ウイスの回顧録 その1

リチャード・ウイス

文字の大きさ
8 / 14

「スティーブン セガール(ハリウッド最強オヤジ)」 について(後編)

しおりを挟む
スティーブン・セガールの映画を見ていると、ライフルや機関銃などを使った戦闘よりも、合気道や空手の武術を駆使した接近戦の場面が多い。素人目だが、映画のなかでの動きは、それぞれの武術の本物の動きを取り入れているように見える。

彼は十代半ばで来日し、関西で合気道、空手、柔・剣道など、様々な東洋武術を習得したという。おのずと日本語も堪能。
これらの経験を活かして映画によっては東洋的な雰囲気を持った主人公を演じたり、そこから影響を受けた精神修行シーンが映し出されたりしている。
そして何より、映画の中ではめっぽう強い・・・毎回、強い男を演じきっているのが痛快この上ない。

 私がその無敵の剛腕主人公に出くわしたのが平成八年の春先だった。

 場所は表参道。もうすぐ三歳になる娘も外を歩き回るのに安心できる頃になった。その日は天気が良く、家族四人で原宿駅から表参道を歩いていた。
明治通りと表参道が交差するあたりに来たところ、真っ白のストレッチリムジンが止めてあった。
「よくまあこんなどでかい、燃費が不経済な車に真昼間から乗るやつがいるものだ・・」
とつぶやきながら、そこからやおら視線を表参道の歩道の先に向けた。すると、やたら肩幅が広い大男が目に入った。なんとスティーブン・セガール・・・それもかなり年下と思える外人の彼女連れだった。
白のストレッチリムジン、それを止めている場所がとても人通りが多い場所、そして超美形の彼女連れ・・・やることの派手さに恐れ入ってしまった。

当時、娘がそこそこ外を歩けるようになったのは良いのだが、時々「疲れたぁ、おんぶ」という言葉に応えるのが億劫だったために、よく折りたたみ式の、片手でも持てる簡易乳母車を持って外出していた。荷物がある時はショッピングセンターのカートのように、それをぱっと開いて押して歩いたりもしていた。
歩道をあるいていた丁度その時は、娘が面白がって、何も入っていないその乳母車を押して歩いていた。
前方には、ゆっくりと、どこを目指しているとも無く、ぷらぷら歩きながら、笑顔を絶やすことなくおしゃべりをしているセガールと別嬪さんがいた。そんな感じのゆっくりとした歩調だったから、おのずと我々との間合いは、いやがおうでも詰まっていった。

その時、剛腕のヒーローの彼女が、にこっと笑いそして言った。
「Cutie!」

それは、カートを押しながら歩道をよっちら歩いている娘に投げかけられた言葉だった。
カートをつかむ部分は、路面から高さ1メートルあるため、娘がそれを押すときはちょうど、バンザイをしているような格好で押すことになる。それはこちらから見ても実にユーモラス。それが外人の別嬪さんにもカワイく滑稽に見えたのであろう。

 B.ウィリスやスタローン、シュワルツェネッガーも、映画の最初のパートではダメージを受けずに頑張っていても、そのうちにパンチをもらって鼻血なんかを出すことがある。また捕えられて、時に柱に後ろ手に縛られて、悪い奴から数発殴られるような場面がある。しかし、オヤジの年頃となってきたセガールはますます強みを増していき、サイボーグのような、兎に角ピンチが少ない剛腕のスーパー主人公となった。「映画のストーリー設定なのよ・・」と言われることもあるが、それでも、判で押したように、どの映画でもそれで最後まで貫き通すところがあっぱれと言えよう。

 日本のアクションスターがハリウッドに行って主役を取ることはかなり難しい。そこで、日本で修業した、半分日本人の武道家のような彼を、私はこれからも大いに応援したい。

スティーブン・セガールは日本のTVCMにも出ていた。滋養強壮剤アリナミンVのそれである。  
その中で、映画のハードなカーチェイスシーンの途中に、急にカメラ目線になり
「こうみえても、疲れまんねん!」と関西弁でボヤキを語った。

しかし、彼の力と迫力で、今後もガンガン強いオヤジを演じて、疲れ切っている日本だけでなく世界の政治家やビジネスマンに「喝!」をいれて頂きたいところである。(了)





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

別れし夫婦の御定書(おさだめがき)

佐倉 蘭
歴史・時代
★第11回歴史・時代小説大賞 奨励賞受賞★ 嫡男を産めぬがゆえに、姑の策略で南町奉行所の例繰方与力・進藤 又十蔵と離縁させられた与岐(よき)。 離縁後、生家の父の猛反対を押し切って生まれ育った八丁堀の組屋敷を出ると、小伝馬町の仕舞屋に居を定めて一人暮らしを始めた。 月日は流れ、姑の思惑どおり後妻が嫡男を産み、婚家に置いてきた娘は二人とも無事与力の御家に嫁いだ。 おのれに起こったことは綺麗さっぱり水に流した与岐は、今では女だてらに離縁を望む町家の女房たちの代わりに亭主どもから去り状(三行半)をもぎ取るなどをする「公事師(くじし)」の生業(なりわい)をして生計を立てていた。 されどもある日突然、与岐の仕舞屋にとっくの昔に離縁したはずの元夫・又十蔵が転がり込んできて—— ※「今宵は遣らずの雨」「大江戸ロミオ&ジュリエット」「大江戸シンデレラ」「大江戸の番人 〜吉原髪切り捕物帖〜」にうっすらと関連したお話ですが単独でお読みいただけます。

処理中です...