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XX.愛が分からなくなる【行方不明、二転三転】

Autant en emporte le vent.

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「……その後はいかがです、アリア様」

「やめてくれる、シャル。
嫌味も程々になさい」



 最早ただのお茶会仲間と化してしまったシャルが
わざとらしくアリア様だなんて呼んできたことに睨む。


私の尖る視線を、殊更に肩を竦め反応した彼の
望んでいる進捗を素直に告げるとシャルは
みるみるうちに顔を歪めた。


……あぁ、これはまた。



「ほんっとにお人好しだね、君って奴は!」

「なら、貴方は嘘だと思う?」

「さぁ。ただ、口ではなんとでも言えるだろう。
全て過ぎたことだし、君に良く思われようとするなら尚更」



 ……やっぱり、怒ってるわね。


期待を裏切らず、声を大にして反論してくるシャルを見て、
はは……と乾いた笑いを漏らした。


そんな簡単に信用してんじゃないよ、だろうな。
彼が言いたいのは。


 まぁ、仰る通りだ。

彼から言わせなくとも、
それの何が更生したという証拠になるんだって話。


なんか、最近シャルに叱咤されてばかりね、私。



「あんまり、アイツにのめり込まないほうがいい。
でないとまた、聞く羽目になるよ」



 “君が愛してるのは、誰?”


シャルの冷たい瞳で、思い起こされる言葉。


それに小さく頷けば、
呆れ返ったシャルは立ち上がって。

私の部屋を後にした。






【風がさらっていくも同然だ】
Autant en emporte le vent.

(分かってるわよ、そんなの)
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