それでもあなたは銀行に就職しますか 第3巻~彰司と佳奈子の勉強会~「連帯保証人」

リチャード・ウイス

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飛び込んできた連帯保証人

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 連帯保証について、東郷彰司は八代支店の行員からかつて聞いた事がある逸話を思い出した。
それは八代支店の大口融資先の木室建設の『耐震偽装事件』にからみ、木室に信用不安が出た時だった。

 銀行のシャッターがあと十分そこらで閉まろうかと言う十四時五十分ころ、一人の人物が血相を変えて融資カウンターを訪ねてきた。
「課長います?融資の小山課長さん」
融資課のカウンターの席に座って、今日の伝票の締めに入っていた後藤京子に息を切らしながらそう言った。
「あら、宮内社長、いらっしゃいませ」
宮内は地元で、従業員五名程度の小さな不動産業を営んでいる会社の社長だった。融資取引もあるため、貸付窓口の後藤とは、月に一度は仕事の話をする顔見知りの間柄だった。
「小山ですね、二階に行っていますので今呼び出します」
そういって後藤は二階に内線を入れて小山課長を呼んだ。一分ほどたって、
「おや、社長いらっしゃいませ。何事でしょう?」
「課長、ちょっと応接でいいですか」
それを聞いて小山は
「後藤さん、忙しいところに申し訳ないが、お茶をふたつ、応接室にお願い」
と告げた。

宮内が話に来たのは他でもない木室建設の件だった。
「えっ、そう言う事ですか。それは・・・私がここに赴任するずいぶん前の話ですので、ちょっと調べてみないと分からないですね・・・」
そう小山は答えた。

宮内の話はこうだった。
「木室建設が西都銀行の八代支店で九千万円を借入れる時に、自分が連帯保証人として金銭消費貸借契約書(=借用契約書)に実印を押した記憶がある」
と言うものだ。
小山が、『具体的に、いつ頃の話?』と聞いても
「十年以上前だったと思う。はっきり覚えていない」
と言う事だった。
宮内が血相を変えて支店を訪ねてきたのも、もしその融資残高が今でも残っており、仮に今回の信用不安を受けて木室建設が倒れた場合、自分にいくら降りかかって来るのかを聞き出すためだった。宮内は自分が保証倒れになる恐れを感じていた。

地元で古くからやっている上に、ロータリークラブの監査役もやっている以上、この街から夜逃げなどはできない存在だった。もちろん子息の家族もここに住んでいる。
「小山課長、申し訳ないが至急調べてもらえますか」
宮内の表情には焦りと不安が見て取れた。
「その融資実行日(木室が借り入れたその日)から、十年は間違いなく経っていますか」
「はい、それだけは間違いないです。もう今では、その時に銀行からいただいた借用証書の写しはどこへやったか分からないもので」

         ◇
        
「東郷さんはこの話は誰から聞いたの」 
「工藤さんから後で聞いた事なんだよ。前に話したことあるだろあの工藤彩香さんね」
「へぇそうだったの。なんか、東郷さんと工藤さんって・・・つながっていませんか。ふ~ん、怪しいな」
そう意地悪く佳奈子は言って、
「冗談ですよ、フフッ」と笑った。

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