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XI.オセロのように色を変え続ける【翻雲覆雨、悪逆無道】

faire d'une pierre deux coups.

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「……やぁ、アリア。
君から誘ってくれるなんて、どういう心境の変化?」

「……お誘い、お受け頂きありがとうございます」



 シャル。


目の前に悠々と足を組んで座る男へ、
殊更にドレスの裾を広げ頭を落として見せた。



「その顔は、ただのお茶会、ってわけじゃなさそうだね?」

「えぇ。回りくどいのは性にあわないので
単刀直入にお伺い致します」

「……なんでも答えよう」



 私のしがない威圧には余裕綽々な顔で
紅茶を啜り続けられるようで。


今に見てなさい。

その余裕の仮面、剥がしてあげるわ。

 

「貴方ですか?」

「何が?」

「男を使って、私を襲わせたのは、貴方?」



 言葉通りド直球にぶつけると
少し反応したシャルは口をつけたカップを止めた。


その様子を見て鼻で笑えば
彼もまた余裕の仮面を貼り付け直して紅茶を啜った。



「……違うよ。僕じゃない」

「嘘は、つかないんじゃなかったの?」

「うん。だから、嘘なんてついてないよ、僕は」



 あくまでも本音でしか話していないと
シラを切るシャルは今度は怯みもせず私を見つめ返した。



「そうですか。
ならば、質問を変えましょう」



 ――――私の大事な“執事”を唆したのは貴方ですか。シャル。



その言葉に、私の斜め後ろに立っていたオオトリが
肩を大きく震わせた。






【一つの石で二つの石を打つことをする】
faire d'une pierre deux coups.

(何の為に、貴方を連れてきたと思っているの。オオトリ)
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