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ピッツァリア グランディーノ
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「へえ、そうだったんですか。新聞記者のお相手も大変ですね」
ビールを口に運びながら、西村佳奈子はにこっと笑いそう言った。
彰司は、なんとか佳奈子との約束の時間である六時には間に合った。
彼女の今日は、お店にちなんで、明るい緑のジャケットに、白の半袖のポロシャツと赤のスリムなパンツ、それにパンプスとベルトとバッグは白と、トリコロールをきめていた。
そしてジャケットの袖は肘のところまで捲し上げていた。
彰司が仕事柄、時々見ている雑誌「Oggi(オッジ)」のモデルあたりをもろに意識しているかのようだった。
『似合っているな』そう彰司は思った。
店は、二人がよく行く高砂街区の隣りにある白金のイタリア料理の店だった。選んだのは今回は佳奈子の方だった。
白金界隈自体が、ほとんど彰司の銀行の連中が足を向けない所。また、さらに路地めいたところの一角にあるこの店は、ゆっくりと、周りに気兼ねなく食事ができる店だった。
三十二歳になる彰司も、若者やサラリーマンが集団で集まる天神・博多・大名界隈よりも、ネオンサインもまばらで、人通りも「ちらほら」といった所にあるこんな店を好むところとなっていた。佳奈子も、彰司のそこいら辺の趣向を最近は理解しているようだった。
彰司は早速、ハイネケンを注文した。イタリア国旗の緑とボトルの緑色がうまくマッチする感じがして、メニューを見て一瞬でそれを注文した。もうその頃はイライラしていた原田との面談の件も完全に忘れ去っていた。
「ビールっておいしいですよねぇ。私思うんですけど、宇宙ロケットを発明した人もすごいけど、ビールを発明した人もすごいなぁって(笑)。
家では、手ごろなやつしか飲んでいないのだけど、百四十円やそこらの一本で一日の疲れが吹っ飛んじゃいますからね」
「確かにそうだ」
彰司も、それは自分も同じだと思いふふっと笑った。
前菜はソーセージのサラダ仕立てを佳奈子がさっさと注文していた。
(今日も、西村主導の注文だな・・・ま、任せよう)
七月のこの時間帯は、外がまだほんのり明るく、普段は歩けばそんなに大したことのない路地も、何かしら感じの良い雰囲気を出していた。ばか騒ぎをするような若い集団は見当たらない。
彰司から一つ置いた三メートルほど向こうの席では、明らかに会社員のカップルと思われる二人が、時には笑顔を交え、静かな会話をしながら食事を楽しんでいた。その二人の間にはチリの赤ワインのボトルが置いてあった。
「チリの赤かぁ、いいねぇ」
「あら本当ですね」
佳奈子もそう呟いた。
そう言う彰司は、前に、銀行の仕事の一環で、米国経由で中南米に二度ほど出張したことがあった。その時に初めて飲んだチリ産のワインがとても気に入り、その後、日本に帰って自分の家で仲間内と飲む時は、ここ四年はもっぱらチリワインを買ってきていた。その美味さのルーツはもともとは欧州にあり、南米通の人の話では、原木はフランスから、そして丹精込めて南米の人々が育てたところ、気候と土壌がマッチし良い感じのブドウが取れ始めたという。そしてなによりも、おいしさに対するコスパの良さが魅力だった。日本でも赤ならカベルネソービニョン、白ならシャルドネの熟成ワインが手軽な値段で人々に親しまれている。
「東郷さん、次、何を頼みましょうか。ん・・・パニーニを一つ頼んで・・・・・・あっ、一人で一つは私には多すぎるので、一つを半分コしましょうか」
佳奈子はにこっと微笑み、不思議なくらい自然にそう言ったのだった。
ビールを口に運びながら、西村佳奈子はにこっと笑いそう言った。
彰司は、なんとか佳奈子との約束の時間である六時には間に合った。
彼女の今日は、お店にちなんで、明るい緑のジャケットに、白の半袖のポロシャツと赤のスリムなパンツ、それにパンプスとベルトとバッグは白と、トリコロールをきめていた。
そしてジャケットの袖は肘のところまで捲し上げていた。
彰司が仕事柄、時々見ている雑誌「Oggi(オッジ)」のモデルあたりをもろに意識しているかのようだった。
『似合っているな』そう彰司は思った。
店は、二人がよく行く高砂街区の隣りにある白金のイタリア料理の店だった。選んだのは今回は佳奈子の方だった。
白金界隈自体が、ほとんど彰司の銀行の連中が足を向けない所。また、さらに路地めいたところの一角にあるこの店は、ゆっくりと、周りに気兼ねなく食事ができる店だった。
三十二歳になる彰司も、若者やサラリーマンが集団で集まる天神・博多・大名界隈よりも、ネオンサインもまばらで、人通りも「ちらほら」といった所にあるこんな店を好むところとなっていた。佳奈子も、彰司のそこいら辺の趣向を最近は理解しているようだった。
彰司は早速、ハイネケンを注文した。イタリア国旗の緑とボトルの緑色がうまくマッチする感じがして、メニューを見て一瞬でそれを注文した。もうその頃はイライラしていた原田との面談の件も完全に忘れ去っていた。
「ビールっておいしいですよねぇ。私思うんですけど、宇宙ロケットを発明した人もすごいけど、ビールを発明した人もすごいなぁって(笑)。
家では、手ごろなやつしか飲んでいないのだけど、百四十円やそこらの一本で一日の疲れが吹っ飛んじゃいますからね」
「確かにそうだ」
彰司も、それは自分も同じだと思いふふっと笑った。
前菜はソーセージのサラダ仕立てを佳奈子がさっさと注文していた。
(今日も、西村主導の注文だな・・・ま、任せよう)
七月のこの時間帯は、外がまだほんのり明るく、普段は歩けばそんなに大したことのない路地も、何かしら感じの良い雰囲気を出していた。ばか騒ぎをするような若い集団は見当たらない。
彰司から一つ置いた三メートルほど向こうの席では、明らかに会社員のカップルと思われる二人が、時には笑顔を交え、静かな会話をしながら食事を楽しんでいた。その二人の間にはチリの赤ワインのボトルが置いてあった。
「チリの赤かぁ、いいねぇ」
「あら本当ですね」
佳奈子もそう呟いた。
そう言う彰司は、前に、銀行の仕事の一環で、米国経由で中南米に二度ほど出張したことがあった。その時に初めて飲んだチリ産のワインがとても気に入り、その後、日本に帰って自分の家で仲間内と飲む時は、ここ四年はもっぱらチリワインを買ってきていた。その美味さのルーツはもともとは欧州にあり、南米通の人の話では、原木はフランスから、そして丹精込めて南米の人々が育てたところ、気候と土壌がマッチし良い感じのブドウが取れ始めたという。そしてなによりも、おいしさに対するコスパの良さが魅力だった。日本でも赤ならカベルネソービニョン、白ならシャルドネの熟成ワインが手軽な値段で人々に親しまれている。
「東郷さん、次、何を頼みましょうか。ん・・・パニーニを一つ頼んで・・・・・・あっ、一人で一つは私には多すぎるので、一つを半分コしましょうか」
佳奈子はにこっと微笑み、不思議なくらい自然にそう言ったのだった。
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