5 / 26
5
西村家の家訓
しおりを挟む
東郷彰司は、いきなりの佳奈子の『一個を二人でシェアしましょ』との提案に、意表を突かれ、
「あ?ううん!?」とやや驚きながら答えた。
「じゃあ頼みますね(あのーお願いします)」
佳奈子は後ろを振り向き、右手をあげた。
(はーい、オーダーですね)
(ええ、このパニーニを。モッツァレッラチーズとハム・レタスが入ったものをね。・・半分に切って・・・)
「ここのパニーニは薄皮で美味しいんですよ」
「なんか、そんな感じだね。前にどこかで食べたのは、パンみたいに皮が厚くてあまりおいしいとは思わなかったな」
ハイネケンをグッと飲みながら彰司は答えた。仕事の後の冷えたビールは格別に旨かった。
佳奈子は結構イタリア料理が好きなようで、アラカルトのメニューを見ながら東郷に『これは、スパイシーな味で』とか『これは他の店にはない逸品だから、一回は食べてみてくださいね』
みたいなことを話した。
佳奈子は切り出した。
「それで、今日のテーマなのですけど」
「ああ、そうだ」彰司は手にしていたビールのボトルをテーブルにトンと置いた。
佳奈子は今日の勉強会の内容について話し始めた。
「うちの父親が、家の食事の席で、事あるごとに私に言うんですよ」
「何を?」
「娘の私に『三つの禁止事項(=家訓)を言っておく』というものなの」
「ふーん。で、三つってなんだよ(今どきそんなことを娘に言う親もめずらしい)」
「一つが『外資系の会社に就職して、海外で仕事をしないこと』」
「まぁ、それは・・・いま、君はすでに西都銀行の行員だからクリアしているじゃないか。そもそも娘を手元から離したくない親っていうものは、往々にしてそう言いがちだよな」
「で、二つ目が『外国人とは結婚するな』ですって。これって、超保守的じゃないですか、今の時代に・・・」
「ふ~ん」
彰司は肘をついた左手に頬を乗せ、そして思った(古い人だ。ま、西村本部長は銀行時代から、保守本流の中でも、『超保守派』言われていた人だからなぁ。・・・それくらいは言いかねないな)と。
そうした中でも、佳奈子が気になっていたのは、三つ目だった。
『どんなことがあっても連帯保証人になるな』ということだった。それは、『仮に親族に対しても同じ』と父親が言うのである。
父親に『え?なぜ』
と聞いても、銀行の取締役だった彼女の父は
『お前も銀行員なら、自分で調べろ』と、つっけんどんで、彼女に教えてくれなかったという。
(これまた、あの西村本部長殿らしいものの言い方・・・)
またそこで彰司は内心笑った。
「連帯保証人なんて、私、これまで人に頼まれたこともないし、また、それによる何か弊害みたいなものも聞いたことないし・・・そんなに『家訓だ』と言われても『はぁ?』って感じ。けど、自らの借金はイイらしいのよ。・・・似た様なことだと思うんですけど・・・」
続けて
「そして父は、もしこれらのようなことが発覚したら、連れてきた外国人のフィアンセだったり、保証の依頼人を『刀で叩き切る!』って。・・・けどそこまで言います、普通?」
佳奈子は少し眉をよせて『もう、あきれますよねぇ』と言うような顔をした。
「ちょっと待って、その・・・刀って、真剣か!?」彰司は驚いた表情を見せながら聞いたのだった。
「あ?ううん!?」とやや驚きながら答えた。
「じゃあ頼みますね(あのーお願いします)」
佳奈子は後ろを振り向き、右手をあげた。
(はーい、オーダーですね)
(ええ、このパニーニを。モッツァレッラチーズとハム・レタスが入ったものをね。・・半分に切って・・・)
「ここのパニーニは薄皮で美味しいんですよ」
「なんか、そんな感じだね。前にどこかで食べたのは、パンみたいに皮が厚くてあまりおいしいとは思わなかったな」
ハイネケンをグッと飲みながら彰司は答えた。仕事の後の冷えたビールは格別に旨かった。
佳奈子は結構イタリア料理が好きなようで、アラカルトのメニューを見ながら東郷に『これは、スパイシーな味で』とか『これは他の店にはない逸品だから、一回は食べてみてくださいね』
みたいなことを話した。
佳奈子は切り出した。
「それで、今日のテーマなのですけど」
「ああ、そうだ」彰司は手にしていたビールのボトルをテーブルにトンと置いた。
佳奈子は今日の勉強会の内容について話し始めた。
「うちの父親が、家の食事の席で、事あるごとに私に言うんですよ」
「何を?」
「娘の私に『三つの禁止事項(=家訓)を言っておく』というものなの」
「ふーん。で、三つってなんだよ(今どきそんなことを娘に言う親もめずらしい)」
「一つが『外資系の会社に就職して、海外で仕事をしないこと』」
「まぁ、それは・・・いま、君はすでに西都銀行の行員だからクリアしているじゃないか。そもそも娘を手元から離したくない親っていうものは、往々にしてそう言いがちだよな」
「で、二つ目が『外国人とは結婚するな』ですって。これって、超保守的じゃないですか、今の時代に・・・」
「ふ~ん」
彰司は肘をついた左手に頬を乗せ、そして思った(古い人だ。ま、西村本部長は銀行時代から、保守本流の中でも、『超保守派』言われていた人だからなぁ。・・・それくらいは言いかねないな)と。
そうした中でも、佳奈子が気になっていたのは、三つ目だった。
『どんなことがあっても連帯保証人になるな』ということだった。それは、『仮に親族に対しても同じ』と父親が言うのである。
父親に『え?なぜ』
と聞いても、銀行の取締役だった彼女の父は
『お前も銀行員なら、自分で調べろ』と、つっけんどんで、彼女に教えてくれなかったという。
(これまた、あの西村本部長殿らしいものの言い方・・・)
またそこで彰司は内心笑った。
「連帯保証人なんて、私、これまで人に頼まれたこともないし、また、それによる何か弊害みたいなものも聞いたことないし・・・そんなに『家訓だ』と言われても『はぁ?』って感じ。けど、自らの借金はイイらしいのよ。・・・似た様なことだと思うんですけど・・・」
続けて
「そして父は、もしこれらのようなことが発覚したら、連れてきた外国人のフィアンセだったり、保証の依頼人を『刀で叩き切る!』って。・・・けどそこまで言います、普通?」
佳奈子は少し眉をよせて『もう、あきれますよねぇ』と言うような顔をした。
「ちょっと待って、その・・・刀って、真剣か!?」彰司は驚いた表情を見せながら聞いたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました
由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。
尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。
けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。
そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。
再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。
一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。
“尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。
静かに離婚しただけなのに、
なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる