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Ⅱ.愛は密かに語り合う【喃喃喋喋、桑中之喜】
Quand le chat n’est pas là, les souris dansent.
しおりを挟む「出掛けるのか?」
“夜の私”になる晩、
彼が不思議そうに問いかけてきた。
だいぶ、自由になったものね。
初めて会った時とは大違い。
我が物顔でベッドに寝転ぶ男を見て、くすくすと笑う。
「貴方も、来る?」
そして今度はニッと笑って。
対して、つまらなさそうに
視線を落とした彼は儚げな顔をした。
「……大丈夫よ、母様は今頃スペインで
独り身を謳歌しているでしょうから」
「でも、あいつはよく思わないんじゃねーの」
「あいつ?」
脳裏に過ぎったであろう母様をかき消してやったのに
彼は体を起こし、上げた視線で扉を指した。
……あぁ、オオトリのこと。
扉の向こうにいる彼を示したのだと察する。
「問題無いわ。オオトリは私専属の執事だから」
「随分と信頼してるんだな、たかが執事を」
「たかが、だなんて言わないでくれる。
彼は私の大事な人間のひとりよ」
ムッとして彼を睨みつけた。
だというのに、小馬鹿にしたように嘲笑った男に
更に顔が顰まっていく。
「何よ、なんで笑ってるの」
「羨ましいと思ってよ」
「羨ましい? 執事が?」
「いや。お前にそこまで想われることが」
「……貴方も、だけど?」
「……は?」
貴方も、私の大事な人よ。
躊躇いもなく教えてやれば、
その青い瞳をこれでもかと見張った。
そうして片手で頭を抱えるように目を覆い隠しながら
見える口角だけをニヤつくように上げて。
「……本当、変な女」
「なんとでも言って。
で? 来るの? 来ないの?」
彼の顎をクイッと人差し指で上げて目を合わせさせれば
彼は、酷く悪い顔をしていた。
【猫がいない時に鼠が踊る】
Quand le chat n’est pas là, les souris dansent.
(今だけは、自由よ)
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