それでもあなたは銀行に就職しますか 第3巻~彰司と佳奈子の勉強会~「連帯保証人」

リチャード・ウイス

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西村家の家訓

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 東郷彰司は、いきなりの佳奈子の『一個を二人でシェアしましょ』との提案に、意表を突かれ、
「あ?ううん!?」とやや驚きながら答えた。

「じゃあ頼みますね(あのーお願いします)」
佳奈子は後ろを振り向き、右手をあげた。
(はーい、オーダーですね)
(ええ、このパニーニを。モッツァレッラチーズとハム・レタスが入ったものをね。・・半分に切って・・・)

「ここのパニーニは薄皮で美味しいんですよ」
「なんか、そんな感じだね。前にどこかで食べたのは、パンみたいに皮が厚くてあまりおいしいとは思わなかったな」
ハイネケンをグッと飲みながら彰司は答えた。仕事の後の冷えたビールは格別に旨かった。

佳奈子は結構イタリア料理が好きなようで、アラカルトのメニューを見ながら東郷に『これは、スパイシーな味で』とか『これは他の店にはない逸品だから、一回は食べてみてくださいね』
みたいなことを話した。

佳奈子は切り出した。
「それで、今日のテーマなのですけど」
「ああ、そうだ」彰司は手にしていたビールのボトルをテーブルにトンと置いた。
佳奈子は今日の勉強会の内容について話し始めた。

「うちの父親が、家の食事の席で、事あるごとに私に言うんですよ」
「何を?」
「娘の私に『三つの禁止事項(=家訓)を言っておく』というものなの」
「ふーん。で、三つってなんだよ(今どきそんなことを娘に言う親もめずらしい)」

「一つが『外資系の会社に就職して、海外で仕事をしないこと』」
「まぁ、それは・・・いま、君はすでに西都銀行の行員だからクリアしているじゃないか。そもそも娘を手元から離したくない親っていうものは、往々にしてそう言いがちだよな」
「で、二つ目が『外国人とは結婚するな』ですって。これって、超保守的じゃないですか、今の時代に・・・」
「ふ~ん」
彰司は肘をついた左手に頬を乗せ、そして思った(古い人だ。ま、西村本部長は銀行時代から、保守本流の中でも、『超保守派』言われていた人だからなぁ。・・・それくらいは言いかねないな)と。

 そうした中でも、佳奈子が気になっていたのは、三つ目だった。
『どんなことがあっても連帯保証人になるな』ということだった。それは、『仮に親族に対しても同じ』と父親が言うのである。
父親に『え?なぜ』
と聞いても、銀行の取締役だった彼女の父は
『お前も銀行員なら、自分で調べろ』と、つっけんどんで、彼女に教えてくれなかったという。
(これまた、あの西村本部長殿らしいものの言い方・・・)
またそこで彰司は内心笑った。

「連帯保証人なんて、私、これまで人に頼まれたこともないし、また、それによる何か弊害みたいなものも聞いたことないし・・・そんなに『家訓だ』と言われても『はぁ?』って感じ。けど、自らの借金はイイらしいのよ。・・・似た様なことだと思うんですけど・・・」
続けて
「そして父は、もしこれらのようなことが発覚したら、連れてきた外国人のフィアンセだったり、保証の依頼人を『刀で叩き切る!』って。・・・けどそこまで言います、普通?」
佳奈子は少し眉をよせて『もう、あきれますよねぇ』と言うような顔をした。

「ちょっと待って、その・・・刀って、真剣か!?」彰司は驚いた表情を見せながら聞いたのだった。

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