それでもあなたは銀行に就職しますか 第3巻~彰司と佳奈子の勉強会~「連帯保証人」

リチャード・ウイス

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値段の価値ほどない物件(2)

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「レオ・コーポレーションの物件だろ・・、ウチの近所でも建っているからね。それで、なに・・二階建て六世帯用のアパートね、十数年前に建てたやつかい?」橋木は続けた。
「うちで、その間取りと同じアパートを建てたら、東郷さん、六百万円は安くできちゃうよ。実際見てごらんよそのアパートを現地で。絶対その値段の建物とは思えないから」
「え、えっ?と言う事は、アパートのオーナーさんはこの話の入り口の段階で高値掴みだったのですか?払った金よりも価値がない物件で賃貸経営がスタートしたと・・・・」
「まぁそこまで言うと、詐欺か何かに聞こえちゃうからまずいのだが・・・・。しかし、同業者から見ると、もっとしっかりした部材を使った建物を、ウチ達(ら)あたりじゃあもっと価格を抑えて建てることは出来たって事ですよ。さらに、きちんと施工された物ならば、今回のような『サビ』だの『塗装の色褪せ』だの『大雨の後の庭のぬかるみ』なんて、普通はありませんよ」
橋木は、こういうのは常識ですよみたいな表情でそう話した。
彰司は呟いた「(なるほど)」と。

「で、東郷さん、改修工事もそのレオ・コーポレーションに頼んだの?」  
「そうなんです。オーナーさんが言うには『このアパートを設計・建築した会社が、一番、この建物のことを細部まで分かっているだろうから』との理由でね」
「ふむ・・・、そっかぁ」と腕を組んで橋木は天井を見上げた・・・うちに一声かけてもらえばよかったのになあとその表情は物語っていた。
「と言いますと・・・」
「他に一~二社の合い見積もりを取るのですよ。おそらくウチなんか二百四十万円前後でやれたと思うよ。仮に他社さんがウチより少々安い見積もりを出してきたなら、さらに値引きしてあげてでも受注しただろう・・・この不景気なご時世だから」
「そうだったんですか」
そう言う東郷に橋木は続けた。
「この手のアパート経営はね東郷さん、いかに安く・頑丈に作るかがカギですよ。加えてそのアパートって、外壁は薄い鉄板を塗装加工して貼り付けている構造じゃないかな・・・なんか今後も修理代がかかりそう・・・」と。

       ◇

「なんだか田山さんって、スタート時点と中間地点で不要な・・・と言うよりは結構なお金を使っちゃったみたいですね。あららぁ」
そういって、手元のグラスをカランカランと手の中で回した。
彰司の観察では、佳奈子は甘系よりも辛口の飲み物が好きなようだった。決して量は飲まないのだが、選ぶカクテルの種類がジン系統と男性的であった。

 ・・その後も引き続き、彰司は田山の案件を軟着陸させるために動いた。
「高尾課長、今日の夜、田山敦子の『連帯保証人』に会いに行ってきます」
いよいよと感じ取った彰司は、例の夜から二日後、上司にそう言った。
「分かった。必要な書類関係の写しも含め、段取りはすべて整っているだろうな」
「はい大丈夫です」

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