百物語 ーヒャクモノガタリー ♦︎3分以内に読める怪談のショートショート集♦︎

いくいえむ

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第65夜 従業員用の女子トイレ

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学生時代にアルバイトをしていたショッピングモールでの話です。
そのショッピングモールは新しく建てられたもので、私はその中のアパレルショップにオープンスタッフとして雇われましたが、働く前に母親に
「本当にあんなところで働くの?」
と何度も訊かれました。
というのも、ショッピングモールが建った土地が曰く付きだったのです。

ショッピングモールが建つ前、その土地にはパチンコ店がありました。
しかし、ある時、従業員用の女子トイレでスタッフが自殺してしまったのです。
そして、そのことがきっかけで客足が遠のいたのか、パチンコ店は閉店してしまい、長い間廃墟となっていました。
それを取り壊して、ショッピングモールを建てたものですから、地元に住む人たちからは
「絶対に出る」
と言われていました。

当時の私は、そのようなことなど全く気にしていなかったので、憧れだったアパレルのアルバイトができることをただただ喜んでいました。
しかし、アルバイトを始めて少し経った頃、従業員の間で変な噂が立つようになりました。
それは、3階の従業員用の女子トイレに霊が出るというものでした。
用を足しているとトイレのドアの隙間から霊が覗いていたとか、手を洗っていると霊が鏡に映ったとか、ありがちな噂でした。
私が働いていたショップは3階にあったので、少し嫌だなと思いましたが、場所が場所なだけに噂が立つのも仕方ないだろうと気にせず使用していました。

そんなある日、私は遅番の仕事を終えて、帰る前に例の3階の従業員用トイレに入りました。
便座に座り、それでもやはり少し怖いなと思っていると、話し声が聞こえてきて、誰かがトイレに入ってきたのが分かりました。
人がいることにホッとしたのもつかの間、話している内容を聞くと、同じショップで働いている子たちが私の陰口を言っているのだと分かりました。
私は気が強いところがあるので、ショップ内でも少し浮いている自覚はありました。
早く出て行ってくれないかなと思っていると、両足首を何者かに掴まれました。
驚いて逃げようにも、金縛りにあったように身体は全く動かず、声も出せなくなっていました。
かろうじて動いた眼球だけを動かして下を見ると、地面から伸びた2本の手が私の足首を掴んでおり、その間には鼻から上だけの女性の顔が出てきており、こちらをじっと見つめている目からは涙が流れていました。
私は恐怖でそのまま意識を失い、警備員さんが助けにきてくれた声で目を覚ました時には女性の姿は消えていました。

怖い体験をしましたが、私はあの霊は悪い霊ではないと思うんです。
女子トイレで自殺したパチンコ店のスタッフは、職場の人間関係に悩み、自ら命を絶ってしまったのだと思います。
同じように職場で浮いている私を心配し、自分のようにならないように伝えようと出てきたのだと思えてならないのです。
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