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Ⅱ.愛は密かに語り合う【喃喃喋喋、桑中之喜】
Tant qu'il y a de la vie, il y a de l'espoir.
しおりを挟む「すごい、そんなところも行ったことがあるの?」
「お前の母親に買われるまでは転々としていたからな」
「……そう」
彼の見てきた世界の思い出話に
前のめって聞き入っていると
唐突に突きつけられた言葉が心を突いた。
どうにか彼の自由を。
そうは思っても母様の前で私の権力など無に等しいもので。
私に出来ることと言えば、母様が再び新しい宝石を見つけ
彼を手放すことを待つくらいだ。
もう、父様に言ってしまおうか。
いや。言ったところで何の意味がある。
きっと寧ろ父様は母様を罰しようとはせず、
目の前の彼を躊躇いもなく打首にするだろう。
父様にとって最愛の女の躰を奪った罪は果てしなく重い。
妖しく開いた白いワイシャツの隙間から見える
彼の胸元に刻まれた奴隷紋に指を滑らせれば
溢れそうになる涙。
その様子をじっと見つめる彼を潤んだ瞳で見上げた。
「お前は、優しいな」
優しいのは、貴方のほうだ。
穏やかな声色と表情で言われた言葉に大きく首を振った。
「ごめんな、さい」
耐えきれず流れ落ちた私の涙を拭うその指も、
私の頭を自分の胸に抱き寄せたその手も。
懲りもせず謝ってしまったというのに、
問い詰めようとしないその心も。
全てが、私の心を突いた。
【命ある限り、希望はある】
Tant qu'il y a de la vie, il y a de l'espoir.
(諦めないから、絶対に)
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