それは、ある冬の寒い日の夜のことでした。
母がもう寝ようとする頃、おばあさんが家に訪ねてきたそうです。
おばあさんはパジャマに薄手のカーディガンを羽織っただけの軽装で、この寒い中どうしたんだろうと母は思いました。
「こんな遅くにごめんなさいね」
おばあさんはそう言って、申し訳なさそうに玄関先に立っていました。
母の母、つまり私の祖母が家の中に招き入れようとしましたが、おばあさんは決して入ってこなかったそうです。
そして、おばあさんは母と祖母に
「急に息子のところに行くことになってしまったの。申し訳ないんだけど、タロの面倒を見てやってはくれないかしら」
と言ったそうです。
タロは母に懐いていましたし、散歩にも連れていったことがあったので、おばあさんのお願いを母と祖母は快諾しました。
すると、おばあさんはホッとした顔をして、
「エサは犬小屋の横の倉庫に入ってるから、どうかよろしくね。ありがとう。本当にありがとう」
と何度もお礼を言って帰っていったそうです。
次の日、母と祖母は、タロのエサをやりにおばあさんの家に行きました。
タロは母を見つけるやいなや、とても激しい声で吠えました。
タロは大人しい犬だったので、母は初めて見るタロのそのような姿に驚いたそうです。
しかも、エサをあげてもタロは食べようとせず、首輪で首が絞まるほどおばあさんの家の方に近づき、激しく吠え続けるのです。
母と祖母は、家の中に何かあるのかと思い、窓から中の様子を伺いました。
すると、おばあさんが居間で倒れていたのです。
祖母が急いで救急車を呼びましたが、おばあさんはすでに亡くなっていました。
消防の方の話では、おばあさんは死後2、3日経っていたそうです。
では、訪ねてきたおばあさんは一体なんだったのか。
母と祖母は、きっとタロを心配して成仏できなかったのだろうと思うようにしたそうです。
おばあさんのお葬式で知ったそうなのですが、おばあさんの息子さんはその数年前に病気で亡くなっていたらしく、おばあさんが『息子のところに行く』と言っていたと伝えると、親族の方は涙を流されたそうです。
タロは母の元に引き取られ、それから7年幸せに暮らし、天寿を全うしました。
散歩でおばあさんの家があった場所の前を通ると、クーンと甘えたような声で鳴いたそうです。
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それは、ある冬の寒い日の夜のことでした。
母がもう寝ようとする頃、おばあさんが家に訪ねてきたそうです。
おばあさんはパジャマに薄手のカーディガンを羽織っただけの軽装で、この寒い中どうしたんだろうと母は思いました。
「こんな遅くにごめんなさいね」
おばあさんはそう言って、申し訳なさそうに玄関先に立っていました。
母の母、つまり私の祖母が家の中に招き入れようとしましたが、おばあさんは決して入ってこなかったそうです。
そして、おばあさんは母と祖母に
「急に息子のところに行くことになってしまったの。申し訳ないんだけど、タロの面倒を見てやってはくれないかしら」
と言ったそうです。
タロは母に懐いていましたし、散歩にも連れていったことがあったので、おばあさんのお願いを母と祖母は快諾しました。
すると、おばあさんはホッとした顔をして、
「エサは犬小屋の横の倉庫に入ってるから、どうかよろしくね。ありがとう。本当にありがとう」
と何度もお礼を言って帰っていったそうです。
次の日、母と祖母は、タロのエサをやりにおばあさんの家に行きました。
タロは母を見つけるやいなや、とても激しい声で吠えました。
タロは大人しい犬だったので、母は初めて見るタロのそのような姿に驚いたそうです。
しかも、エサをあげてもタロは食べようとせず、首輪で首が絞まるほどおばあさんの家の方に近づき、激しく吠え続けるのです。
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すると、おばあさんが居間で倒れていたのです。
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