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Ⅶ.差し迫りくる影【前途多難、油断大敵】
La faim fait sortir le loup du bois.
しおりを挟む「何を勝手に言い出すの、貴方」
「ん? 勝手も何も、王子からの直々の申し入れだよ?
逆に聞くけど、断れると思ってるの?」
これは、命令だ。
二度目の権力の振りかざしに
心底嫌気がさした。
「なら、打首にでもなんでもして下さいませ。
貴方と共に生きるくらいなら、私は死を選ぶわ」
「……言うと思った」
「分かってるなら、」
「でも!」
“僕なら、正妻にしてあげられるよ”
私の言葉をかき消して、強く言い放った彼は
どこまでも卑しく歯を見せて笑う。
それはきっと、ここ数日の私の感情を見越した発言で。
ため息の充満した部屋で懲りもせずため息を吐いた。
「……要らない」
「え?」
「そんな形だけのもの、私には必要ない」
ため息と共に告げたのは、私の強い意志。
「なるほど」
私の屈強な視線と言葉に怯みもせず
彼は嬉しそうに笑っていた。
「話はそれだけ? ならもうお帰りいただけるかしら?」
「ねぇ」
彼の背を押して扉の前に立たせると、
「その形だけの正妻が、
跡継ぎを携えなきゃいけないことは知ってるの?」
彼は、肩越しに呟いた。
「子供って、どうやって出来るか、知ってる?」
まるで小さい子供に話しかけるように言われたそれで
腸が煮えくり返って噴火した私は、
「相手は、王子」の呪文を忘れて手を振りかざした。
「おっと」
そう言って平手打ちをかまそうとした私の手を
軽々しく掴んだ彼は余裕綽々に微笑み続ける。
「本当に気が強いね。流石は兄さんの“妾”」
わざとらしく“妾”だと言われたことに、
歯が割れそうなほど噛み締めた。
嫌い、本当に大嫌い。
「……分かってないね本当に」
「は……?」
「分からないなら、おいでよ」
――――見せてあげる。君の蔑ろにしているものを。
彼は、煮えたぎる怒りを表情に出す私の手を
優しくエスコートした。
【空腹は狼を森から外に出させる】
La faim fait sortir le loup du bois.
(その妖しい笑顔の意味は、なに)
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