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真 相
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東郷は書類を鈴木に渡し、軽く礼をしてその場を離れる途中で考えた。
「(・・・・・法を犯したことは明白だが、何かきっとある。彼が自らお客をだまして私利私欲を肥やすことは絶対にない。おしい、なんでこうなったんだ・・・・)」
次長の田中からも聞いていた(・・・営業部門で二回も本部長表彰を受けたことがある優良行員だ)と。
ドアを閉めて部屋を離れるとき、もう一度、彼を振り返った。あらためて、東京での試合後に東京在住組で作った即席応援団にわざわざ『本日はありがとうございました!』と他の部員と共にあいさつに来た時の彼の姿が思い出された。
(・・・・あの金を融通した建設会社から、リベートでも貰っていたらアウトだ)
◇
「途中、何か聞いてて悲しくなってきちゃった」
「ああ、俺も本当に切なくなるよ」
「それで、ことの真相めいたものは・・・どういう話だったの?」
「ああ、それが、事件発覚からちょうど一年前かな、とある病院の先生が進める、有料老人ホーム建設の話があった訳だ。その建設のための融資案件の担当に彼が任命されていたらしいんだよ」
「大きい案件?」
「六億だ」
その案件にたいしては、東郷たちの銀行のほかにも、もう一行、熊谷銀行が資金提供を申し出ていた。自然と病院の先生に対しては一日とおかず、両銀行の営業攻勢がかけられていた。
この融資には当然、本店の営業推進部からも『必ずうちが取れ』と本条支店に厳命が下っていた。
一度、大野が作成した貸出稟議は、支店長の了解のもと、本店審査部からは『承認』の内諾を得ていた。
しかしその後、熊谷銀行が、西都銀と病院側とが話を進めていた融資金利をかなり下回る条件で朝に夕に強力に営業攻勢をかけてきた。それに終わらず、熊谷銀行が十年前に融資した、病院の先生の奥さんが所有する『投資型マンション一棟の借入れ残金 一億三千万円』についても、今後は○・五パーセントの引き下げをしても良いと言ってきていた。
大野にしてみれば、せっかく苦労して本店の承認を得た稟議書が無駄に、そしてそれのみならず、別の内容に書き換えた稟議書類で、全くスタートラインから本店に出しなおさなければならなくなった。
その話を次長の田中から聞いた時には、彰司も、
「無茶苦茶な!何を考えているんだ熊谷銀行は・・・。奥さん個人の借入れは全くの別案件(=先生との取引とは全く関係ない別の融資案件)だろうに・・・」と驚いた。
その件も含め、複数の融資案件の処理が目白押しの時に、大野は・・・成田建設から今回の融資の依頼を受けていた。
成田建設から大野に確認の電話があったのが、成田の社長が五百万円の借入を希望していた日の『二日前の夕方』だった。
「あー、大野さん?成田ですがぁ」社長はいつものだみ声だった。
「たのんでいたあの件だが、審査のためにこちらからの書類が、おたくの方で、何かいったんじゃあないのかね?ん?何にも言ってこないからこうして電話してるんだが」
「(えっ!!)」
大野は完全に凍りついた。
(しまった!忘れていた)そして目の前の卓上カレンダーをあわてて手に取った。
(おまけに明日は祝日だ・・・・どこも休みだ・・!)
「まずい!」大野は頭を抱え、額を机に押し付け唸るようにそう言った。
「(・・・・・法を犯したことは明白だが、何かきっとある。彼が自らお客をだまして私利私欲を肥やすことは絶対にない。おしい、なんでこうなったんだ・・・・)」
次長の田中からも聞いていた(・・・営業部門で二回も本部長表彰を受けたことがある優良行員だ)と。
ドアを閉めて部屋を離れるとき、もう一度、彼を振り返った。あらためて、東京での試合後に東京在住組で作った即席応援団にわざわざ『本日はありがとうございました!』と他の部員と共にあいさつに来た時の彼の姿が思い出された。
(・・・・あの金を融通した建設会社から、リベートでも貰っていたらアウトだ)
◇
「途中、何か聞いてて悲しくなってきちゃった」
「ああ、俺も本当に切なくなるよ」
「それで、ことの真相めいたものは・・・どういう話だったの?」
「ああ、それが、事件発覚からちょうど一年前かな、とある病院の先生が進める、有料老人ホーム建設の話があった訳だ。その建設のための融資案件の担当に彼が任命されていたらしいんだよ」
「大きい案件?」
「六億だ」
その案件にたいしては、東郷たちの銀行のほかにも、もう一行、熊谷銀行が資金提供を申し出ていた。自然と病院の先生に対しては一日とおかず、両銀行の営業攻勢がかけられていた。
この融資には当然、本店の営業推進部からも『必ずうちが取れ』と本条支店に厳命が下っていた。
一度、大野が作成した貸出稟議は、支店長の了解のもと、本店審査部からは『承認』の内諾を得ていた。
しかしその後、熊谷銀行が、西都銀と病院側とが話を進めていた融資金利をかなり下回る条件で朝に夕に強力に営業攻勢をかけてきた。それに終わらず、熊谷銀行が十年前に融資した、病院の先生の奥さんが所有する『投資型マンション一棟の借入れ残金 一億三千万円』についても、今後は○・五パーセントの引き下げをしても良いと言ってきていた。
大野にしてみれば、せっかく苦労して本店の承認を得た稟議書が無駄に、そしてそれのみならず、別の内容に書き換えた稟議書類で、全くスタートラインから本店に出しなおさなければならなくなった。
その話を次長の田中から聞いた時には、彰司も、
「無茶苦茶な!何を考えているんだ熊谷銀行は・・・。奥さん個人の借入れは全くの別案件(=先生との取引とは全く関係ない別の融資案件)だろうに・・・」と驚いた。
その件も含め、複数の融資案件の処理が目白押しの時に、大野は・・・成田建設から今回の融資の依頼を受けていた。
成田建設から大野に確認の電話があったのが、成田の社長が五百万円の借入を希望していた日の『二日前の夕方』だった。
「あー、大野さん?成田ですがぁ」社長はいつものだみ声だった。
「たのんでいたあの件だが、審査のためにこちらからの書類が、おたくの方で、何かいったんじゃあないのかね?ん?何にも言ってこないからこうして電話してるんだが」
「(えっ!!)」
大野は完全に凍りついた。
(しまった!忘れていた)そして目の前の卓上カレンダーをあわてて手に取った。
(おまけに明日は祝日だ・・・・どこも休みだ・・!)
「まずい!」大野は頭を抱え、額を机に押し付け唸るようにそう言った。
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